小麦
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コムギ属
コムギ
分類APG III

:植物界 Plantae
階級なし:被子植物 Angiosperms
階級なし:単子葉植物 Monocots
階級なし:ツユクサ類 Commelinids
:イネ目 Poales
:イネ科 Poaceae
亜科:イチゴツナギ亜科 Pooideae
:コムギ連 Triticeae
:コムギ属 Triticum

学名
Triticum L.
英名
Wheat

本文参照

コムギ(小麦)はイネ科コムギ属に属する一年草植物。一般的にはパンコムギ学名: Triticum aestivum)を指すが、広義にはクラブコムギ(学名: Triticum compactum)やデュラムコムギ(学名: Triticum durum)などコムギ属(学名: Triticum)の植物全般を指す。世界三大穀物のひとつで、小麦粉にされパン麺類菓子などの主な材料となる。

他の三大穀物と同じく「基礎食料」であり、各国で生産された小麦は、まず国内で消費され、剰余が輸出される。主要な輸出国はロシアアメリカカナダオーストラリアウクライナフランスである。

人類は紀元前1万5千年?紀元前3千年ころに栽培しはじめ、現在世界でも特に生産量の多い穀物のひとつであり、世界の年間生産量は約7.3億トンである。これはトウモロコシの約10.4億トンには及ばないが、の約7.4億トンにほぼ近い(2014年)。野生の小麦小麦の栽培。コムギ畑(イスラエルコムギの穂収穫期が近づいたコムギグライフスヴァルト大学にある植物学博物館内のコムギの実の断面模型
生態

コムギは播種時期によって秋播き小麦と春播き小麦の2つの品種群に分かれる。秋播き小麦は発芽するのにある程度の低温期間が継続する春化を必要とするため、秋に種をまいて越年させ、春に発芽し夏に収穫するのが基本形である。低温が必要なため、やや寒冷な地域では秋播き小麦が主に栽培される。一方春播き小麦は春に播いて、夏の終わりに収穫するのが一般的である。春播き小麦は、寒さが激しく種が冬を越せない地方や、逆に冬に低温にならず春化のできない温暖な地域、さらに本来の収穫期に雨季を迎え収穫が困難になるような地域で栽培される[1]。麦が熟して収穫を迎えるころには、広い畑一面が黄金色になる草紅葉が見られる[2]

コムギの実は硬い外皮に覆われ、その中に可食部である胚乳と、胚芽が存在する。この3部分の体積の割合は外皮が13.5%、胚乳が84%、胚芽が2.5%である[3]。主に食用とするのは胚乳部分であり、製粉して小麦粉とするのはこの部分である。果皮(「ふすま」および「ブラン(bran)」と呼ばれる[4])や胚芽部分も食用とすることはできるが、食味に劣るうえ小麦粉に混入すると品質が劣化しやすくなるため、一般的な小麦粉に使用することはない。しかし、ふすま部分には独特の風味と食物繊維など有用成分があるため、販売されることもあるほか[5]、これを取り除かずそのまま粉にした全粒粉も存在する。

コムギのゲノム解読は、2018年に完了している。64か国の610機関で構成する「国際コムギゲノム解読コンソーシアム」には、日本からは農研機構京都大学などが参加した[6]
分類
クロンキスト体系によるコムギ属の分類

植物界 Plantae

被子植物門 Magnoliophyta

単子葉植物綱 Liliopsida

イネ目 Poales

イネ科 Poaceae

コムギ属 Triticum

生物的分類

コムギ属 Triticum は、1小穂の稔実粒数、染色体数、ゲノム構成によって以下のように分けられる。

1粒系(稔実粒数1、2n=14、ゲノムAA)

T. aegilopoides

T. thaoudar

T. monococcum(1粒コムギ


2粒系(稔実粒数2、2n=28、ゲノムAABB)

T. dicoccoides

T. dicoccum(2粒コムギエンマーコムギ

T. pyromidale

T. orientale(コーラサンコムギ、カムットコムギ)

T. durum(デュラムコムギ、マカロニコムギ)

T. turgidum(リベットコムギ)

T. polonicum(ポーランドコムギ)

T. persicum(ペルシャコムギ)


普通系(稔実粒数3?5、2n=42、ゲノムAABBDD)

T. aestivum(普通コムギ、パンコムギ

T. spelta(スペルトコムギ〔ディンケルコムギ、ファッロコムギ〕)

T. compactum(クラブコムギ、密穂コムギ)

T. sphaerococcum(インド矮性コムギ)

T. maha(マカコムギ)

T. vavilovii(バビロビコムギ)


チモフェービ系(稔実粒数2、2n=28、ゲノムAAGG)

T. timopheevi


種類

小麦は栽培時期等によって以下のように区別される。

播種時期 - 春播き小麦、秋播き小麦:コムギは秋播きが本来の作型であるが、低温要求性が小さい品種が作られ、それらが春播き小麦として利用されている。

粒の色 - 赤小麦、白小麦

粒の硬さ - 硬質小麦(強力粉、パン、麺類の材料)、中間質小麦(中力粉の材料)、軟質小麦(薄力粉、菓子類等の材料)

歴史
世界

ユーラシア大陸中部のコーカサス地方からメソポタミア地方にかけてが原産地と考えられている。野生1粒系コムギの栽培は紀元前8400年頃に始まった。その後1粒系コムギはクサビコムギAegilops speltoidesと交雑し2粒コムギになり、さらに紀元前5500年頃に2粒系コムギは野生種のタルホコムギAe. squarrosaと交雑し、普通コムギT. aestivumが生まれたといわれる[7]

コムギの栽培はメソポタミア地方で始まり、紀元前3000年頃にはヨーロッパ全域やアフリカ地中海沿岸、地中海世界)に伝えられた[8]テル・アブ・フレイラなどから採掘された古代の野生種ムギはもともと成熟すると麦穂が風などにより容易に飛び散る性質を持っており、当初のコムギも収穫には非常に手間のかかる作物であったと考えられている。このため、その貴重さと保蔵のしやすさから一種の交換の媒体、通貨として取り扱われていたのではないかと推測されている。シリア地方からヨーロッパなどに栽培の範囲が広がるにつれて品種淘汰がなされ、この種子の飛び散りやすさの特性が失われ、主食穀物としての座を獲得することになった。栽培植物化の時期はオオムギの方がやや早く、当初はオオムギの方が重要な作物であった。これは、オオムギの収量の多さや収穫時期の早さ、粒の大きさなどによる。また、この時期はコムギもオオムギもとして煮て食べるものであったため、調理方法の差が重要となることはなかった。しかし、製粉技術が進歩し石臼が登場すると、粉食により美味さが増し、グルテンを持ち様々な料理へと加工することが容易なコムギがオオムギに代わって最重要の作物となっていった[9]


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