小麦粉
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小麦粉。ふすまを含まないもの。全粒粉グラハム粉

小麦粉(こむぎこ)とは、小麦製粉した粉である。主に食用で利用されており、パン麺類ケーキ菓子など、様々な食品の材料として用いられる。一部に「うどん粉」「メリケン粉」と呼ぶ人がいる[1]穀粉の一種。人類による利用は古代エジプトですでに行われていたことが知られ、西洋でも東洋でも広く利用されるようになり、日本でも粒食と並んで中世後期には利用されていた。

質、使用する部位、挽き方によりさまざまに分類されており、適した用途も異なる。強力粉・中力粉・古代エジプトの壁収穫の模様が描かれるほど、人類と小麦の歴史は古く、人類初の作物のひとつとされる。パンを作るため小麦粉と水でつくった生地をこねる人(古代エジプト、紀元前2494年から紀元前2345年ころの像)

収穫された種子は基本的には粉にして小麦粉として使われる[2]。初期のコムギはのようにして食べられていたが、穀粒が硬く軟らかくするのに長時間加熱しなければならなかったこと、小麦粉の生地には特有性があり食感が好ましかったこと、表皮のふすま(麩・?=コメでいう)が硬いため取り除こうとすると内側の胚乳部が砕けてしまうことから粉食が基本になった[2]

紀元前3,000年頃の古代エジプトでは、既に無発酵のパンが食べられていた記録が残っている[2][3]

産業革命以降、蒸気機関の利用により、製粉はより大規模となり、世界に流通し、19世紀には、現代でも使用されている製粉機が誕生し、効率・品質ともにより向上した[4]
歴史
日本での歴史

日本列島では縄文時代石皿磨石を用いて植物や堅果を粉砕し食すという、粉食習慣が行われていた。弥生時代稲作農耕が開始されると石皿・磨石が消失し、米や大麦雑穀などの穀物は粒のまま食する形に変化した。小麦は弥生時代以降には日本列島に伝来し、古代には麺類も貴族の間で食されている。中世前期には、こね鉢・すり鉢などの加工具が再び出現し、さらに中世後期には石臼も出現し、僧や武士、庶民の間でも粉食習慣が復活した。江戸時代にはうどん・蕎麦などが食されている。

近代には、戦時色が強くなった1940年9月から業務用が、1941年4月からは家庭用の小麦粉が配給制度の対象となった。配給される量は2人-3人家庭で100匁(2か月分)とされていた[5]。戦後の食糧不足時には、アメリカの小麦戦略から余剰分を援助物資として供給され[6]、学校給食でパン食が取り入れられたことなどからパン食の食習慣が広まった[7]

小麦粉、白、無添加[8]100 gあたりの栄養価
エネルギー1,523 kJ (364 kcal)

炭水化物76.31 g
糖類0.27 g
食物繊維2.7 g

脂肪0.98 g
飽和脂肪酸0.155 g
多価不飽和0.413 g

タンパク質10.33 g

ビタミン
ビタミンA相当量ルテイン
ゼアキサンチン18 μg
チアミン (B1)(10%) 0.12 mg

ミネラル
リン(15%) 108 mg
マンガン(32%) 0.682 mg
セレン(48%) 33.9 μg


単位

μg = マイクログラム (英語版) • mg = ミリグラム

IU = 国際単位

%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

栄養の特徴

ふすま類を取り除いて製粉したものと、ふすま類も含めて製粉したものでは栄養の特性が異なる。

(ふすま類を取り除いて製粉したものは)成分の7、8割をデンプンが占め、タンパク質も約1割含んでいる。主なタンパク質はグリアジングルテニンで、これらはを吸収すると、粘りのあるグルテンとなる。このグルテンが独特の料理を生み出し、様々な食品に生まれ変わる。グルテンの量が多くて質の強いものから順に強力粉、中力粉、薄力粉と分類されている。なおグルテンの量は品種の他に、開花期・収穫期にが降るかどうかによっても変動する。この時期に雨が多いと小麦はグルテンを形成しにくくなるためである。

一方、ふすま類なども含めて製粉した全粒粉のほうには、食物繊維が多く含まれており、普通の つまりふすま類などを含まない小麦粉100gに含まれる食物繊維は2.7gなのに対し、全粒粉には11.2gも含まれている(つまり粉の1割以上が食物繊維[9])。食物繊維は腸の調子を整える作用がある[9](たとえば便秘がちで悩んでいる女性などには好適)。全粒粉は、普通の小麦粉に比べ、ビタミン、ミネラルを豊富に含んでおり、ビタミンとしては特にB1・B2・B6が多く、ミネラルでは特に鉄分カリウムカルシウムが多いという特徴がある[9]

グラハム粉は、全粒だが精製法が通常の全粒粉と違い、表皮と胚芽の部分が粗挽きであり、血糖値の上昇が緩やかになり健康的である(特に健康に配慮したことを前面に出したクラッカー・ビスケット・シリアル食品などでしばしば用いられている)。
性質

カロテノイド色素により淡いクリーム色をしている[10]。粒子は直径150μm以下と細かく、粉塵爆発のおそれもあるため、東京都など一部の自治体では指定可燃物に規定している[11]。ほかの粉末と混ざりやすく、粉末調味料などを混ぜてプレミックスとしたり、ビタミンなどの添加に応用される。表面に水気を帯びたものに付着しやすく、ムニエルなどのや、麺類の打ち粉として使われる。匂い吸着しやすく、香り付けの加工ができる反面、保管の仕方によっては異臭が付くことがある[10]
加工と精製

全粒から果皮や胚芽の部分がふすまとして取り除かれ、胚乳の部分のみを挽いたもので、全粒100kgからはおおよそ72 - 75kgほどが得られる。胚乳部分のみを残し果皮や胚芽を完全に取り除くと真っ白で純粋なものが取れるが、製パンに使用する場合、風味を与えるために、必ずしもふすま部分を完全に取り除いたものが良いとも限らない。素朴な味わいや風味を出すために、小麦粒をふすまごと丸々挽いた全粒粉も用いられる[12]
種類

ふすま類などを取り除いてから製粉するものは、含有するタンパク質(主にグリアジン、グルテニン)の割合と、形成されるグルテンの性質によって強力粉、中力粉、薄力粉に分類される。ふすま類なども含めて製粉するものは、栄養が豊富で、全粒粉、グラハム粉などに分類される。でんぷん成分だけとりだした特殊なものは浮き粉という。
強力粉

強力粉(きょうりきこ)はタンパク質の割合が12%以上のもので、パンうどん中華麺・学校給食で出てくるソフト麺等に使われるほか、国産の一部乾燥パスタは粗挽きの強力粉を用いて作られる。主にアメリカ・カナダ産の硬質小麦(パンコムギ)を使用している。焼くと硬い仕上がりになるので洋菓子には向かない。英語圈の分類ではbread flourがこれに近い。
中力粉

中力粉(ちゅうりきこ)はタンパク質の割合が9%前後のものでたこ焼きなどに用いる。主にオーストラリア・国内産の中間質小麦を使用している。強力粉と薄力粉を混ぜれば性質は中間になるため、中力粉の代用とすることができるが、本来の中力粉とは加工特性がやや異なるため工夫を要する(平均値は10.2%)。
薄力粉

薄力粉(はくりきこ)はタンパク質の割合が8.5%以下のものでケーキなどの菓子類・天ぷらカレーに使われる。主にアメリカ産の軟質小麦を使用している。タンパク質の含有量を抑えれば抑えるほど繊細な仕上がりになるので、「製菓用薄力粉」や「スーパーバイオレット」などの商品名で売られている、タンパク質の含有量をさらに減らした商品も存在する(「超薄力粉」とも呼ばれるが、そのような商品名では売られていない)。


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