急性灰白髄炎
ポリオによって右足が萎縮している男性
概要
診療科感染症内科学, 神経学, 整形外科学
分類および外部参照情報
ICD-10A80
急性灰白髄炎(きゅうせいかいはくずいえん、poliomyelitis)は、ポリオ (Polio) とも呼ばれる、ピコルナウイルス科、エンテロウイルス属のポリオウイルスによるウイルス性感染症。ポリオは、Poliomyelitis(ポリオマイアライティス)の省略形。ポリオウイルスが原因で、脊髄の灰白質(特に脊髄の前角)が炎症を起こす。症例の約75%は無症候性である。 発生する可能性のある軽度の症状には、喉の痛みや発熱が含まれる。 症例の割合で、頭痛、首のこわばり、感覚異常などのより重篤な症状が発症する。これらの症状は通常1?2週間以内に回復する。一般的でない症状は、永久的な麻痺であり、極端な場合には死亡する可能性がある。 回復から数年後、ポリオ後症候群が発生する可能性があり、最初の感染時に人が持っていたものと同様の筋肉衰弱の発達が遅い。初めの数日間は胃腸炎のような症状が現れ、その後1パーセント以下の確率で、ウイルスに関連した左右非対称性の弛緩性麻痺(下肢に多い)を呈する病気である。
日本では、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律で、2類感染症に分類されている[1]。 ポリオウイルス感染の症状症状症例比率[2] 無菌性髄膜炎1?5% 「急性灰白髄炎」の名はポリオウイルスの3つの血清型、いずれの血清型に起因する感染症に対しても使用される。ポリオ感染の症状は大きく2つに分類できる。1つが不全型ポリオとも呼ばれる中枢神経系(CNS)が関わらない軽微な症状、もう1つがCNSの関わる重篤な症状であり、後者は麻痺を伴う場合と伴わない場合がある[3]。正常な免疫系を持ったヒトではポリオウイルスの感染はその約90 - 95%が不顕性である[4]。稀にポリオウイルスの感染が上部気道感染症(咽頭痛、発熱など)、消化器障害(吐き気、嘔吐、腹痛、便秘、稀に下痢)、感冒様症状などの軽微な症状を引き起こす[2]。 ウイルスが中枢神経系に進入するのは感染者内の1%程度である。CNSの感染を伴う場合、多くの患者が頭痛、首痛、背部痛、腹痛、末端痛、発熱、嘔吐、脱力、神経過敏(irritability)を伴う非麻痺型髄膜炎
徴候と症状
無症状72%
軽微な症状24%
非麻痺型
麻痺型急性灰白髄炎0.1?0.5%
? 脊髄ポリオ麻痺型症例の79%
? 延髄脊髄ポリオ麻痺型症例の19%
? 延髄ポリオ麻痺型症例の2%
病原体詳細は「ポリオウイルス」を参照ポリオウイルスの透過型電子顕微鏡像
急性灰白髄炎はポリオウイルスとして知られるエンテロウイルス属のウイルスの感染によって生じる。この属のRNAウイルスは消化器系で増殖し[9]、特に咽頭や小腸を感染巣とする。初期徴候、症状までの潜伏期は3日から35日までの幅をとるが、一般的には6日から20日の間となる[2]。ポリオウイルスはヒトのみに感染し、疾患を引き起こす病原体である[10]。構造は極めて単純で、一本鎖の (+) 鎖RNAゲノムとそれを包むタンパク質の殻、カプシドのみによって構成される[10]。カプシドはポリオウイルスの遺伝物質を保護するだけでなく、ポリオウイルスを特定の細胞に感染させることもできる。これまでに3つの血清型が同定されてきた。それぞれ1型、2型、3型と命名され、それぞれわずかにカプシドタンパク質に違いがある[11]。