市場シェア
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市場占有率(しじょうせんゆうりつ、: market share マーケットシェア)とは、ある特定の市場全体の中で、ある商品製品サービス)がどれくらいの割合を占めているかを示す比率である。「市場シェア」などとも言い、日本の実務の現場ではしばしば短縮形で「シェア」と言う。

なお、日本では市場占有率の意味で「シェア」という言葉を用いることがあるが、これは日本特有の用法である。英語では、市場占有率はあくまで「マーケットシェア(market share)」と言い、「share シェア」とは略さない。英語圏のビジネスの場でシェア(share)と言う場合、通常は「株式」のことを指す。文脈によっては株価を意味する。よって英語圏の人に市場占有率と伝える場合は省略せず「market share マーケットシェア」と言うしかない。
目次

1 概説

2 相対的市場占有率

3 脚注

4 関連項目

概説

市場占有率は、ある特定の市場において、ある商品(製品やサービス)が占める割合を示す。比率の計算のしかたとしては、売上高で計算する方法が最も一般的であるが、他にも販売個数(販売台数)や他の方法(重量ベースなど)で計算する方法もある。また特定の「市場」において、さまざまな製品を製造企業ごとに分類して「○○社製品」とくくっておいて、企業ごとの占有率を計算する方法もある。その場合も売上高ベースで計算する方法が一般的だが、個数(台数)で計算する方法もある。

例えばある特定の市場の総売上高が100億円で、その中のA社の売上高が40億円で、B社の売上高が25億円だとすれば、A社の市場占有率は40%で、B社の市場占有率は25%、ということになる。

市場占有率を求める場合の「市場」には厳密な定義はなく、その時々の必要に応じて線引き(定義)がされる。たとえば冷蔵庫を例に挙げると、世界シェアを意識しているメーカーならば「世界の家庭向け冷蔵庫 市場」のシェアの情報を求める、ということもありうるし、たとえばインドに冷蔵庫を売り込む方法を模索しているメーカーならば「インドにおける家庭向け冷蔵庫市場」の各社シェアの情報を知りたがる、ということになる。範囲を広げて、「インドにおける白物家電全般 市場」の占有率を求める場合もあるし、逆に特定のタイプの冷蔵庫だけが関心事の場合、たとえば「インドにおける家庭用小型冷蔵庫 市場」の占有率などという切り分けがされる場合もあるわけである。

また単位(売上高、販売台数など)、期間(1年間、通算など)、地域(国内、海外など)、商品やサービスの区分なども、市場占有率を求める目的に応じて選択される。

市場占有率を上げることによって得られる効果は、製品の種類によって異なるが、たとえば次のようなものがある。

市場に対する影響力(発言力)の拡大

顧客の囲い込み

市場占有率と経営戦略

企業ごとに市場占有率に対する経営戦略は異なる。製品ごとの性質や、国や地域ごとの市場の性質の相違によって、市場占有率に関してどのような戦略を選ぶのが良いのか、ということも異なっていて、各社はさまざまな戦略を採用しうる。たとえば製造量が大きく市場占有率が大きいほど有利さが大きくなるような市場では、目先の利益を度外視してでもまずは自社の市場占有率を高め、他社のシェアが小さくなるようにし、競争相手がほぼなくなった段階で自社製品価格を上げて利益を得る、という計画のもとに一連の活動を行う企業もある。その目論み通りにことが運ぶ場合もあるが、その計画が裏目に出て、予想以上に競合他社が善戦したり、安売り合戦になってしまい、製品をひとつ売るごとに自社で赤字が膨らみつづけ、当初の計画よりもその額が大きくなり資金繰りが悪化し耐え切れなくなり結局 大ダメージを受けて、長期の不振に陥ったり、倒産してしまう、という企業もある。他にも、他社が大きなシェアを持っている市場で製品を製造している会社では、その市場のまま不利な戦いをするのは意識的に避けて、新たな着眼点で製品をとらえなおしたり、自社製品に新たな特徴を加えるなどして、「新たな商品カテゴリ」、一種の「新たな、小さな市場」(ニッチ市場)を自力で作り出して、その市場における占有率で上位をとる、という戦略を選ぶ会社もある。(こうして日々、小さな市場が、生み出され続けている。)また最初からシェア上位は一切狙わず、あえてシェアは低く保ち、製造数を抑えることで客から見て希少性があるようにし、製品の顧客から見た「価値」を上げつつ、ひとつひとつの製品の価格を意図的に高めに設定し自社の利益率を上げる、という戦略を選ぶ会社もある。

製品の性質や、ひとつひとつの市場の性質、自社の得意分野、自社の苦手分野、またその市場に参入している競合他社の競争力や、その時々に競合他社が選んだ戦略や、他社が突如 変更した戦略などによって、自社が選ぶのに適した戦略は変わり、またそれらは時とともに変化することも多いので、いつでも、どの市場でも、どの製品でも通用するような戦略や戦法が固定的にあるわけではない。ある市場のある製品でうまくいった方法でも、他の市場ではまったく通用しない、裏目に出る、ということも起こりうる。また、時代が変わったら顧客の性質が変わって市場の性質が変わり、かつてある市場でうまくいった方法が、その同じ市場でその後まったく通用しなくなった、という事例は世の中に溢れている。
相対的市場占有率

ある企業の市場占有率がその同一市場のトップ企業の市場占有率に対して示す値を相対的市場占有率(Relative market share)という[1]

相対的市場占有率は同一マーケットにおけるトップ企業の市場占有率に対する値である。例えばあるマーケットにおいて、A社が一番の市場占有率をもっているならA社の相対的市場占有率は100%である[2]。また、同一のマーケットにおいてB社がトップ企業であるA社の半分の市場占有率しかなければB社の相対的市場占有率は50%である[2]

市場占有率が市場全体における企業の位置を示すのに対し、相対的市場占有率は企業の競合他社との関係を示す数値である[2]

相対的市場占有率はプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの分析に用いられる[1]
脚注^ a b 土方千代子、椎野裕美子『「経営学の基本」がすべてわかる本』秀和システム、2009年、88頁
^ a b c 土方千代子、椎野裕美子『「経営学の基本」がすべてわかる本』秀和システム、2009年、89頁

関連項目

規模の経済

マーケティング

産業組織論

寡占

独占

カルテル

独占禁止法


更新日時:2019年7月9日(火)03:57
取得日時:2019/08/02 10:15


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