州間高速道路(しゅうかんこうそくどうろ、英: Interstate Highway インターステート・ハイウェイ)は、アメリカ合衆国の高速道路である。
高速道路網全体としては、一般には州間高速道路網(しゅうかんこうそくどうろもう、Interstate Highway System)と呼ばれ、正式名称はドワイト・デーヴィッド・アイゼンハワー全米州間国防高速道路網(ぜんべいしゅうかんこくぼうこうそくどうろもう、Dwight David Eisenhower National System of Interstate and Defense Highways)である。 州間高速道路網は自動車専用道路(ハイウェイ)によって構成されており、交通状況が許容する限り、高速走行が可能である。州間高速道路網には連邦政府レベルでの特別な資金が割り当てられているが、設計・建設・維持管理は州単位で行われ、所有権も各州に帰属している。ただし首都環状道路のウッドロウ・ウィルソン橋は唯一の例外として連邦政府に所有権がある。 州間高速道路網の道路は州間高速道路 (Interstate Highway) と呼ばれる。各州間高速道路にはそれぞれ個別の路線番号が付加されており、州間高速道路XX号線 (IH-XX; Interstate Highway XX) もしくは単に州間道XX号線 (I-XX; Interstate XX) と表記される。州間高速道路網はアメリカ国内の主要都市を網羅している。 新しい高速道路システムの計画は、連邦政府が州間高速道路網の構想を打ち出した1950年代以前から存在していた。1907年、アメリカのニューヨーク州で世界最初の高速道路の建設が開始された。そして1920年代までにニューヨーク市の公園道路システムのような長距離高速道路が、州単位の高速道路計画によって整備された。しかしながら交通量の増加により、州ごとに独立していたそれまでの高速道路システムを見直し、各州の高速道路を相互に連結してアメリカ合衆国全体としての高速道路網を整備する必要性が高まった。 戦時中、全米を車で横断するのに二ヶ月を要していたことをアイゼンハワーは体感していた。州間高速道路網は、1956年の連邦補助高速道路法の制定により整備が開始された。この法律は、当時のアイゼンハワー大統領が推進した道路整備計画の一環として制定された法律であり、全長約6万5000キロメートルの巨大な州間高速道路網を、250億ドルの資金を投じて、10年の期間を費やして整備するという、それまでのアメリカ合衆国の歴史の中で最も大規模な国家プロジェクトであった。 1956年の法整備により進められた州間高速道路網の建設は、当初の予定から大幅にずれ込み、計画から35年後の1991年に完了した。整備費用も、計画当初に見積もられていた250億ドルを大幅に上回り、最終的に1140億ドルを費やした。整備された州間高速道路の総距離は6万8500キロメートルで、その全線が片側2車線以上である。 アメリカ合衆国で建設される高速道路はすべて、米国全州道路交通運輸行政官協会が設定した規格に従わなければならない(連邦高速道路局 州間高速道路の制限速度は場所によって異なる。整備計画が立てられた当初は、多くの通行車両が高い速度を維持できない区間(険しい峠道など)を除き、時速75マイル(約121キロメートル)から80マイル(約129キロメートル)の速度制限が設けられていた。しかしながら1973年に発生したオイルショックの影響により、翌1974年に連邦政府はガソリン保護対策として最高速度を時速55マイル(約89キロメートル)に引き下げた。この規制は、石油の貿易停止が解除された後も安全対策として継続されたが、特にアメリカ西部地域で大きな不評を買った。これを受けて連邦政府は1987年に速度規制を緩和し、州の選択により最高速度を時速65マイル(約105キロメートル)まで引き上げられる決定を行った。そして1995年にはアメリカ合衆国の州間高速道路網全体の速度制限は撤廃された。 時速55マイル(約89キロメートル)の速度制限の完全撤廃とともに、連邦政府は最高速度の決定権を各州に委譲した。この決定を受けて、カリフォルニア州やバージニア州などの多くの州では、場所によって異なる速度制限を設定した。カリフォルニア州では、ロサンゼルス市内区間の最高速度を時速55マイル(約89キロメートル)、郊外区間の最高速度を時速65マイル(約105キロメートル)、砂漠地帯や田園地帯区間の最高速度を時速70マイル(約113キロメートル)に設定した。また、カリフォルニア州やインディアナ州などの一部の州では、業務用トラックに対し、一般乗用車よりも低い速度制限を課した。カリフォルニア州では、一般乗用車に対する速度制限とは別に、業務用トラックの最高速度を州全体で一律に時速55マイル(約89キロメートル)と設定した。 速度制限の完全撤廃後も州間高速道路の最高速度を時速65マイル(約105キロメートル)のまま維持する州がある一方で、州間高速道路の最高速度を70マイル(約113キロメートル)ないし85マイル(約136キロメートル)に引き上げる州もあった。多くの場合、最高速度を低い速度に設定している州はアメリカ合衆国北東部に多く存在し、逆に高い速度に設定している州はアメリカ合衆国南部および南西部に多く存在する。モンタナ州では「適切かつ慎重な速度」で走行するよう定めたが、あまりに漠然としており憲法に違反するという理由により、施行からわずか数年で撤廃された。 州間高速道路網は乗用車やトラックの通行を考慮した設計となっている。また、アメリカ合衆国が軍事活動や民間防衛活動を行う際に、部隊が円滑に展開できる設計にもなっている。 州間高速道路網は核戦争などの有事やハリケーンなどの自然災害が発生した際に、都市から緊急避難するために使用される(ハリケーン用避難経路)。また緊急時には避難効率を最大化するために、州間高速道路網のすべての車線が災害地から避難する方向に切り替えられる。ジョージア州の州間高速道路16号線やノースカロライナ州の州間高速道路40号線、ルイジアナ州の州間高速道路10号線など、アメリカ合衆国南部の一部の州間高速道路では、本来の進行方向とは逆方向に切り替えられた際にも使用できる設備が整えられている。 なお、州間高速道路網は戦争の際に航空機の滑走路として使用できるよう、5マイル(約8キロメートル)おきに平坦な直線道路が作られているという都市伝説が存在しているが、これは間違いである[1]。 州間高速道路はハワイ州にも存在し、他の州の路線と同様の資金提供を受けている。なお、アラスカ州およびプエルトリコにも他の州の路線と同様の資金提供を受けている高速道路が存在する。アラスカ州およびプエルトリコに存在する高速道路は公式な州間高速道路ではないために未公認州間高速道路 (Unsigned Interstate Highway) と呼ばれるが、一般には州間高速道路として扱われている。 州間高速道路の路線番号は米国全州道路交通運輸行政官協会によって決定される。 アメリカ合衆国において一級州間高速道路 (Primary Interstate Highway) と呼ばれる州間高速道路には、1桁または2桁の路線番号が付与される。また、一級州間高速道路のうち、東西方向の路線には偶数番号が付与され、南北方向の路線には奇数番号が付与される。さらに、東西方向の路線は南から順に路線番号が増加し、南北方向の路線は西から順に路線番号が増加する。ただし5で割り切れる数に関しては、アメリカ合衆国を縦断もしくは横断する主要路線に対して付与される。例えば5号線はアメリカ西海岸沿いにカナダとの国境からメキシコとの国境までを結ぶ路線であり、95号線はアメリカ東海岸沿いにフロリダ半島南端からカナダとの国境までを結ぶ路線である。また、10号線はカリフォルニア州ロサンゼルスからフロリダ州ジャクソンビルまでを結ぶ路線であり、90号線はワシントン州シアトルからマサチューセッツ州ボストンまでを結ぶ路線である。 一級州間高速道路のうち、76号線 3桁の番号が付けられた州間高速道路は二級州間高速道路 (Three-digit Interstate Highway) と呼ばれ、一級州間高速道路の支線であり、一級州間高速道路と直接または二級州間高速道路を介して接続している。二級州間高速道路には州毎に個別の路線番号が付与されるため、同一の路線番号を持つ二級州間高速道路が複数の州に存在する場合もある。ただし同一の州内では同一の路線番号を付与できないため、同一の州に同一の路線番号を持った複数の二級州間高速道路が存在することはない。 二級州間高速道路に付与される路線番号の下2桁には、本線となる一級州間高速道路の番号が用いられる。
概要
歴史1993年に発表された記念標識
規格
制限速度
多目的設計
路線分類
一級州間高速道路
二級州間高速道路