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工業化(こうぎょうか、industrialization)またはインダストリアリゼーション[1]とは、農業中心の社会から工業中心の社会へと移り変わること。18世紀半ばのイギリスの産業革命に端を発し、現在に至るまで続く、農耕社会から産業社会へと変化するプロセスである。産業化の訳語が用いられる場合もある。 一般的に定義すると、工業化は「農耕社会から産業社会、即ち農業を主体とする社会から工業主体の社会への転換」を意味するが、厳密な定義は困難である。しかし、概ね、人力や畜力を離れ蒸気力や電力といった非生物的な動力の採用と産業の機械化を決定的な契機として、社会全体の変化が引き起こされるという点で一致している。ただし工業化は必ずしも蒸気動力の導入以後に限定されない。 W.W.ロストウは工業化の決定的段階をもたらす条件として、1.生産的投資率の10%以上への上昇、2.製造業部門の高成長、3.経済成長を可能にする政治的、社会的、制度的枠組みの整備、の実現を挙げており、これらの条件を満たすことにより、工業化への離陸(テイク・オフ)が可能になるとされる。この工業化のプロセスの初期段階を一過性で個別的な歴史的事件と捉えた見方が「産業革命」である。 また工業化は近代化と極めて近い概念だが、近代化が民主主義などの政治的要素を含む概念なのに対し、工業化は技術的・経済的変化に重点を置いた見方である。その為、後発の発展途上国などでは工業化は進みながらも近代化が遅れている、という状況も生まれうる。なお、工業化も近代化も社会的な変化を含む、という点では共通している。 工業化を経験した社会では、農業などの第一次産業から工業などの第二次産業へと労働人口が移動する。労働人口の移動により、やがて農業部門の余剰労働力は底を突く(ルイスの転換点)。農業においても機械化は進行し、自給自足的なそれから市場的交換経済を前提としたものへと変化していく。それに伴い親族集団の解体と農村共同体の崩壊が進み、核家族化、大衆社会化などが進んでいく。また蒸気力の導入により、工場は川の傍という制約を離れ、労働力を確保しやすい都市近郊へと移り、都市化傾向に拍車を掛けることになる。 工業が何かしらの理由で比較優位性をもつと工業への資源集中が始まる。工業化の前段階においては農業が主産業である場合がほとんどであるため、農産業の資源解放(解体)が同時に進行する。 工業は、農業よりも少ない土地により多くの労働量を吸収して発展する。さらに、工業は規格化や生産手段の高度化を行ないやすいために、農業よりも生産性向上が早まり、農業から工業への資源配分転換を促す。 輸出、国策による殖産興業、国内需要の発生、輸入代替などさまざまな理由から工業製品の需要が生まれ工業化を支える。この需要には、工業が成長する過程で行う設備投資も含まれるため、自らの成長が自らの需要を生む循環が発生する。 工業化は、工業の発展に伴い必要となる金融・流通などの産業に膨大な労働需要を生む。農業解体によって解放される資源を、それらの産業との間で分配した後は、移転的な成長を終え「工業化」のプロセスは終了する。このため、すべての資源が工業に投入される状況にはならない。 生産性上昇速度の速い工業への資源配分が進むことで、経済成長率が高まる。また、設備投資の増大が乗数効果をもたらし有効需要をもたらす。経済全体は、次第に工業生産の変動の影響を受けるようになり、在庫や設備投資の循環により景気循環が生まれる。また、競争力のある工業国が加工貿易により資源輸入と製品輸出を行なうようになるため、貿易が発展する。 工業により、賃金労働者が増加し商品取引の機会が増すため貨幣経済が発展する。また、工業の景気循環により、労働者が解雇され失業が発生するようになる。 工業は投資を増大させるため、資本ストックが累増する。このため、労働者の実質所得は上昇し生活が改善される可能性が高まる。 工業はそれまで、耕地面積に依存していた付加価値生産を空間的に集約する効果を持つ。この効果は、労働力の集中をもたらす。そのため工業化の拠点では都市が発達する。また、都市における工業経済は、商取引(国際的には貿易)により工業製品と食料を交換することが可能であるため、人口増大をもたらす。工業化は、都市化と人口増大を経て社会に多大な影響をもたらす。 結果的に大衆社会が生まれ、政治や法制度の仕組みも変わっていく。また、伝統的な農村共同体が解体し、都市において若い匿名社会が生まれるため、結婚や家庭に対する観念も転換していく。 工業経済が、投資可能な資本家と投資不可能な労働者との間で所得配分を行なう結果、豊かなものと貧しいものへ分化し階層社会が発生する。 工業化と同時に大量生産を基盤にした商品貨幣経済が発達するために、文化も変化する。それまで閉じた社会において有限な資源を循環させていた文化が崩壊し、開かれた社会が外部からの資源投入を受けて消費を続ける文化が生まれる。商品化の発想は次第に枠を広げ、行動様式は変化する。また、規格統一の価値が高まるため、量産や一律的な対応といった行動が人々の思考にも影響を与えるようになる。 また、大量生産への応需を図るため大衆社会へ向けた広告宣伝が重要となり、商品生産者をスポンサーとした文化が生まれる。 国名開始時期特色鉄道開通年と開通区間
概要
工業化のプロセス
影響
経済
社会
文化
各国の工業化が望まれています。
イギリス1760年代1.木綿工業の紡績部門・綿布部門で交互に展開
2.19世紀前半「世界の工場」としての地位を確立1825年、ストックトン・オン・ティーズ - ダーリントン
フランス1830年代1.フランス革命で創出された小農民中心(資本蓄積の遅れ)
2.七月王政期より本格化。発展はゆるやか
3.絹織物工業(中心リヨン)から開始1832年、リヨン - サン=テティエンヌ
ベルギー1830年代1.1830年のベルギー独立革命が契機
2.独立後の経済危機を克服すべく、国家主導で銀行・産業を育成
アメリカ合衆国1830年代1.米英戦争(1812年 -1814年)後のイギリスからの経済的自立
2.西部開拓による国内市場の拡大
3.南北戦争後に本格化1830年、ボルティモア - エリコット・シティ
ドイツ帝国
( ドイツ)1840-50年代1.領邦制のなかでのユンカー・ブルジョワの台頭
2.ドイツ関税同盟(1834年)による市場の統一
3.重工業から開始、西南ドイツやプロイセンで展開1835年、ニュルンベルク - フュルト
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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