少子化
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この項目では、世界における多義的な「少子化」について説明しています。日本における出生率の低下については「日本の少子化」をご覧ください。
各国の合計特殊出生率

少子化(しょうしか)とは、
出生数(live births)が減少すること

その国・地域の合計特殊出生率が2.07を下回ること(Sub-replacement fertility)[注釈 1][1]

年少人口の割合が低下すること(高齢化の類義語として)

年少人口が減少すること

を指し、いずれの意味であるかはその文脈に依拠する。

長期的に人口が安定的に維持される合計特殊出生率を人口置換水準(Replacement-level fertility)という。国際連合は先進諸国の人口置換水準を2.1と推計している[2]2000年代以降の日本の人口学においては、少子化とは、合計特殊出生率が人口置換水準(2.1)を相当長期間下回っている状況のことをいう[注釈 2]。「少子化」を出生率の低下という意味で使うのが一般化したのは1990年代であるが、その当時の日本の人口学者は、これは政府による行政用語であって人口学の専門用語ではないとする立場をとっていた[3]。しかし2000年代に入ると、「出生力が人口の置換水準を持続的に下回っている状態」とするのが「人口学的に正確な定義である」[4]とする主張が出現し、単なる出生率の低下とはちがう意味を持つ人口学専門用語として「少子化」が使れるようになっていった。日本人口学会2018年に出版した『人口学事典』[5]では、「少子化」は出生力が低い状態を意味すると説明している[6][1]

経済発展生活水準の向上に伴う出生率死亡率の変化は、多産多死から多産少死、少産少死へ至る傾向があり、人口転換と呼ばれる。多産少死のとき人口爆発が生じることは古くより知られ、研究が進められてきた。日本では江戸時代前半(約3倍増)と明治以降(約4倍増)の2度、人口爆発が起きた[7]

かつて少産少死社会は人口安定的と考えられていたが、1970年代に西欧諸国で出生率が急落して人口の維持もままならなくなると判明した以降から、将来の人口減少社会が予測されるようになった。2100年までに、大半の国で人口維持を全くできないことがわかっている[8]
語源

「少子化」は日本語由来のことばである。1992年(平成4年)、経済企画庁『国民生活白書』[9]は、「少子社会の到来、その影響と対応」という副題のもと、少子社会の現状や課題について解説・分析をおこなった。そこでのキーワードであった「少子化」は即刻一般化し、日本以外の漢字文化圏にも波及した[10]。この『国民生活白書』が「少子化」の初出とされることが多い[3]が、実際にはそれ以前から教育関係者の間で用いられており、1980年代から新聞の専門家インタビュー記事などに顔を出す[11]ほか、総理府の『青少年白書』[12]教育社会学の書籍[13]などでも、子供数あるいは兄弟姉妹数の減少を指す用例がある。
近代の少子化原因「出生力因子」も参照
1950年以前「妊産婦死亡率」も参照「乳児死亡率」も参照「寿命」も参照人口一人あたりGDP(横軸)と、合計特殊出生率(縦軸)。
CIA World Fact Book, 2009

20世紀の前半までは感染症の予防法も治療法も確立されていなかったので、妊産婦死亡率・周産期死亡率・新生児死亡率・乳児死亡率・乳幼児死亡率・成人死亡率はいずれも著しく高かった。また生活習慣病の予防法も治療法も確立されておらず、臓器の機能不全を代替する人工臓器移植の医療技術も確立されていなかった。そのような社会状況では平均寿命は50歳前後が限界であり、死亡率の高さを補うために健康で妊娠出産能力がある女性は、10代の後半頃から40代頃まで産める限り産むという、多産多死の社会だった。十代の出産高齢出産も21世紀初頭の現在よりも実数で多かった。
1950年以後「社会保障」も参照

20世紀の後半になると産業経済の発展、政府の歳入の増大と社会保障支出の増大、科学技術の向上、医学医療の向上などがあった結果、感染症の予防法と治療法が確立され、妊産婦死亡率・周産期死亡率・新生児死亡率・乳児死亡率・乳幼児死亡率・成人死亡率はいずれも著しく減少した[14][15][16][17][18][19][20][21]。そのうえ生活習慣病の予防法や治療法、そして人工臓器や臓器移植の医療技術も確立されたので、平均寿命は著しく上昇し[22]、その一方で逆に合計特殊出生率は著しく低下し[23]、多産多死の社会から少産少死の社会に移行した。
現代の少子化原因

20世紀の後半以後、こうした医療技術の確立は、先進国だけでなく開発途上国にも低開発国にも普及した。先進国では大部分の国が合計特殊出生率が2人未満になり、開発途上国でも2人未満の国や2人台が大部分になり、低開発国でも20世紀前半の先進国よりも低くなっている[24]
都市化の進行

世界における都市化率の増加も、主要な要因のひとつだとされている。都市住民は田舎住民よりも、子供をあまり持たない傾向がある[25][26]。都市住民は、児童を農場労働力として必要とはせず、また都市では不動産価格が高いため子供部屋は費用がかさむ。そのためマイホームの購入は郊外になることが多く、それによる遠距離通勤が共働きを難しくしている。
女子教育の普及

2020年7月14日にランセットに掲載された世界人口に関する論文によると、女子教育が普及して出産関連の公的医療サービスを女子が受けるようになった場合、女性1人あたりの産む子供の数は1.5人未満になると分析し、国連が2100年に109億人になると予測している世界人口は88億人になると予測している[27]
晩婚化と加齢による生殖機能の低下や不妊「晩婚化」、「妊孕性」、および「年齢と女性の妊孕性」も参照

未婚・晩婚化の進展がより強く少子化に影響しているという側面もある。女性は胎生期に最大の卵子を持ち、以降減少していく。このため女性の妊娠しやすさ(妊孕性)は、おおよそ32歳位までは緩徐に下降し、卵子数の減少と同じくして37歳を過ぎると急激に下降していく。また男性も年齢とともに妊孕能が低下する[28]

また、男性の精子の質も加齢とともに劣化し、子供ができる可能性が低下し染色体異常が発生しやすくなる[注釈 3]ことなども報告されている[29]。二人目不妊の問題もあり、雑誌社の調査では不妊治療経験者中で第二子のときに不妊治療を経験した人は6割を超え、その内半数が第二子で初めて不妊治療をした状態にあり、子供を望んでいて最初の妊娠で問題がなくとも加齢やセックスレスにより妊娠しづらくなる問題が起こる場合があり、このため生涯設計のため生殖可能年齢を早期に理解することも重要である[30]。日本産科婦人科学会によると不妊治療の体外受精によって2017年に誕生した子どもの数は、この年に生まれた子どものおよそ16人に1人の割合となっており[31]、誰もが自然妊娠するとも限らない現状がある。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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