小笠原諸島の自然
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小笠原諸島の自然(おがさわらしょとうのしぜん)では、東京都小笠原村に属する小笠原諸島の自然の特徴について説明する。小笠原諸島を構成する島々はこれまで一度も大陸や大きな島と陸続きになったことがない海洋島で、亜熱帯の気候の中で独自の生態系が育まれてきた。現在、小笠原諸島内の多くの地域は小笠原国立公園に指定され、またこれまで人間から受けた影響が極めて少ないため、原生の自然が保たれている南硫黄島に関しては南硫黄島原生自然環境保全地域に指定されている。その独自の生態系が高く評価された結果、小笠原諸島は2011年世界遺産の自然遺産に登録された。日本政府が作成した「世界遺産一覧表記載推薦書 小笠原諸島」によれば、自然環境の改変が著しい硫黄島と沖ノ鳥島、そして唯一太平洋プレート上にある隆起珊瑚礁であり、他の島々と大きく成り立ちが異なる南鳥島については世界遺産登録地域からは除外されている。当記事内では硫黄島、南鳥島、沖ノ鳥島についても適宜説明を行う。

文中の年代は、多くの資料が西暦のみであることと和暦への換算が不明確である部分もあったため、西暦のみで統一した。

小笠原諸島の概要小笠原諸島の位置

小笠原諸島は父島母島などで30あまりの島々で構成される小笠原群島硫黄島などが所属する火山列島。そして小笠原群島、火山列島に所属しない島から構成されている。そして小笠原群島は北から聟島列島、父島列島、母島列島に分けられている。

小笠原群島

聟島列島 - 聟島嫁島媒島、北ノ島 他

父島列島 - 父島兄島弟島

母島列島 - 母島姉島妹島


火山列島(硫黄列島) - 北硫黄島、硫黄島、南硫黄島

その他の島々 -西之島南鳥島沖ノ鳥島

小笠原諸島の総面積は約105平方キロメートルで、伊豆大島よりやや大きい程度である。これは例えば小笠原諸島と同じく貴重な生態系を持つと評価される沖縄諸島の約20分の1の大きさに過ぎない。また小笠原諸島の特徴としては、他の陸地から大きく離れていることが挙げられる。例えば伊豆半島マリアナ諸島北端のパハロス島から父島まではともに約800キロ離れており、伊豆諸島八丈島からも600キロ以上離れている。ほぼ同緯度の沖縄本島は西に約1300キロ離れており、東側に至っては北西ハワイ諸島まで島らしい島は見られない。この地理的隔絶が大きいことは、生物が小笠原諸島に到達することに大きな制約となった。また島の大きさが小さいことは島内で生存することができる生物に大きな制限が加わることとなり、小笠原諸島の大きさと位置は独自の生物相の形成に大きく寄与することになった[1]

また地質学的には小笠原諸島を構成する小笠原群島、火山列島、その他の島々は出来た経緯に違いがあり、海洋性島弧の形成と進化の経緯、そして大陸地殻の生成を観察することができる地学的に貴重な場所である。またいずれの島々もガラパゴス諸島ハワイ諸島などと同じく、これまで大陸と一度も地続きになったことがない大洋島であり、大洋によって隔絶された環境の中で特異な生態系を育んできた。

地質学的、生物学的に貴重な小笠原諸島は、硫黄島、南硫黄島、南鳥島、沖ノ鳥島以外は小笠原国立公園に指定されていて[† 1]、南硫黄島に関しては島全体が原生自然環境保全地域の指定を受けている。また小笠原国立公園と南硫黄島原生自然環境保全地域は、世界遺産の自然遺産に登録されている。
小笠原諸島の形成史と地質学的特徴
小笠原群島の形成無人岩の枕状溶岩の露頭。父島の小港海岸で撮影加工しやすい「ロース石」を産する石灰質砂岩[2]の露頭。母島、沖村集落

今から約5000万年前、太平洋プレートフィリピン海プレートの東縁に沈み込みを開始したことにより、フィリピン海プレートは東側に引っ張られる形となって拡大を開始した。その結果、高温のマントル物質が地表の比較的近くにまで上昇した。高温のマントル物質の上昇は父島列島、聟島列島、母島列島の小笠原群島が生み出されるきっかけとなった[3]

約4800万年前になると、沈み込んだ太平洋プレートによってマントルの浅い部分に水が提供されたことにより高温のマントル物質の融点が下がり、その結果マグネシウム分に富むマグマが生成された。生成されたマグマは無人岩(ボニナイト)と呼ばれる独特の成分のもので、まず現在の父島列島から聟島列島にかけての深海に、枕状溶岩などを比較的穏やかに噴出する海底火山が形成された。無人岩は現在父島列島と聟島列島に見られるが、プレートの沈み込み開始直後など限られた時期に生成されると考えられる無人岩はかなりまれな存在であり、現在地上で観察される小笠原群島の無人岩は全世界的に見ても最大のものと考えられる。そして火山活動の継続によって成長した海底火山は、浅海でストロンボリ式噴火を繰り返し、更に成長を続けた[4]。南部の千尋岩では、高さ300mの断崖に父島火山の初期から最終期までの火成岩を見ることができる[2]

約4400万年前になると太平洋プレートの沈み込みが深くなったことによりマグマの組成が変化し、通常の島弧で見られるソレアイト質となった。この時期には現在の母島列島で溶岩流出や爆発的な火砕流の噴出を繰り返す火山活動が継続し、母島列島が形成された。そして4000万年前には火山フロントが後退することによって小笠原群島の火山活動は終息した。この頃には小笠原諸島は通常のプレート沈み込み帯となったと考えられる。


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