小説ウィザードリィ_隣り合わせの灰と青春
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『小説ウィザードリィ 隣り合わせの灰と青春』(しょうせつウィザードリィ となりあわせのはいとせいしゅん)はベニー松山による日本の小説。コンピュータRPGの古典的名作『ウィザードリィ』第1作である「狂王の試練場」を題材にしている。
概要

JICC出版局(現:宝島社)の『ファミコン必勝本』1988年 VOL.5 - VOL.22に連載され[1]、加筆・修正されて1988年11月に同社より単行本が出版された。表紙イラストは末弥純、口絵は品川るみ。連載ならびに単行本の担当編集者は、後にゲームアナリストとして活動する平林久和[2]。1998年12月に集英社スーパーファンタジー文庫に再録。こちらの表紙は緒方剛志

コンピュータゲームのノベライズとしては最初期の作品。コメディ的な要素を廃し、シリアスな冒険世界が作り上げられている。

またゲーム本編の呪文体系、蘇生や転職などといったシステム面の実際的な解釈・考察を始め、「迷宮制覇が見えてきた猛者でも、グレーターデーモンと遭遇すると潰滅」「終盤になると中位呪文の使い道がなくて余る」「盗賊から転職した忍者が、以前なら見切っていた筈の罠に掛かる」「レベルは充分上がっているのに主要呪文を覚えない」「バンパイアロードは壊呪が弱点だが、自身もよくこの呪文を使う」などといった、ゲーム版のプレイヤーがしばしば遭遇する、極めてリアルなシチュエーションが数多く物語に組み込まれている。

著者のベニーは、本作の後の時代のリルガミンを舞台とする「リルガミンの遺産」を題材とする小説『小説ウィザードリィII 風よ。龍に届いているか』を著している。
ストーリー

戦に明け暮れる狂王トレボーが治める城塞都市。悪の魔術師ワードナはトレボーから絶対無敵の魔法障壁を作り出す「魔除け」を盗み出し、巨大な地下迷宮を築き、モンスターたちを召喚しそこに立てこもってしまった。トレボーは激怒し、軍隊を派遣するも、モンスターのうろつく狭いダンジョンでは軍隊が有効に機能せず、全滅。これに対し、トレボーの参謀・グレブナーグは、冒険者たちを募り、魔除けを奪還したものには多大な褒賞を与えるというお触れを出すことで、事態収拾を立案。これにより、トレボーの城塞には各地から戦士、盗賊、魔術師、僧侶など、様々な冒険者達が集うようになった。そして彼らは今日も迷宮へと向かっていく。

戦士スカルダも、そんな冒険者の一人であった。同じく戦士であるガディ、盗賊のジャバ、僧侶のベリアル、魔法使いのシルバー・サラの6人でパーティーを組み、魔除けを奪還すべく、迷宮の怪物達と戦い、さらに他のパーティーとの激しい競争を繰り広げていた。しかし、そんな最中、魔法使いのシルバーが戦闘で命を落とし、還らぬ人となってしまう。代わりに、全ての呪文をマスターした謎めいた魔法使い・バルカンを新たに仲間に加えるのだが、スカルダとは方向性の違いから対立してしまう。パーティの不和、他のパーティによる妨害工作、そして恐るべき迷宮の罠とモンスター達を切り抜けて、ついにワードナと対峙した彼らが知る真実とは……?
主な登場人物
善のパーティー
スカルダ
主人公。人間族の男性。善(グッド)の
戒律のレベル13の戦士であったが、シルバーを失った敗戦をきっかけに自分の力に限界を感じ、侍に転職する。本作開始時点では、転職したばかりであるためレベルは1。暦の上での年齢は18歳だが、上記の通り通常の転職を経験しているため、肉体的年齢は5歳分加算され、23 - 24歳となっている。森の中に育ち、2年前、16歳のときにトレボー城塞に来て冒険者となる。冒険者となって以降、ジャバとサラとは一貫してパーティを組んでいる。本作での侍は原作とは違って、ただ魔法使いの呪文を使えると云うだけでなく、「気」を用いた様々な特殊技能を有する剣士、と云う位置付けを為されている。この「特殊技能」とは、具体的には、他者の動きの先読み、装甲度に関わりなく対象を両断する「気の刃」の生成・操作を指す。また、この「気の刃」は、習熟すれば射程はごく短いものの、遠い間合いにある敵すら斬ることができる。本作においては、この技を「居合い」と称する。スカルダはハ・キムのゾンビとの戦いで(無意識に)初めてこの技を使用した。バルカン(ナックラーヴ)のゾンビとの戦いの後に妖刀「村正」を入手した。続くグレーターデーモンたちとの戦いで、スカルダが転職するきっかけとなったグレーターデーモンを「居合い」で真っ二つにして本願を果たし、マイルフィックとの最終戦まで戦い抜いた。エピローグではサラにプロポーズし、サラを連れて故郷の森に向かった。
ガディ
人間族の男性。中立(ニュートラル)のレベル13の戦士。恵まれた体格を活かして、幼い頃から剣で生計を立ててきた古強者だが、性格は温和で、わりとのんびり屋。グレーターデーモンに敗れたことはスカルダと同じく衝撃だったようだが、彼とは異なり、転職することなく戦士としての強さを追求し続ける道を選んだ。放浪の旅の途中、偶然ゴグレグの兄と決闘する羽目になったのがきっかけで、1年前にトレボー城塞へ来て冒険者となり、以来スカルダたちとパーティを組んでいる。そして、マイルフィックとの最終戦まで戦い抜いた。エピローグでは、一人でいずこかへ旅立っていった。その際、全ての「魔除け」がトレボーの手に渡らないように、その内の一つを持っていった。
ジャバ
人間族の男性。元は中立のレベル13の盗賊で、罠解除の腕では冒険者随一と言われた腕利きであったが、シルバーの死による戦力不足を補うため、マジックアイテム「盗賊の短刀」で忍者に転職する。ラシャとは乳兄弟の間柄。盗賊の短刀による特殊な転職方法を用いたため、スカルダと違いレベルは低下していない。肉体的年齢も同様。指先の鋭敏さが大きく失われていることに気付いておらず、宝箱のテレポーターの罠を引き当ててしまい、パーティが各地点に分散してしまった。スカルダたちとの合流後は、マイルフィックとの最終戦まで戦い抜いた。エピローグでは、迷宮で二年間稼いだ金を持ってラシャと共に故郷の村に戻った。
ベリアル
人間族の男性。善の戒律のレベル13の僧侶。アルハイムとは同門で、彼の兄弟子に当たる。本編中、死者に回復術と蘇生術を同時にかけることで確実な蘇生を行うという秘術を披露するが、これは元となるゲームの「 MADI (マディ、回復呪文)を死者に使ってから KADORTO (カドルト、蘇生呪文)をかけると蘇生確率が上がる」という裏技を反映したもの。1年前からスカルダたちとパーティを組む。そして、マイルフィックとの最終戦まで戦い抜き、アルハイムと力を合わせてラシャを蘇生した。エピローグでは、アルハイムと共に放浪の旅に出た。
サラ
人間族の女性。中立のレベル12の魔法使い。美少女魔術師などと呼ばれるほどの際立った美貌の持ち主で、且つ職業にふさわしく優れた頭脳も併せ持つ、才色兼備を地で行く少女。反面、酒癖が凄まじいまでに悪く、さらに魔法使いなだけに呪文を使って暴れる悪癖までもあり、ギルガメッシュの酒場ではパーティの面々を巻き込んで、たびたび騒ぎを引き起こしている。そして、マイルフィックとの最終戦まで戦い抜いた。エピローグではスカルダにプロポーズされ、スカルダと共にスカルダの故郷の森に向かった。
シルバー
人間族の男性。善の戒律のレベル15の魔法使い。老齢だが全レベルの呪文を取得している達人。1年前からスカルダたちに請われてパーティに入っていた。彼がグレーターデーモンとの戦いで死に、カント寺院から蘇生失敗による消滅(LOST)を宣告されるところから物語は始まる。


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