小銃(しょうじゅう)は、銃の分類の一つ。兵士が個人用に使うための軍用銃として軍隊では最も一般的な小火器で、ライフル(英:Rifle)あるいはライフル銃とも呼ばれる[1]。
概要ハンド・カノンを射撃する兵士(1405年頃)
小銃とは、兵士が両手で保持し照準して発射する火器を言う[2]。近代から現代にかけて、主に歩兵一個人が携行する最も基本的な武器(歩兵銃)として使用され、近距離から遠距離まで広い範囲の射撃をこなせる万能性を持つ。
ライフル弾はライフリングによって旋転が与えられて発射され、ジャイロ効果によって弾道上を精確に飛翔するため、命中精度が高い。発射されたライフル弾は拳銃弾よりも遥かに高速で飛翔するため、命中時の貫通力が非常に強い[3]。
1人で持ち運べることや、射撃の自由度が高いことが求められるため、重量や反動が過大で立射ができない銃は小銃とは呼びがたく、この点から火力支援用の機関銃や、対物ライフル(対戦車ライフル)などは小銃に含まれない。ただし、初期の小銃には軽量化が不十分で支え棒(一脚)を用いるものが存在した。
小銃の前身は、16世紀頃まで存在していたハンド・カノン(Hand cannon)やハンド・ガン(Hand gun)と呼ばれる小型の大砲である。15世紀頃からは小型化が進められ、現在小銃と呼ばれる銃器に近い形状のものが現れ始めていた。この中で大砲と小銃という区別が生まれ始め、火縄式発火装置(マッチロック)の発明がこれを決定づけた。固定式照門を備えた火縄銃は照準および発砲が非常に容易く行える為、これによって小銃は個人用の携帯火器として大砲と明確に区別されるようになったのである[4]。
最も初期の小銃としては、スペインで開発されたアルクビュス銃(英語版)がある。これを装備したスペイン銃兵やドイツ傭兵は、剣類を主に配備された他国軍を各地で打ち破った。16世紀には火縄式の火種に関する欠点の克服を試みた歯輪式発火装置(ホイールロック)が開発されたが、火縄式よりも高価であり、また構造の複雑性故信頼性も低かった。そのため、歯輪式の採用は狩猟用や騎兵用といった限定的な範囲に留まった[5]。
16世紀を通じて小銃は普及・発展し、旧来の重装騎馬戦術を完全に無価値なものとした。一方で当時の小銃は再装填に時間がかかり、装填時の隙を突いて行われる騎兵や槍兵の攻撃に銃兵隊は対処できなかった。その為、各国の軍全体に占める銃兵の割合は徐々に増加してはいたものの、16世紀末の時点でも全体の半分には達しない程度だったという[6]。
1640年頃には銃剣(バヨネット)が発明された。これによって従来装填の合間を狙って行われていた騎兵の突撃にも対処しうるようになり、小銃兵の戦術的価値は大いに高められた[7]。後に近接戦闘能力の高いアサルトライフルが普及し、かつてほど重要なものとはみなされなくなった。しかしいまだ着剣装置は小銃に必須のものと見做されていることがほとんどである。
ライフルと呼ばれる小銃が登場した頃は、前装式(マズルローダー)かつ火縄式(マッチロック)の銃が主流であった。その後、着火方式は燧発式(フリントロック)、管打式(パーカッションロック)へと発展した。19世紀後半には弾丸と発射薬、雷管を一体化させた実包(カートリッジ)が発明され、これを用いた後装式(ブリーチローダー)の小銃が普及し、さらなる連発式小銃の研究も進められた。実包自体の研究も盛んに行われ、従来の黒色火薬よりも高いガス圧を安定して得られる無煙火薬の登場により、弾丸を小口径化・軽量化しても十分な威力が得られるようになった。実包の小型化は連発式小銃の開発をさらに推し進め、やがて次弾の装填を自動で行う自動小銃へと繋がっていった[8]。 ブリタニカ辞典
定義
ライフルの定義
つまり銃身に施条(ライフリング)を有する火器全般がライフルであるが、単にライフルという場合、普通は小銃を指す。全米ライフル協会(NRA)の立法行動研究所(NRA-ILA)では、「ライフリングを施された肩撃ちの銃」(A shoulder gun with rifled bore.)という定義を紹介している[10]。
ライフリングはさまざまな銃砲に刻まれているため、本来「ライフル」という語は小銃のみを指すものではなかった。小銃一般を指して「ライフル」と表現することもあるが、これはアメリカ独立戦争の際、当時珍しかったライフルド・マスケット(英語版)(英:Rifled musket, ライフリングが施されたマスケット銃)を装備したミニットマンが、従来の(滑腔銃身の)マスケットを装備したイギリス軍を狙撃して悩ませた故事に基づく。それ以来、「ライフル」という言葉は小銃という意味合いを含むようになり、施条自体は「ライフリング」と表現されるようになったという[11]。前述の全米ライフル協会は銃一般を取り扱う団体であり、ライフリングを備えた銃や小銃に限定した団体ではない。 日本語における小銃とは、ライフリングを有するライフル銃に加えて、ライフリングを有さない火縄銃やマスケット銃などを含む言葉である。 日本では江戸時代の終わり頃まで、銃砲(GUN)のうち、大きいもの(砲)を「大銃」とよび、小さいもの(銃)を「小銃」と呼んでいた[12]。明治時代に入ると大きいものを「砲」と表現するようになったため、「大銃」という表現は次第に使われなくなり、歩兵が用いる個人用銃を指す「小銃」という言葉のみ残ったのである[13]。当時の銃砲はライフリングが無いわけであるから、小銃という言葉は本来ライフリング(腔綫もしくは施条)のあるなしを区別しないのである(#銃身)。福沢諭吉は、ライフルの音を借りて「雷銃」と訳した。福沢が著した雷銃操法には「筋入りの小銃なり」「今仮に雷銃と訳す」と説明されている。 防衛省では、Rifleの英単語に対応する語として「小銃」を当て、「個人携行の基本となる肩撃ち銃。使用目的によって,歩兵銃,騎銃,突撃銃,そ(狙)撃銃などがある。」と定義している[14]。 日本の法律上、小銃とは軍用銃のみを指し、同一の火器であっても民間で所有されるものは猟銃として区別される[13]。また、銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)における猟銃とは「ライフル銃」および「ライフル銃以外の猟銃」の2分類から成り、「ライフル銃以外の猟銃」はさらに「散弾銃」と「ライフル銃及び散弾銃以外の猟銃」に分かれる。空気銃は猟銃に含まれない別分類とされている[15]。 1973年(昭和48年)、アメリカで発生した黒人解放軍(BLA)による警官襲撃事件で豊和工業製AR-180半自動小銃が用いられたことが明らかとなり、同年の国会において取り上げられた。この際、公明党の小川新一郎議員は、日本における小銃と猟銃の区別について質問した。通商産業省重工業局次長が解答したところによれば、ライフル銃のうち、半自動あるいは手動式のものは猟銃の範疇に入り、全自動式のもの、あるいは着剣装置が付いているものは小銃に含まれるという[16]。
小銃の定義
日本での法律上の規定