局所麻酔
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麻酔 > 区域麻酔 > 局所麻酔麻酔法の分類。局所麻酔薬と全身麻酔薬は作用点が異なる。

局所麻酔
治療法
MeSHD000772
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局所麻酔(きょくしょますい、: Local anesthesia、: Lokalanasthesie)とは、身体の特定部位の感覚を消失させる技術であり[1]、一般に局所鎮痛、すなわち痛みに対する局所的な感受性消失を誘発することを目的とする。しかし、その他の感覚も影響を受ける可能性がある。これにより、患者は苦痛を軽減した状態で手術や歯科治療を受けることができる。帝王切開など多くの状況において、全身麻酔よりも安全であり、したがって優れている[2]意識消失を伴わずに、麻酔薬が作用している部位のみを除痛する麻酔の方法である。

狭義の局所麻酔は、表面麻酔と浸潤麻酔(後述)のことを指す。これに対して、意識消失を伴う麻酔は全身麻酔という。局所麻酔は、主に、侵襲性の低い手術や簡単な縫合などの救急処置などの際に行われる。局所麻酔を行うための麻酔薬を総称して局所麻酔薬というものの、局所麻酔薬は、局所麻酔の目的だけではなく、手術時の全身麻酔薬と併用することにより、手術後の鎮痛目的にも用いられる。局所麻酔は「局部麻酔」[3]や「部分麻酔」[4]と表記されることも多いが、「麻酔科学用語集」にも[5]、日本医学会医学用語辞典にも記載はない[6]。略称の局麻が臨床において用いられることはある[7]

広義の局所麻酔には、神経ブロック(Nerve block、または伝達麻酔(Conduction anesthesia)が含まれる。神経ブロックは、局所麻酔薬の注入部位を神経叢などの太い神経周囲とすることにより、足や腕など、より大きな部分の麻酔を可能とするものである。神経ブロックの概念には、硬膜外麻酔脊髄くも膜下麻酔を含む脊髄幹ブロックが含まれることがある[8]。これらを総称して、区域麻酔(: regional anesthesia or regional block)と呼ぶ[9][10]。実際には、局所麻酔、区域麻酔、伝達麻酔という用語はしばしば互いに混同して使用される。「区域麻酔」および「伝達麻酔」も参照

局所麻酔という用語は、歴史的および薬理学的な理由から区域麻酔よりも望ましいという説がある[11][12]。しかし、分類の命名法は統一されておらず、表面麻酔と浸潤麻酔のみが局所麻酔という用語でまとめられ、区域麻酔は別に記載されることもある。

局所麻酔には、処置の最中に発生した何かしらの身体の変化に患者自身が気付くこと、全身麻酔薬が作用した場合には時に失われる自発呼吸も保たれること、意識消失に使用する全身麻酔薬が使用しづらい状況でも手術を行うことが可能(妊娠中の患者など)などの利点がある。

しかし、局所麻酔によって除痛ができていても、身体に侵襲が加わっている点に変わりはない。また、術中に患者にとって不利益な精神症状が出てくる可能性は否定できない。そのため状況に応じて鎮静が必要とされる場合もある。「鎮静」および「処置時の鎮静・鎮痛」も参照
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詳細は「局所麻酔薬」を参照

局所麻酔薬は、可逆的な局所麻酔と侵害受容(英語版)の消失を引き起こす薬剤である[13]。特定の神経経路に使用すると(神経ブロック)、鎮痛痛覚の消失)や麻痺(筋力の消失)などの効果が得られる。臨床用局所麻酔薬は、アミド型局所麻酔薬とエステル型局所麻酔薬の2種類に分類される。合成局所麻酔薬はコカインと化学構造的に類似している。コカインとの主な違いは、乱用の可能性がないこと[14]、交感神経アドレナリン系に作用しないこと、すなわち高血圧や局所血管収縮を起こしにくいことである。他の麻酔と異なり、局所麻酔は意識を失わないため、短時間の外科処置に使用することができる。ただし、医師は処置を行う前に、無菌環境を整えておく必要がある。

局所麻酔の第一の目的は、神経(求心性神経繊維(英語版))の痛みを伝える機能を遮断(ブロック)して痛みをなくすことである。ある種のA線維の機能を遮断することで、感覚(触覚と振動覚、これも求心性線維)を消失させる。運動(遠心性)神経線維もブロックされることがあり、支配領域の筋肉は能動的に動かすことは不可能となる。

外傷や疾患により、神経構造(三叉神経など)が損傷すると、神経障害性疼痛が生じる。局所麻酔が、このような状況での治療手段として行われることがある。このために使用される製剤は、血管収縮剤アドレナリンなど)を含まないものでなければならない。患者によっては、麻酔の持続時間をはるかに超える鎮痛効果が得られ、上手くいけば症状が完全に消失する。
分類

局所麻酔薬は、末梢神経終末と中枢神経系との間のほぼすべての神経を遮断することができる。最も末梢的な手法は、皮膚または他の体表への局所麻酔である。大小の末梢神経を個別に麻酔する方法(末梢神経ブロック)と、解剖学的な神経束を麻酔する方法(神経叢麻酔)がある。脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔は、中枢神経系に近い部位で行われる。

局所麻酔薬の注入はしばしば痛みを伴う。この痛みを軽減するために、重炭酸塩による溶液の緩衝化や加温[15]など、多くの方法を用いることができる。

局所麻酔は局所麻酔薬の適用部位により、次のように分類される。
表面麻酔詳細は「表面麻酔」を参照

局所麻酔薬を体の表面に塗布し、拡散によって敏感な自由神経終末(英語版)に到達させる。スプレー、溶液、クリームを皮膚または粘膜に塗布するもので、効果は短時間で、接触した部位に限られる。典型的な適応は角膜粘膜の麻酔で、局所麻酔薬はこれらの組織に浸透しやすいからである。皮膚の表面麻酔は、高濃度の局所麻酔薬や特殊なクリーム(EMLAクリーム(リドカイン/プリロカイン混合物)(英語版))やイオントフォレーシスを用いて、ごく限られた範囲でのみ可能である。眼科耳鼻科泌尿器科歯科の手術や気管支鏡、食道鏡による検査時に行う麻酔で、粘膜リドカインを噴射、塗布する。
浸潤麻酔

浸潤麻酔は、麻酔をかけたい組織に局所麻酔薬を浸潤させるもので、表面麻酔と浸潤麻酔をあわせて(狭義の)局所麻酔という。浸潤麻酔では、局所麻酔薬を手術部位の組織に直接注入する[16]。その効果は、敏感な自由神経終末と末端神経路の遮断に基づく。しかし、浸潤麻酔は手術する組織の性質も変化させるため、比較的大量の局所麻酔薬が必要となる。他に、意識下に太めの末梢ラインや中心静脈ラインを確保する際や、硬膜外麻酔や脊椎麻酔で硬膜外針や脊椎針の刺入前に細めの注射針で痛覚を取る際や、小さな部位の切開・縫合手術などに用いる。麻酔薬としてはリドカインメピバカインプロカインを用いる。
浸潤麻酔のバリエーション

膨潤麻酔(Tumescent anesthesia)(英語版)は、局所麻酔薬を大量の溶媒で希釈して皮下脂肪組織に導入し、広い範囲に行き渡らせる特殊な方法である。


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