対艦ミサイル
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ハープーン艦対艦ミサイル

対艦ミサイル(たいかんミサイル、英語: Anti-ship missile, AShM)は、対艦兵器として開発されたミサイル
誘導爆弾

第二次世界大戦中の対艦兵器としては砲熕兵器やロケット弾魚雷無誘導爆弾などが用いられていた[1]。その後、まず誘導爆弾として精密誘導兵器(PGM)の導入が図られることになり、1943年にはドイツ空軍フリッツXを、1945年にはアメリカ海軍バットを実戦投入して、前者はイタリア海軍戦艦ローマ」を撃沈する戦果を挙げている[1]。また大日本帝国陸軍ケ号爆弾を開発していたが、こちらは実用化には至らなかった[2]

大戦末期の時点で、既にドイツ空軍が下記のように推進装置を備えたHs.293を実戦投入していたように[1]、戦後は巡航ミサイルとしてのASMが主流となった。ただし対地兵器として開発されたペイブウェイなどのレーザー誘導爆弾が対艦用として使用される場合もあったほか、2000年代に配備されたLJDAMでも対艦攻撃が想定されている[3]。また航空自衛隊でもASMを装備化するのと並行して、対空火力が貧弱な目標を攻撃するための対艦用誘導爆弾として91式爆弾用誘導装置(GCS-1)を開発・配備している[4]

フリッツX誘導爆弾

水上標的に命中する寸前のペイブウェイII誘導爆弾

巡航ミサイル (ASCM)
空中発射型 (ASM)詳細は「空対艦ミサイル」を参照

誘導爆弾と並行して、これに推進装置を備えたような巡航ミサイルの開発も進められており、ドイツ空軍では1943年よりHs.293も実戦投入した[1]大日本帝国陸軍イ号一型甲無線誘導弾およびイ号一型乙無線誘導弾を開発していたが、いずれも実戦投入には至らなかった[2]。またアメリカ海軍でもガーゴイルを開発していたが、こちらも実戦投入には至らなかった[1]

大戦後、ソビエト連邦ではナチス・ドイツから獲得したミサイル技術も踏まえて巡航ミサイルの開発を進めており、1953年にはMiG-15戦闘機を無人化したような設計のKS-1(AS-1)(英語版)を就役させ、これが同国初の空対艦ミサイルとなった[5]。その後も順次に開発・配備が進められていき、1966年には最大射程350海里 (650 km)という長大な射程を誇るKSR-5(AS-6)(英語版)が配備された[6]。ただしソ連では、政治的な理由もあって、このように戦略爆撃機でなければ搭載できないような大型・長射程のミサイルの開発が先行したため、戦術的に使用できるようなミサイルの開発が開始されたのは1960年代中盤になってからであった[5]

これに対して西側諸国では、むしろ比較的小型・短射程のミサイルの開発が先行しており、まず1959年、アメリカ海軍の対潜哨戒機が浮上した潜水艦を攻撃するための兵器として、指令誘導式のブルパップ(射程10海里 (19 km))が配備された[7]。その後、1970年代には北大西洋条約機構(NATO)諸国でも電波光波ホーミング誘導式の空対艦ミサイルの実用化が相次いだが、これらの多くはSSMとファミリー化されていた[1]。特にエグゾセ1982年フォークランド紛争で実戦投入され、駆逐艦シェフィールド」撃沈などで有名になった[8]。また航空自衛隊でも、1980年には80式空対艦誘導弾(ASM-1)を制式化した[9]

対艦ミサイルが登場した当初は、単に小さく高速であるというだけで要撃を避けることができていたが、水上艦の側でもミサイルの脅威に対抗するため電子攻撃CIWSなど対艦ミサイル防御(ASMD)の技術を発達させていったことから、後にはミサイルの側でも、超低空飛行(シースキミング)レーダー反射断面積(RCS)の低減によって敵からの探知を避けたり、超音速化によって要撃のための余裕を与えないようにしたりといった策を講じていくことになった[1]

Tu-16戦略爆撃機に搭載されたKSR-5

F-16戦闘機に搭載されたハープーン

艦上発射型 (SSM)詳細は「艦対艦ミサイル」を参照

ソビエト連邦では、艦対艦ミサイルについてはまず短射程のP-15(SS-N-2)を先行して開発し、1959年よりミサイル艇に搭載して配備を開始した[10]。また翌1960年には、250海里 (460 km)という長大な射程を誇るP-6(SS-N-3)が登場し、こちらはアメリカ海軍の空母任務部隊への対抗策として、潜水艦ミサイル巡洋艦に搭載された[10]

これに対し、アメリカ海軍では当初艦対空ミサイル(SAM)で対艦兵器も兼用する方針であり、また大戦中に建造された砲装型巡洋艦などの強力な艦砲が多数残っていたこともあって[11]、艦上発射型の巡航ミサイルはまず対地用の戦略兵器として配備された[10]。一方、西側諸国のなかでも周辺諸国に対して海上兵力で劣勢にあった北ヨーロッパ諸国やイスラエルでは早くから艦対艦ミサイルに着目しており、1966年にはスウェーデンRB 08を、また1972年にはイスラエルがガブリエル[12]ノルウェーペンギンを配備した[9]


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