巡回連絡
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巡回連絡の様子(北海道警

巡回連絡(じゅんかいれんらく)とは、日本の警察官が地域住民や事業所を訪問し犯罪の抑止、災害防止などの目的で行う活動である[1][2]。また、住民との良好な関係を保つため、受持区内の実態を掌握するためという目的がある[3]

戦前視察と呼ばれ、社会主義者や準社会主義者を監視するために行われていた[4]。視察は戸口調査とも呼ばれ、1875年の太政官達「行政警察規則」第4章「巡査心得」における第五条 持区内ノ戸口男女老幼及其職業,平生ノ人トナリニ至ル迄ヲ注意シ,若シ無産体之者集合スルカ又ハ怪シキ者ト認ルトキハ常ニ注目シテ其挙動ヲ察スヘシ 第六条 持区内へ他ヨリ移リ来ル者アラハ前条ニ随テ速ニ之ヲ探知スヘシ 但右等ノ事ニ付権威ヲ以テ其人ヲ呼出ス等ノ儀ハ決シテ有之間敷,勉メテ当人ノ覚知セサル様隠密ニ探偵スルヲ以テ警察ノ本意トス。若シ已ムヲ得サルコトアルトキハ自ラ行テ尋問スヘシ

との規定を根拠としていた[5][6]。この制度が巡回連絡の名称で復活したのは1950年のことであり[7]、主な目的は、地下にもぐった共産党員の摘発であった[8]
概要

交番勤務の警察官が、自身の受持ち地域内にある家庭や事業所などを訪問し、相談や警察に対する要望、意見などを聞き取り、あるいは事件事故の防止の観点からの必要な連絡などを行う[1][2]。この際、警察官は以下の情報を住民側に説明しているとしている[9]

管轄地域での最近の犯罪災害事故の発生状況と被害の防止方法。

被害に遭う可能性の高い犯罪及び災害事故の発生状況と被害の防止方法。

犯罪や災害事故等の発生時における応急措置及び緊急の連絡方法。

訪問の際に、警察官は巡回連絡カードと呼ばれるものを作成する[9]。交番又は駐在所から制服の警察官が訪問する。私服の警察官が巡回連絡に訪れることはない[9]

日本に住む外国人が急増している現況を鑑み、民間通訳人を同行した外国人世帯への巡回連絡を強化している警察署もある。静岡県警では外国人共生対策の一環と称し、富士宮市内で行っている。理由は「外国人に日本での生活に安心感を与える」としている[10]

巡回対象

受持ち区内のすべての家庭と事業所。ただし警察署長が巡回連絡を行う必要がないと認めて特に指示したときは、この限りでないとしている[3]

巡回連絡の実施回数

一般家庭等、定住性のある対象 - 2年に1回以上[3]

アパート、貸家等、転出入者の多い対象 - 半年に1回以上[3]

事業所等 - 年に1回以上[3]

巡回連絡を実施する時間帯

訪問先の住民の迷惑にならない時間帯に行う。訪問先の住民の都合で夜間に巡回連絡を行う場合は、警察署の地域課長の承認を受けなければならない[3]

法的根拠

警察法2条(警察の責務)[11]

第二条 警察は、個人の生命身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。

2 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。

警察法第二条に書かれている内容は上記の通りであるが、例えば大阪府警ではこれを自署のホームページ内で以下の通り表現している[2]。警察法2条(警察の責務)「巡回連絡は公共の安全と秩序の維持を図る為に、地域警察官のみに与えられている重要な任務である」[2]

地域警察運営規則(昭和44年国家公安委員会規則第5号)第20条は、交番勤務及び駐在所勤務の巡回連絡について定めている[12]
巡回連絡カード

巡回連絡の際に、巡回連絡カードと呼ばれる個人情報票を作成している。多くの警察署ではこれを「地理案内や迷子の連絡、事件・事故の発生時における緊急連絡先への連絡など、住民へのサービス活動に役立てるもの」と説明している[1]。例えば大阪府警では例を挙げ、緊急時や万が一の時に「留守宅に空き巣に入られた」「自宅が火事になった」「身内が何らかの事故や犯罪に巻き込まれた」などの場合に緊急に家族など関係者への連絡のために使用するもので、それ以外の目的で使用せず鍵のかかるキャビネットで厳重に保管しているとしている[2]

これには以下の情報が記入されている。

家族全員の氏名、非常時の連絡先の勤務先、学校、実家などの電話番号[9]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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