岐阜県庁裏金問題
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岐阜県庁裏金問題(ぎふけんちょううらがねもんだい)は、岐阜県において県職員や組合県教委が組織的に裏金を集め、使われていた不祥事である。2006年7月に発覚。第三者による検討委員会は1992年度からの12年間で約17億円の裏金があったと報告し、監査をする側の監査委員事務局からも裏金が見つかっている。自治体としては過去に例のない規模の処分が行われ、裏金問題としては初めて懲戒免職の処分が行われた。
日本の裏金問題

日本において裏金を作ることは以前は珍しいことではなかった。中央官庁警察地方自治体教育委員会等において、情報公開条例の制定をきっかけとして、各地で裏金の存在が明らかとなった。特に1995年官官接待カラ出張が各地で問題となり、全国的にこの問題が明るみに出た。1998年8月に全国市民オンブズマン連絡会議が実施した調査では、自主調査を行った28都道府県のうち25都道府県で計436億6308万円の不正支出があったと報告した。なお、岐阜県は「裏金問題は調査せず」と回答していた[1]
岐阜県における裏金

1960年の半ばにはすでに存在していたと言われており、1994年度まで県組織のほぼ全体で行われてきたという[2]

全国的に官官接待やカラ出張が注目された1995年度に、県は旅費や食糧費の支出について「不適正な事例はない」などと裏金の存在を正式に否定してきた。また、1995年4月に岐阜県情報公開条例が施行されたことで、裏金作りが抑制され、さらに、全国で市民オンブズマンが相次いで自治体の食糧費の情報公開を求めたために、県の出納当局から課に対しプール金を使わないように指示があったとされる。
裏金作り

架空請求による裏金作りは、大半が旅費であり、庶務係が架空の旅行命令書を作成し、旅費を現金で受け取っていた。他にも、食糧費の架空の支出命令書を作成し、食糧費をいったん飲食店に振り込んだ「預かり金」を正規の予算では支出できない官官接待や、幹部ら職員間の飲食費に充てられたり、現金で飲食店からバックさせていた。同様に、消耗品費、印刷製本費などでも裏金をつくり、業者への預かり金として裏金を作っていた。
外郭団体

県組織のみならず、外郭団体や実行委員会の13団体が1992年度から2000年度までの9年間に総額4769万8000円の裏金をつくっていたことが明らかになった[3]。県費を財源として裏金を捻出していた9団体は、2007年9月3日までに利息を含む約3420万円を返還した。
裏金の発覚(2000-2001)

2000年5月に県立衛生専門学校のカラ出張による裏金工作が発覚。同校の会計担当次長ら20人が処分された。

2001年2月に中山間地農業試験場・高冷地農業試験場で裏金工作が発覚。諭旨免職の3人を含む39人が処分された。元岐阜県知事梶原拓も3か月間の給料を10%減額、2人の副知事出納長も給料の10%を自主返納した。

裏金の隠蔽
職員組合

職員組合の管理口座に最初に裏金を移したのは1999年1?3月頃。県庁組織・機構再編を前に、管理していた裏金の行方が分からなくなることを回避するため、裏金の存在が表面化することによる行政に対する批判の高まりを懸念し、本庁の裏金を県の監査が及ばない職員組合に移された。

そして再び、ペイオフ解禁を前にした2001年3?6月頃。同一預金者の複数の口座情報を一つにまとめる「名寄せ」が行われることにより、各課の裏金の存在が表面化するのを避けるために各部署の裏金が職員組合に移された。

また、高校で徴収したPTA会費や寄付金のうち使われずに残ったプール金を、学校の修繕費としてあてられるはずが裏金と同じ扱いとして、組合に移し替えてしまった例もあった。

検討委員会の報告によると約2億7000万円が集約されたという。
その他
使用
各課で集められた裏金の一部は、
官官接待費用、親睦会費、餞別費、予算外の備品などに使われ、組合に移された裏金の一部は、組合基金特別会計、職務関連訴訟等特別会計、イベント等チケット購入、多重債務職員への貸し付け、県の裏金づくりに協力し倒産した企業への助成などに使われた[4]。また、個人流用され私的に費消した例もあった。
寄付
寄付として国連児童基金(ユニセフ)や岐阜新聞社を始め、複数の慈善団体などへの寄付金に充てられていた。ユニセフなどは明確となった額を全額返還するとした。
焼却・廃棄
処理の困った裏金のうち、現金紙幣が焼却されたり、廃棄されていたケースがあることが分かり、全国に波紋を広げた。また、実は費消していたのを隠すために虚偽の報告をした例もあった。
保管
退職した職員を含む関係者が保有していた裏金は、現金や預金で管理。現金は各部署の金庫に保管されていたほか、取引業者への預け金などの方法で管理していた他、自宅で保管していたものもいた。
1998年以後の裏金作り

ほとんどの部署が裏金づくりをやめた1998年度から2000年度の間に裏金を捻出していたのは、処分済みの3所属のほか農業総合研究センター、伊自良青少年の家であり、さらに地方労働委員会事務局の職員が2002年から2003年度にかけ、約7万円をカラ出張の旅費で裏金を作っていた。

これ以後は裏金作りはなくなったとされる。
裏金の返還

プール資金問題検討委員会は、1992年度から2003年度までの12年間の裏金は総額16億9722万1000円(推計)で、県への返還総額は、利子を含め19億1775万円と報告し、うち14億4520万円について退職管理職が6割の8億6712万円、現職管理職が4割の5億7808万円を負担。残る4億7255万円は組合か、個人保有などの職員が返還するように提言をした[5]

(通常、裏金の利息は法定利息(年5%)が適用される。岐阜県では住民が税金を滞納すると年14.6%の利息が加算される。)

元知事の梶原拓は、検討委員会が「最も責任が重い」と指摘した8人で退職管理職が返還する額の1割強にあたる1億505万円を分担。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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