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対数(たいすう、英: logarithm)とは、ある数 x を数 b の冪乗 bp として表した場合の冪指数 p である。この p は「底を b とする x の対数(英: logarithm of x to base b; base b logarithm of x)」と呼ばれ、通常は logb x と書き表される。また、対数 logb x に対する x は真数(しんすう、英: antilogarithm)と呼ばれる。数 x に対応する対数を与える関数を考えることができ、そのような関数を対数関数と呼ぶ。対数関数は通常 log と表される。
通常の対数 logb x は真数 x, 底 b を実数として定義されるが、実数の対数からの類推により、複素数や行列などの様々な数に対してその対数が定義されている。
実数の対数 logb x は、底 b が 1 でない正数であり (b ≠ 1, b > 0)、真数 x が正数である場合 (x > 0)[注釈 1] について定義される。 これらの条件を満たす対数は、ある x と b の組に対してただ一つに定まる。
実数の対数関数 logb x は底 b に対する指数関数 bx の逆関数である。この性質はしばしば対数関数の定義として用いられるが、歴史的には対数の出現の方が指数関数よりも先である[1][注釈 2]。対数関数のグラフの底を変えたときの様子。緑の曲線は底が 10、赤の曲線は底がネイピア数 e ∼ 2.7、紫の曲線は底が 1.7 の対数である(底 10 の対数は常用対数、底 e の対数は自然対数と呼ばれる)。すべての曲線は点 (1, 0) を通り、y 軸を漸近線に持つ。 一般には複素数でも定義されるが、その解説は自然対数の項目にゆずる。 1 でない正の実数 a および正の実数 x に対し x = a p {\displaystyle x=a^{p}} を満たす実数 p がただ一つ定まる。この p を x の a を底とする対数として定義する。x に対して a を底とする対数を loga x と表わせば、上記の方程式を満たす p は以下のように書き換えることができる。 p = log a x . {\displaystyle p=\log _{a}x.} この対数の定義はレオンハルト・オイラーによる(1728年)。 正の実数 a ≠ 1 について、正の実数 x を変数にとる実数値連続関数 fa (x) として f a ( x y ) = f a ( x ) + f a ( y ) f a ( a ) = 1 {\displaystyle {\begin{aligned}f_{a}(xy)&=f_{a}(x)+f_{a}(y)\\f_{a}(a)&=1\end{aligned}}} を満たすものを f a ( x ) = log a x {\displaystyle f_{a}(x)=\log _{a}x} と書き、この関数 loga x を a を底とする対数関数と呼ぶ。 1 以外の正の実数であれば底に何を用いてもよいが、分野によって慣例的によく用いられる底があり、底が省略されることも多い。log x のように底が省略されている場合は、前後の文脈や扱われている分野によって底がいくつであるかを判断する。 底を a = 10 とした対数は常用対数(英: common logarithm)あるいはブリッグスの対数(英: Briggsian logarithm)と呼ばれ、実験などの測定値に用いることが多い。ヘンリー・ブリッグスは、1617年に 1000 未満の整数について8桁、1624年には1?2万と9万?10万の整数についての14桁の常用対数表を出版した。他の対数と区別するために、"Log" のように大文字を用いたり、"lg" という記号を用いることがある (ISO 31/XI では "lg" となっている)。 "lg" は二進対数の表記でもしばしば使用される(後述)。 底を a = e(ネイピア数) とした対数を自然対数(英: natural logarithm)あるいはネイピアの対数(英: Napierian logarithm)という。ジョン・ネイピアの名前がとられているが、ネイピア自身が計算に用いた定義は現在の自然対数とは異なる(後述)。微積分などの計算が簡単になるため、数学などの理論分野で用いられることが多い。他の対数と区別するために "ln" という記号を用いることがある。 底を a = 2 とした対数は二進対数 (英: binary logarithm) といい、情報理論の分野で情報量などを表現するのに用いられることが多い。また、音楽の分野においても、1オクターヴとは周波数比 1:2 のことであり、さらに、平均律においては半音が周波数比 1:21/12、全音が周波数比 1:22/12 と定義されているため、二進対数を用いると計算が簡便になる。他の対数と区別するために "lb" という記号を用いることがある (ISO 31/XI)。また二進対数では"lg nと表記されることがよくある[2]。 対数の概念は、16世紀末にヨスト・ビュルギ(1588年)やジョン・ネイピア(1594年)によって考案され、便利な計算法として広まった。天文学や航海学では膨大な数値計算がすでに必要とされており、三角関数表についてはヒッパルコスのころから存在していたとされ[3]、ティコ・ブラーエは三角関数表を応用して掛け算を足し算に変換して計算する手法を使用していた[4]。ネイピアは、20年かけて対数表を作成し1614年に発表した。エドマンド・ガンターは対数の値を長さに換算した目盛りを持つ物差しを利用し、以上の計算手順を簡単に行えるようにした計算尺を発明した。対数は煩雑な計算にかける労力を大幅に減らし、ヨハネス・ケプラーによる天体の軌道計算をはじめとして、その後の科学の急激な発展を支えた。 記号としては1624年にケプラーがLogを使い、その後オイラーが常用対数にlogを、それ以外の底の対数にlを使った。用語としての対数(logarithm)はネイピアがギリシャ語のロゴス(関係)とアリトモス(数)を組み合わせたものだという[5]。 対数表の近似精度を高めることはネイピア以降もしばしば行われ、産業政策にも利用された。1790年にフランスで ガスパール・ド・プロニー が失業中の理髪師たちを集めて雇用し計算させたのをはじめに、チャールズ・バベッジの階差機関への挑戦(1827年)や20世紀初頭アメリカ・ニューディール政策における公共事業促進局の実施するプロジェクト (Mathematical Tables Project 指数関数的に変化する量を対数に変換してみると、線型性などの綺麗な性質が浮かび上がる。また、双曲線などの面積を求める積分法にも対数があらわれる(たとえば、∫A
定義
指数関数を用いた定義
演算法則からの定義
特殊な底
歴史詳細は「対数の歴史(英語版
1 x−1 dx = loge |A| である)。これらの例の他にも対数はいろいろな場面であらわれ、単なる「簡便な計算法」以上の意味を持つことも多い。そのため対数は、詳しく研究されてきた関数の一つでもある。
オリジナルの定義