属性_(ダンジョンズ&ドラゴンズ)
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属性(ぞくせい、Alignment、アライメント)とは、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』・ファンタジーロールプレイングゲームにおいて、人々、生物、社会の持つ倫理上(秩序/混沌軸)と道徳上(善/悪軸)の見地を分類したものである。

初期の『ダンジョンズ&ドラゴンズ』では、キャラクターを作成する際に、プレイヤーは3種類の属性から選択することができた。秩序は社会の規則に敬意をはらい尊重することを意味し、混沌はその逆を意味し、中立はそのいずれも意味しない。『アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ』では2つ目の軸である善、中立、悪が導入され、その組み合わせにより9種類の属性が提供された[1][2]

9種類の属性は以下のように格子状に表すことができる。

秩序にして善中立にして善混沌にして善
秩序にして中立真なる中立混沌にして中立
秩序にして悪中立にして悪混沌にして悪

9種類の属性の図式は第1版と第2版の『アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ』、その後継ゲーム第3版を通して使用された。2008年に発売された『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第4版では属性は5種類―秩序にして善、善、無属性、悪、渾沌にして悪―に減らされた。そして2014年発行の第5版で9種類に戻った
歴史

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の創作者であるゲイリー・ガイギャックスは、マイケル・ムアコック[3]ポール・アンダースンのファンタジー物語から属性システムの着想を得たことを認めた。1974年のダンジョンズ&ドラゴンズ・オリジナル・ボックスセットからの属性システムは当初、秩序、中立、混沌のみが使用された。秩序は概して善や英雄的行為と同等であり、混沌は無秩序と悪を意味した。しかしながら善と悪の並列は強く定義されてはいなかった。ドワーフは秩序、エルフは混沌であり、それに対し人間は3種類の属性のいずれでも有り得た。

リチャード・バートルは『Designing Virtual Worlds』で、属性は性別、種族(現実世界なら人種であろう)、キャラクタークラス、時に国籍などと共に、プレイヤーを分類する方法の1つであると指摘した。属性はロールプレイの手助けとなることを意図して作成された。プレイヤーはキャラクターに属性を割り当てる時に、彼がどのように振る舞うべきかを決定し、その決定に基づいてプレイを行う。秩序/混沌軸と善/悪軸が共に中立で交差する2次元の属性はAD&Dから採用された。「秩序にして善のキャラクターは慈悲深く公正である。秩序にして悪のキャラクターは規則通りにプレイするが慈悲がない。混沌にして善のキャラクターは良心を持った抵抗者である。混沌にして悪のキャラクターは自己の利益のみを追求するならず者であり、自分の欲望を遂げるためなら何でもするであろう」。他の5種類の組み合わせは、何らかの形の中立を含む。属性は変化することがあり得る。もし秩序にして中立のキャラクターが、中立あるいは悪の行動が可能であるにもかかわらず常に善行を演じるならば、その属性は秩序にして善に移行するであろう。それは主観的な問題であるため、ゲームにおいてはゲームマスター(あるいはダンジョンマスター)が属性のプレイに違反がなかったかを判定する[4]

プレイヤーキャラクター(PC)の属性は、彼らの人生観として見ることもできる。プレイヤーは自分のキャラクターが善、中立、悪かどうかを決める。プレイヤーはまた、キャラクターの属性が秩序、中立、悪かどうかを決める。中立にして善のキャラクターは「宇宙の均衡」については無関心であるが、自分の周囲の人々に対しては親切である。ゲームの初期の版における注目に値するキャラクタークラス制限として、パラディンは秩序にして善、ドルイドは真なる中立、レンジャーは混沌にして善あるいは中立にして善でなければならず、シーフは秩序であってはならない、というルールが存在した。属性はクレリックにとっても同じくらい重要である。D&Dの諸神格は「強力に設定」されており、彼らのクレリックは類似した属性を持たねばならない[1]

属性はゲームプレイのためのガイドラインであり単なる道具である。キャラクターがどのように振る舞わねばならないかの不変の基準などではなく、単にガイドラインとして用いられる。それでもやはり、グループ内のキャラクター達は共存可能な属性を持つべきである。秩序にして善のキャラクターは、共通の目的さえあれば秩序にして悪のキャラクターと共存できるが、混沌にして悪のキャラクターの加入はグループを分裂させるかも知れない。キャラクター達は彼らの仲間達の属性に何らかの影響を与えることさえあるかもしれない。秩序にして善のリーダーは、仲間達がより気高い行為を行うような影響を与えるかもしれない。『Dungeon Master For Dummies』の著者達は善か中立のキャラクター達によるグループがより良く機能するという経験則を得た。冒険に向けての動機付けはより容易であり、集団力学はより円滑となり、そしてそれは「D&Dの英雄にふさわしい態度を輝かせる」ことを可能とする[5]

このゲームでは既に本質的に善あるいは悪のクリーチャーを作ることが可能ではあったが、その概念が初めて明示的に属性システムに導入されたのは『アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ』(AD&D)においてであった。キャラクターやクリーチャーは秩序でありながら悪(例えば専制君主)、混沌でありながら善(例えばロビン・フッド)に成り得た[6]。組み合わせにより、全部で9種類の属性が使用可能となった。例えば秩序にして善(LG)あるいは中立にして悪(NE)は2つともあり得る属性であり、秩序/混沌の要素が先に、善/悪の要素が後に記述される。秩序/混沌軸と善/悪軸が両方とも中立であるキャラクターやクリーチャーは真なる中立あるいは単純に中立と呼ばれる。このシステムは『D&D』 第3.5版まで使用された。

AD&D第2版のルールでは、キャラクターが自分の属性に反する行為をあまりにも多く行った場合、属性の変更が為され、次のレベルに到達するために必要な経験点が増加するというペナルティが加えられた。D&D第3版ではこの制限は廃止された。

D&D第3版でも、キャラクターの属性によって使用できるキャラクタークラスが制限されることがある。例えば、秩序のキャラクターはバードやバーバリアンにはなれず、ドルイドは少なくともどちらか1つの軸は中立でなければならず、秩序にして善のキャラクターのみがパラディンになることができる。特定の武器(例えばホーリィ能力の付加された武器)あるいは呪文(例えばディテクト・イーヴル)はクリーチャーに対し、その属性によって異なる効果を及ぼす。

同じ属性を持つ人々が暗示やほのめかしによって、別の属性を持つ人々には内容が理解できないように情報伝達を行うことが可能な属性言語 というルールが存在したが、最近の版では除去されている。

第4版においては、属性は混沌にして善、秩序にして中立、混沌にして中立、秩序にして悪が廃止されて1つの連続体に統合され、単純化された。残された属性は以下の通りである。

秩序にして善:文明と秩序。

善:自由と思いやり。

無属性:属性を持たない;立場を明確にしない。

悪:圧制と憎悪。

渾沌にして悪:無秩序と破壊。

2つの軸
秩序/混沌軸

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』における秩序/混沌軸は、ゲームルール上では善/悪軸より以前から存在した。グレイホーク・セッティングの秘密の伝承では、同じく世界の先史において秩序/混沌の指針は善/悪に先行した。プレイヤーはしばしば秩序/混沌は善/悪ほどは自分のキャラクター影響を及ぼさないと考える。混乱の基として、秩序属性はキャラクターが必ずしも地域の法律に従うことを意味せず、同様に混沌属性が必ずしも地域の法律に従わないことを意味しない。

元来、秩序/混沌軸は次のように定義されていた[7]

法(あるいは秩序)は、全ての者が秩序に従うべきであり、規則に従うことが自然な生き方であると信じる。秩序のクリーチャーは真実を述べようと努め、法律に従い、生きとし生けるものを気にかける。秩序のキャラクターは自らの約束を守ろうと努める。彼らは法律が公平かつ公正である限り、法律に従おうと努める。

グループと個人の間で利益が相反することで選択せねばならない場合、秩序のキャラクターは通常、グループを選択するであろう。時には個人の自由はグループの利益のために制限されねばならない。秩序のキャラクターとモンスターはしばしば予測可能な行動を取る。秩序の行動は通常、善と呼ばれる行動と同じものである。

無秩序(あるいは混沌)は、法の反対である。人生は成り行き任せであり、偶然と運が世界を支配していると信じている。全ては偶然に起こり、何事も予測することはできない。法律は、人が処罰を免れることができる限り、破られるために作られるようなものである。約束を守ることは重要ではなく、嘘をつくことも真実を述べることも共に有用である。

混沌のクリーチャーにとって、個人はあらゆる事柄の中で最も重要である。自分本位が普通の生き方であり、グループは重要ではない。混沌の者はしばしば突然の欲望や気まぐれによって行動を取る。彼らは信頼することはできず、その行動を予測するのは難しい。彼らは運の持つ力に対して強い信念を持っている。混沌の行動は通常、悪と呼ばれる行動と同じものである。

中性(あるいは中立)は、世界が法と無秩序の間の均衡が重要であると信じる。どちらの側も強力になりすぎてこの均衡を崩さないようにすることが大切である。個人は重要であるが、グループもまた重要であり、両方とも協力し合わねばならない。

中立のキャラクターは、自分の生存に最も関心を持つ。このようなキャラクターは運よりもむしろ自身の機転と能力を信頼する。彼らは自分が他者から受けた待遇を相手に返す傾向を持つ。中立のキャラクターは、自分の利益になると考えればグループに加わるであろうが、そこに何らかの利益がなければ必要以上の助けにはならないであろう。中立の行動は、状況によって「善」または「悪」(あるいはそのどちらでもない)とみなされるかもしれない。

D&D第3版のルールでは秩序と混沌を次のように定義している[8]

秩序は名誉、信用、権威への服従、信頼性を意味する。


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