山火事(やまかじ、英語:wildfire)とは、自然界における火災の日本語での総称。山でなく、平坦な土地の森林や草原で発生・延焼する場合も含み、その対象に応じて森林火災(しんりんかさい)、山林火災(さんりんかさい)、林野火災(りんやかさい)、原野火災(げんやかさい)などともいう[1]。乾燥や強風といった条件が重なると火災旋風に発展することもある[2]。
地球温暖化により頻度および規模が増大しており各地で大きな被害を出しているほか、山火事の多発が地球の大気中で温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)を増やしたり、北極と南極の氷や永久凍土の融解を促したりして温暖化を加速させる一因になっている[3][4]。 落雷や火山噴火などによる自然発火。特に落雷による山火事は1975年以降、毎年2‐5%のペースで増加している[5]。病害虫による立ち枯れや熱波などで乾燥した樹木の枯れ枝や枯れ葉は、摩擦により発火を起こすことが報告されている[6][7][8]。 猛禽のトビ、フエナキトビ 人間の手によるたき火、野焼き(火入れ)、焼畑農業、ゴミなどの野外焼却、タバコの不始末、火遊びなどによる失火、あるいは放火等が主因である[10][11][12]。 その他、電力会社が敷設する電線のショートによる発火、航空機の墜落、蒸気機関車の煙突から出る火の粉による火災もある(「物的損害」も参照)[13][14]。 アメリカ合衆国の2017年調査では気候変動によって件数と範囲が増加傾向にあることが示された。 イーストアングリア大学などの研究チームが2020年に発表した分析でも、地球温暖化が山火事の激化要因であることが示唆されている[15]。過去40年間で山火事の発生件数は10倍以上に膨れ上がっており、その背景は地球温暖化の進行で山が高温、乾燥状態になるためと分析されている[15]。 国連気候変動枠組み条約のフィゲレス事務局長は、 気候変動と山火事の関連性について「もちろん、確実にある。いまだ(二つの間の)直接的なつながりは解明していないが、明らかなのは、現代の科学が熱波が増加しており、それが今後も続くと示していることだ」と答えた[16]。 航空機やヘリコプターによる散水や消火弾の投下、消防車による放水の他に、樹木を帯状に伐採して防火帯を形成して自然鎮火を待つといった方法がある。 アメリカ合衆国やオーストラリアなどでは、落雷などにより自然に発生した山火事は自然のサイクルの一現象としてとらえ、人命に影響しない限りむやみに消火しないといった方策をとる場合もある。またロシアには、地元当局に森林火災の消火を義務づけないことを決めた政令を定めている[17]。これは 消火のための予算不足が理由で、火災が人家などに危害を及ぼさず、消火にかかる費用が森林消失で予想される損失を上回る場合は、地元自治体は火災を監視するだけで、消火しなくてもよいとしている。
原因
自然発火
人的要因
失火、放火
地球温暖化
対処C130ハーキュリーズによる難燃剤
消火
空中消火陸上自衛隊によるバンビバケット[18](空中消火用水のう
航空機を用いて、空から消火活動を行う。広大な森林や険しい山が多い国では、林野火災の現場まで消防車がたどり着けないことが多く、空中消火専門の消防隊が存在している。国によっては消防隊ではなく軍隊、警察や国境警備隊、山林を管轄する機関、民間企業などが行っていることもある。
スモークジャンパー米国内務省土地管理局のスモークジャンパー
アメリカ、ロシア、カナダで組織されている、遠隔地の山火事の現場にパラシュートで降下し、初期対応を行う消防士のこと。スモークジャンパー(英語版)と呼ばれる。隊員は現地に到着後、難燃剤(英語版)の散布、木を切り倒して防火帯を作るなどの作業にあたる[20]。 ヘリコプターで火災現場に人員を輸送し、迅速な消火活動を行う部隊。ヘリタック 速やかな消火と消火活動の強化を目的として、火を意図的につけて消火する方法。大規模火災において、通常の消火方法では消火不能と判断された場合に最終的手段として使用される[21]。火災進行方向にある可燃物の事前焼却を目的とするバーン・アウト、火災進行方向の変更を目的とするバック・ファイア(迎え火)、バックファイアの拡大を促進するカウンター・ファイアと呼ばれる消火方法がある[21]。 通常は地上の消防隊員により着火されるが、アメリカでは燃料タンクを吊り下げたヘリコプターを用いて、空中から着火することもある[22][23]。
ヘリタック
火を活用した消火
予防アメリカの山火事予防啓発キャラクターのスモーキー・ベア。「キミだけが山火事を防ぐことができる」として山火事の予防を訴えている。
山林への立ち入り禁止 - 新たな火災を起こさせないため、人的被害を防ぐために行われる[24]。
入山者等への啓発:林野庁、各地の消防庁等により啓発活動が行われている。[10][25]
火入れ - 乾季の初めに、植林地に人為的に火入れを行うことにより、草等の地表の可燃物を焼却除去することで、山火事のリスクを低減することができる。しかしカリフォルニア州などでは年間を通して高温で乾燥した状態が続いているために火入れができず、予防が困難になっている例ある[26]。
日本においては、火災警報、強風注意報、乾燥注意報などにより火の扱いに警戒を呼び掛けている[27][28]。アメリカにおいては、Red flag warning
被害山火事と大量の煙燃える樹木