帆船
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帆船、2種の写真。うしろがトールシップ(海王丸II世)。手前がセーリングクルーザー(個人所有のもの)。シップの例(ノルウェー船籍のChristian Radich号)

帆船(はんせん、ほぶね、: sailing shipあるいはsailboatなど)とは、「」(ほ)にを受けて推進力とするのことである。

伝統的な帆装の大型船はトールシップと呼ばれ、一方、小型の帆船はセイルボート(sailboat)と呼ばれる。日本では小型セイルボート(特に縦帆のもの)を「ヨット」と呼ぶことが多いが、英語の「yacht」は「豪華な遊行船」を意味している。

水上交通のルールを定めている海上交通安全法でいう「帆船」は、帆を推力として進む水上の乗り物全てを指している。当記事では、この種の船全般について、中東、アフリカ、アジア、オセアニア、南北アメリカのものも含めて解説する。
種類と帆装帆走フリゲートとその帆装図

帆船の分類法は複数あるが、よく使われるものとしては、その帆装で分類する方法がある。

「帆装」(はんそう)とは船舶工学における帆船の艤装の構成要素で、マストの組み合わせを体系化したものである。多くの場合、以下の3つの構成を含む。

軽微な風での航行性 : 風の多くは至軽風であるため、軽微な風での航行を可能としておく必要がある。

風に応じた対応性 : 可変的な風に対応するため、風の強弱などに応じて帆の調整を可能とする必要がある。

嵐に対する適応力 : 嵐のような極めて強い風の中でも、船を保守するための帆の管理を可能とする必要がある。

帆には横帆と縦帆の2種類がある。横帆は追い風を捉える効率が高く、季節風を利用して長距離を移動するのに向いている。縦帆は追い風の利用効率は劣るが、より風に向かって間切る、つまりより前方から吹く風を利用することができ、操船がしやすいという利点がある。詳細は「」を参照

現在ではFRPなどでできた硬翼帆や円柱を回転させマグナス効果で揚力を生じさせるローター船などの新方式が開発されている他、船体そのものを帆として利用する研究もある[1]

以下に挙げるのは一般的に用いられる帆装と、それに類する特徴的な帆装である。一般的な帆装はマストの本数と、そこに張られた帆の種類で分類できる。
マスト1本

画像名称帆の種類注記
サンフィッシュ
(英語版)ラテンセイル
キャットボート(英語版)ガフセイル
ガンター(英語版)ガフセイルとジブ
スループガンターよりガフセイルが大きく、分割されている点で異なる。
戦闘用のものは砲門の数によって分類される(スループ#戦闘用のスループを参照)。
カッタースループとはマストの位置が異なる(カッター (船)#帆走カッターを参照)。
プロア(英語版)クラブクロウセイル

マスト2本

画像名称前檣の主帆後檣の主帆注記
ブリッグ横帆戦闘用のものは砲門の数によって分類される(スループ#戦闘用のスループを参照)。
スノーブリッグ型に加えて「スノーマスト」と呼ばれる小さな縦帆を船尾に持つ。
ブリガンティン横帆縦帆後方マストの帆の種類は問わないが、ブリッグと区別して縦帆の場合が多い。
ハーマフロダイトブリッグ
(スクーナーブリッグ)ブリッグ型の横帆、スクーナー型の縦帆を持つ。
ブリガンティンと同一視されることが多い。
スクーナー縦帆マストが3本以上の場合でも、全て縦帆であればスクーナーと呼ばれる。
トップスルスクーナースクーナーのうち、前のマスト上部に横帆を持つもの。
操作が比較的容易なため、トレーニングシップにこの形が多い。
ツートップスルスクーナー
(ジャッカスブリッグ)スクーナーのうち、両方のマスト上部に横帆を持つもの。
ケッチ上記の帆装に比して小型のミズンマストを持つ。
ミズンマストの高さと目的で区別される(ケッチ#類似した帆装を参照)。
ヨール

マスト3本以上

画像名称前檣の主帆中檣の主帆後檣の主帆注記
シップ
(全装帆船)横帆戦列艦クリッパーも含まれる。
バーク横帆縦帆
ジャッカスバーク横帆横縦半々縦帆帆の割合がバークとバーケンティンの中間。
マストが奇数の場合は、中央のマストの帆が縦横半々となる。
バーケンティン
(スクーナーバーク)横帆縦帆
スクーナー縦帆

特徴のある帆装

画像名称地域特徴
ジャンク中国ジャンク帆を持つ。
ジーベックアラビア近辺の地中海最前列のマストのみ横帆、残りは縦帆を持つ。
初期のものは2本マスト、終期のものは3本のマスト。
ブリガンティンやバーケンティンは縦帆がガフセイル、ジーベックのラテンセイル。
フェラッカアラビア近辺の地中海ジーベックと類似した帆装であるが、全てのマストにラテンセイルを持つ。

歴史

帆船の源流には、北ヨーロッパを中心に横帆[注 1]式の帆を用いた「北方船」と、地中海ペルシャ湾を中心に縦帆[注 2]式の帆を用いた「南方船」の2系統がある、と金子隆一は言う[4]。それぞれの技術が融合して15世紀に「標準型全装帆船」が誕生し、19世紀クリッパーに至った。その後、蒸気船の登場とともに凋落していった[5]
古代エジプト

紀元前4000年頃のものと推定される古代エジプトの陶器に帆走船を描いたと思われる図案が残されているものの、この絵には人物が一切描かれていないため、本当に船なのか疑問がある[6]。)古代エジプト人は紀元前3000年頃から外洋航海をするようになり、クレタ島フェニキアに船を出しレバノン杉などを輸入していた。紀元前2700年頃のサフラー王の墳墓には2脚のマストと操舵用のオールを備えた船のレリーフが残されており、サフラー王は8隻の艦隊でフェニキアから捕虜を連れてきたとある[6]

古代エジプトで紀元前1900-1885年ころに制作された帆船模型。大きなマストが立っている。

ハトシェプスト(紀元前1479年頃 - 紀元前1458年)の帆船

ミノア文明、古代ギリシャギリシアのガレー船

紀元前2200年頃からエーゲ海で栄えたミノア文明で、貿易船を守るため戦闘専門の軍艦で編成された世界初の海軍が作られた。ギリシャ人の使うガレー船はその後も地中海東部の軍船の主流となった[7]


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