差金決済取引
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差金決済取引(さきんけっさいとりひき、: contract for difference、CFD)とは、有価証券の受渡しを行わずに、売買価格差等[注釈 1]に相当する金銭の授受のみにより差金決済する取引または金融商品である。

現在、先物取引、株式信用取引、先物オプション取引、くりっく株365FX取引、CFD取引、等に差金決済取引が幅広く利用されている。

外国為替証拠金取引FX取引)も証拠金を預け、レバレッジをかけて取引を行うことから、差金決済取引の一つと言える。ただし、一般には、外国為替のものをFX、それ以外の株式株価指数債券等のものはCFDと呼ぶ。先物取引と類似したものであるが限月がCFDには無い。CFDには「取引所CFD」と「店頭CFD」の2つがあり、日本の「取引所CFD」はくりっく株365のみで、株価指数のみを扱っている。原発産業保護制度の差額決済契約はCFDの一つである。
概要

CFDの原型となる「バケットショップ[注釈 2]」は場外取引店[注釈 3]の一種で、ジェシー・リバモアが売買し利益を上げたことで知られている。これは取引所の会員権をもたない仲買人が小口投資家を相手におこなう不正規のもので、1929年の株式暴落の際に詐欺行為として全面禁止された。

現代のCFDは1990年代前半に、ビッグバン発祥地ロンドンで始まった。アメリカでは1997年の法改正によりCFDが開始された。

金融商品としての差金決済取引はインターネット取引が中心である。一般に低い手数料で、自分の判断で瞬時[注釈 4]に注文を出せる。

「店頭CFD」の場合、取引所CFDや上場先物取引などとは異なり、取引は市場を介しておこなわれるのではなく証券会社との取引となり、証券会社によって約定までの時間、流動性提供能力に違いがあるとされる。店頭CFDは注文を証券会社が受け取ると、それをカウンターパーティーに発注、それをヘッジ市場にてヘッジ取引する。

「取引所CFD」の場合、くりっく株365で取引が行われ、流動性を上げるためにマーケットメイカーが入っている。2010年より日本の証券会社はCFDも分別管理が義務づけられているが、かつては、預託金の分別管理が義務付けられていないため、業者によっては当該業者の破産などにより預託金が返還されないリスクがあった(カウンターパーティリスク)。業者選別に関しては特に注意が必要である。

他の特徴を下に列挙した。
時間帯
株式市場の場合、多くの個人投資家は就労時間と株式市場の取引時間が重なってしまうが、外国の証券取引所での取引を行う場合はリアルタイムに取引を行うことが出来る。
売りから入れる
指数が上昇する場面でも、下降する場面でも「売り」、「買い」のポジションを使い分けることにより利益を狙うことが出来る。これは株式信用取引における空売りやFXも含めた各種商品先物取引と同様である。加えて、海外の金融商品をCFDで売りで取引した場合、対象国の方が金利が高い場合は金利差分を受け取ることが出来る。
デイトレードが可能
株式の現物取引の差金決済取引は禁止されており、それゆえ、買い付け余力がない場合は、同一銘柄を一日に何度も取引することは出来ないが、CFDでの株式取引は現物取引ではないので、同一銘柄を一日に何度も取引できる。
レバレッジ
CFDでは先物取引同様、株式指数商品などにおいてレバレッジをかけて取引が出来るため、レバレッジの分だけ少ない金額で投資が出来る。ただしレバレッジを上げるとハイリスク・ハイリターンな取引になることに留意する必要がある。これはFX取引と同様レバレッジをかけて取引することで証拠金の数倍から数百倍の額を取引することが可能となるため、少ない元手で短期に多額の利益を上げることが出来ることがある一方、予想と反対の値動きをした場合には多額の損失を被るためである。ロスカット制度がない、あるいは市場の混乱、システムトラブル等で正常に取引できなかった場合は、証拠金以上の被害を受け、追加保証金の差し入れを要求されることもある。日本の「店頭CFD」の2018年3月末の建玉残高の平均レバレッジは1.5倍(建玉残高が366億円、証拠金等残高が243億円[1])。
レバレッジ型ETFとの比較
レバレッジ型ETFは通常1日の価格変化分にレバレッジをかけるが、値段が下がった場合、それが元に戻るための上昇幅はより大きくなってしまう。例えば、レバレッジ2倍で、対象商品の価格が1日で10%下がった場合、レバレッジ2倍なので20%下がるが、これが元に戻るには対象商品が12.5%(レバレッジ2倍で25%)上がらないといけない。CFDの場合は証拠金不足にならない限りは価格が10%下がっても11.1%上がり元の価格にさえ戻ればスプレッド分を除けば損は発生しない。
取引単位は100万円前後(くりっく株365でレバレッジ1倍の場合)
株価指数を投資信託で購入する場合100円以上1円単位で購入できることが多いが、CFDでレバレッジ1倍の場合、銘柄次第だが、くりっく株365では取引単位は100万円前後に設定されている。店頭CFDは証券会社および銘柄によっては10万円前後の場合もある。
金利調整額
国外の価格や指数を用いた取引の場合、自国との金利差があるため、その調整として金利調整額の支払い、または受取りが生じる。基本的にポジションが「買い」の場合は金利調整額を支払う。これは外国為替証拠金取引(FX)におけるスワップポイントに相当するものと言えるが、FXとは仕組みが異なるため逆になる点に注意が必要である。買い金利調整額 = -売り金利調整額になっていなく、売りでも買いでも関係なくポジションを持っていることに対する手数料をこの中に入れている店頭CFDもある。
配当金調整額
特定企業の株価等を指数とする取引の場合、配当金に相当する調整額のやり取りがなされ、ポジションが「買い」の時は受け取り、ポジションが「売り」の時は支払いとなる。店頭CFDの場合、一般に同一取引で支払い額は受取額を下回り、その差額はCFD業者の利益となる。
先物に基づくため現物と価格がずれる
CFDは先物取引に基づくため価格が現物と異なる。株価指数先物取引の場合、精算日に精算するのは株価指数分の価格のみなので、その理論価格は、r = 無リスク金利 - 配当金利、t = 先物の精算日までの時間、とした時に現物の e r t {\displaystyle e^{rt}} 倍になり、つまり無リスク金利が高いほど先物価格は高く、配当金利が高いほど先物価格は安くなる。CFDの場合は証券会社および銘柄によってパターンが分かれる。
毎日金利と配当を調整する場合(くりっく株365など)
取引所CFDのくりっく株365は買いの場合は、毎日、その日に配当した会社の配当分を受け取り、無リスク金利分支払う必要がある。なので、先物取引とは逆で、無リスク金利分安く、配当金利分高くなっている。もし株価指数を構成する全ての会社の配当日が一緒であれば、その配当日は「株価指数 + 配当金 - 1日分の無リスク金利」の価格で終わるはずである。現実には配当日はバラバラなので、未来の配当分だけ常時高くなっていて、全ての会社の配当までの日数と金額を元に理論価格を計算する必要がある。


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