市(し、繁: 市、英語: Autonomous Municipality)は中華民国の第二級行政区画の1つであり、時代によって等級や権限の範囲が異なる。現行の法律では、第一級行政区画である省[注 1]に属する第二級行政区画の都市を「市」と呼ぶ。現在中華民国が実効支配している地域(台湾地区)には、基隆市、新竹市、嘉義市の3市が存在する。
現行の法律では、都市には以下の3種類の区分が存在する。 中華民国の建国直後に府は全て廃止され、県に再編された。市制の実施を望む県も存在したが、北京政府によって全て却下された。中華民国で初めて設置された市は、1921年(民国10年)に成立した広州市である。 広州を拠点に華南を統治していた広東軍政府は広州を独立した行政区画とすることを計画し、関連する法令の制定についての議論を行った。1921年、広東省議会は「広州市暫行条例」を可決した。条例は同年2月15日に施行されて広州市が正式に成立し、孫科が初代市長に就任した。同年3月に「汕頭市暫行条例」が制定され、広東省澄海県に属していた汕頭も市制を施行した。 同年7月3日、北京政府は「市自治制」を公布し、市を「普通市」と「特別市」の2種類に区分した。普通市は県に属し、特別市は県と同格であると規定された。特別市の設置は大総統の命令に従って内務部が行った。京都特別市(現:北京市)と青島特別市の2市が設置され、首都である京都特別市は内務総長の直接監督下に置かれた。 中国国民党率いる国民政府による北伐が完了した1928年(民国17年)、「市組織法」と「特別市組織法」が公布された。この法律によって市の最高行政機関は「市政府」、最高立法機関は「市参議会」と命名された。1930年(民国19年)、新たな「市組織法」が制定された。この法律により、市は「院轄市(現:直轄市)」と「省轄市」の2種類に再編された。院轄市は省と、省轄市は県と同格であるとされ、院轄市の設置要件は人口100万人以上、省轄市は20万人以上と規定された。市の下には区が置かれ、区の下には保、その下に甲が置かれた。10?30戸を1甲、10?30甲を1保、10?30保を1区とした。 1945年(民国34年)、日本の降伏に伴って国民政府が台湾を接収(台湾光復)した際、台湾総督府が「台湾市制」に従って設置していた市を省轄市・鎮・郷のいずれかに改編することを予定していた。しかし民意の影響を受け、台湾省内限定の行政区画として、省轄市と鎮の間に新たに県轄市が設けられた。県轄市の下には区は設置されず、代わりに里が設けられた。 以下は、1949年(民国38年)の中華民国政府の台湾への移転時点での省轄市の一覧である。 編号市名所属設置年月日人口
直轄市:行政院の直接管轄下にある市。
市:省の管轄下にある市。かつては「省轄市」と称した。
県轄市:県の管轄下にある市。
沿革
中華民国政府の台湾移転以前
北京政府時代「北京政府の行政区分」も参照
中国国民党政権時代「南京国民政府の行政区分」も参照
(1948年)備考
01050徐州市江蘇省1945年10月606,1361939年に中華民国臨時政府が銅山県から分離させて設置。戦後国民政府の下で再設置。
01060連雲市1935年12月76,753灌雲県から分離。1935年8月31日に市政籌備処を設置。同年12月に行政院が市の設置を承認。
02001杭州市浙江省1927年6月30日606,136杭県から分離。
03040蚌埠市安徽省1947年1月1日105,237鳳陽県から分離。