帰属
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この項目では、心理学について説明しています。著作権における概念については「帰属 (著作権)」をご覧ください。

心理学における帰属(きぞく)とは、出来事や他人の行動や自分の行動の原因を説明する心的過程のこと、すなわち誰かもしくは何かのせいにすることである。社会心理学における構成概念の一つである。このプロセスを説明するモデルを帰属理論(attribution theory)といい[1] 、ある事象の原因を何に求めるのかという帰属過程がどのように行われるのかを理論化したものである。

人間はある出来事を認知する際に原因の帰属を試みる。 さらに因果関係にとどまらず、人や事物の特性に対しても推論を試みる。これを傾性の帰属、または特性推論という[2]
歴史

素朴心理学の提唱者であるフリッツ・ハイダーは、人間の行動は基本的に能力や意思などの内的な要素と状況や偶発性などの外的な要素の二つに帰属することが可能であり、行動はこれら内的要因と外的要因が相互に関係していると論じた。ハイダーの発想をもとに、ハロルド・ケリー(英語版)は人間が普段から無意識に行っている原因分析や、責任の所在など、因果関係の推論の経過を明らかにしたり、理論によって導き出した因果関係と現実に生じている因果の関係を明らかにする立場を帰属理論と名付けた[3]

ケリーは生起した事象の原因を推論する場合に考えられるいくつかの要因と、結果として生じている事象の共変関係の存否をもとに、特定の要因を原因とみなすであろうとし[3]、行為の対象、行為の主体、状況の三つを原因帰属の対象とした上で行動の原因帰属は結果が発生したときのみ発生し、結果がなければ原因帰属される要因は存在しないとする仮定を立てた。この理論は、共変モデル(covariation model)と呼ばれたり、統計手法である分散分析になぞらえることができるためANOVAモデルとも呼ばれる[3]

エドワード・ジョーンズ(英語版)とキース・デーヴィスは行動の原因が内的帰属されるのかを検討した対応推測理論(correspondent inference theory)を論じた。対応推測理論は、ある人の行為の原因を推測するとき、行為者の持つ諸条件(身体的・能力的特性)と行為の結果を勘案すると、その行為が意図的なものが偶発的なものか判別でき、行為者の性格や特徴を推論できるという理論である[3]。この理論はその後多くの研究を生んだ。

ベルナルド・ワイナー(英語版)はハイダーによる原因帰属を展開し、達成関連場面での成功・失敗の原因帰属理論を考察した[2]。ワイナーは能力・努力・課題の難しさなどの成功・失敗の要因を内的-外的、安定-不安定、統制可能-不可能という3次元に整理し、原因帰属によって感情や将来の成功期待などの認知的側面や、課題に対する取り組む姿勢などの行動的特徴が影響を受けることを明らかにした。

帰属理論については社会心理学における認知研究で盛んに行われており、近年では認知心理学の方法論や理論を受けた研究が進められている。
帰属の種類

帰属の二つの主要なタイプは、内的帰属と外的帰属である。簡単にいえば、人柄のせいにするのが内的帰属であり、事情のせいにするのが外的帰属である[4]。内的帰属では、行動の原因は、個人の性格や態度や特質気質のせいであるとされる。外的帰属では、行動の原因は、行動が行われた周囲の状況であるとされる。この二つのタイプのいずれを選択するかにより、行動を行った個人に対して、全く異なった見方が導かれる。
帰属理論
直感的な心理学者としての人間

初期の帰属理論の提唱者であるハイダーは、「人は、常識を持ち世界と人々について素朴な意見を持つ直感的な心理学者として行動している」と論じている。全ての行動が、内的または外的な力や過程によって起きるというわけではないが、我々はいかなる行動をも、内的または外的な要因で起きたと説明する傾向がある。
性格推測理論

この理論は、人々は他人に対して、性格の推測を試みていると述べている[5]
共変理論

ハロルド・ケリーの共変理論[6]によれば、人は科学者のように合理的で論理的な仕方で原因帰属を行う。行動の原因は、その行動と最も密接に連動して変動する要因であると考える。

ANOVAモデル、分散分析モデルともいう。共変モデルでは、人は3種類の情報をもとに妥当な原因帰属を行おうとする。第一は、合意性情報(コンセンサス情報)である。これは、ある人の行動が、同じ状況で同じ刺激を与えられた場合の他の人々の行動とどのくらい一致しているかに関する情報である。例えば、ある人が毎日花壇に水をやったとする。他の誰もが同じようにその花壇に水をやるとすれば、この行動はその人自身から出たもの(内的原因によるもの)ではなさそうである。反対に、他の誰も水をやらないのにその人だけが水をやっているのだとすれば、この水やり行動の原因はその人自身の中にありそう(内的原因でありそうである)。原因帰属の手がかりとなる第二の情報は、弁別性情報である。これは,問題となっている行動が特定の刺激と弁別的に結びついているかに関する情報である。例えば,先ほどの例で挙げた人がどの花壇にも同じように水をやるのだとすれば、花壇はこの行動の原因ではなさそうである。逆に,この人がある特定の花壇だけに水をやって、他の花壇にはいっさい水をやらないのだとすれば、この行動の原因は人ではなく(内的原因ではなく)花壇の方にありそうである(外的原因)。第三の情報は、一貫性情報である。これは、その行動が特定の時間や状態にかかわらず一貫している程度に関する情報である。例えば,水やりが他の人が見ているときにだけ行われるのであれば、この行動の原因はその人の水をやりたいという気持ちなどの内的原因にはなさそうである。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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