幕末太陽傳
監督川島雄三
脚本田中啓一
川島雄三
今村昌平
製作山本武
ナレーター加藤武
出演者フランキー堺
左幸子
南田洋子
石原裕次郎
音楽黛敏郎
撮影高村倉太郎
編集中村正
製作会社日活
配給日活
公開 1957年7月14日
上映時間110分
製作国 日本
言語日本語
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『幕末太陽傳』(ばくまつたいようでん、幕末太陽伝とも表記)は、1957年(昭和32年)7月14日に封切られた日本映画である。 川島雄三監督の代表作である異色コメディ映画で、実在した遊郭「相模屋」を舞台に起こる様々な出来事をグランドホテル方式という構成で、テンポ良く描いている。60年前の時代劇映画であるにもかかわらず年代を問わず観客の支持を得ており、日本映画史上の名作の一本として数えられる。 ストーリーはオリジナルだが、落語『居残り佐平次』から主人公を拝借し、『品川心中』『三枚起請』『お見立て』などの物語を随所に散りばめた。脚本はチーフ助監督も務めた今村昌平と田中啓一が川島と共同で執筆し、フランキー堺が主演した。1957年度のキネマ旬報ベストテンで第4位にランクインされた。 作品の冒頭に「日活製作再開三周年記念」という文字が表示される。これは戦時中の企業整備令(1942年)によって大都映画、新興キネマと製作部門が合併し大映となった日活が、1953年に映画製作再開を宣言して、翌1954年に調布の日活撮影所が竣工して製作再開してから3年目という意味である。新生日活は、技術部門を東宝から、監督部門を松竹大船撮影所から主に引き抜き、この三周年記念映画を任された川島雄三もまた松竹大船からの移籍組(他に西河克己、鈴木清順、今村昌平などがいる)であった。 日活は当初文芸映画や新国劇との合作を主としていたが、1956年に『太陽の季節』を大ヒットさせると、石原裕次郎という新時代のスターが主演する若者向けの映画会社へと変貌を遂げていた。しかし、この映画によって登場した太陽族に対する世間の風当たりは強く、日活内部でも「太陽族映画」を拒否する傾向が強かった。そんな中で川島の提出した脚本はまさしく幕末の太陽族を意識させずにはおかないものであり、以後映画が完成するまでの間、川島と日活上層部との軋轢は絶えなかったという。また、3周年を記念する大作が古典落語をつなぎあわせた喜劇映画であったこと、石原裕次郎などスター俳優を脇に回して軽喜劇で人気を博していたフランキー堺を主役に据えたこと、品川宿のセット予算など制作費の問題で会社と現場との間で軋轢があったこと、そして川島がかねてから抱いていた待遇の不満などが積み重なり、結局川島はこの映画を最後に日活から東京映画へと移籍することになった。 2012年、日活が100周年を迎えることを記念して本作のデジタル修復が行われた。この修復には本作で録音を担当した橋本文雄が、録音・修復監修として参加した。2011年に世界各国を巡回上映[1]。日本でも一般公開された[2][3]。 ランキング 文久2年(1862年)の江戸に隣接する品川宿。お大尽を装って遊郭旅籠の相模屋で豪遊した佐平次は、金がないのを若衆に打ち明けると居残りと称して相模屋に長居を決め込み、下働きから女郎衆や遊郭に出入りする人々のトラブル解決に至るまで八面六臂の活躍をし、果てはこの旅籠に逗留する攘夷派の志士たちとも渡り合う。様々な出来事の末に佐平次は体調を悪くするが、それでもなお「首が飛んでも動いてみせまさぁ」と豪語するのだった。
目次
1 概要
1.1 製作の経緯
1.2 修復と再評価
2 あらすじ
3 スタッフ
4 キャスト
5 時代背景
6 エピソード
7 幻のラストシーン
8 影響
9 漫画化
10 舞台
11 脚注
12 外部リンク
概要
製作の経緯
修復と再評価
1979年:「日本公開外国映画ベストテン(キネマ旬報戦後復刊800号記念)」(キネ旬発表)第11位
1989年:「日本映画史上ベストテン(キネ旬戦後復刊1000号記念)」(キネ旬発表)第6位
1989年:「大アンケートによる日本映画ベスト150」(文藝春秋発表)第9位
1995年:「オールタイムベストテン・日本映画編」(キネ旬発表)第10位
1999年:「映画人が選ぶオールタイムベスト100・日本映画編(キネ旬創刊80周年記念)」(キネ旬発表)第5位
2009年:「映画人が選ぶオールタイムベスト100・日本映画編(キネ旬創刊90周年記念)」(キネ旬発表)第4位
あらすじ
スタッフ
監督:川島雄三
脚本:田中啓一、川島雄三、今村昌平
製作:山本武
撮影:高村倉太郎
音楽:黛敏郎
美術:中村公彦、千葉一彦
録音:橋本文雄
照明:大西美津男
風俗考証:木村荘八
特殊撮影:日活特殊技術部
監督助手:浦山桐郎、遠藤三郎、磯見忠彦
キャスト
居残り佐平次:フランキー堺大尽を装って無一文で「相模屋」で豪遊し、居残って金を返済するために働く男。悪い風邪をひいている。
女郎おそめ:左幸子こはると人気を争う女郎。
女郎こはる:南田洋子おそめと人気を争う女郎。
高杉晋作:石原裕次郎「相模屋」に長期逗留し、同志らと英国領事館の焼き討ちを計画する。
女中おひさ:芦川いづみ父の借金のカタに「相模屋」で女中として働かされている。
杢兵衛大盡:市村俊幸千葉からやってきた大尽で、こはるの客。
相模屋楼主伝兵衛:金子信雄「相模屋」の主人。番頭上がりの婿養子である。
伝兵衛女房お辰:山岡久乃その妻。
息子徳三郎:梅野泰靖お辰の息子。
番頭善八:織田政雄
若衆喜助:岡田真澄
若衆かね次:高原駿雄
若衆忠助:青木富夫
若衆三平:峰三平
やり手おくま:菅井きん「相模屋」のやりて婆。
貸本屋金造:小沢昭一「相模屋」に出入りする貸本屋。顔があばただらけで、アバ金と呼ばれている。
大工長兵衛:植村謙二郎おひさの父。博打好き。
鬼島又兵衛:河野秋武長州藩江戸詰見廻役。
気病みの新公:西村晃佐平次の連れで、彼と共に無一文で「相模屋」に入る。
のみこみの金坊:熊倉一雄
粋がりの長ンま:三島謙
仏壇屋倉造:殿山泰司こはるの客。