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密輸(みつゆ)または密貿易(みつぼうえき)[1]とは、正規の手続きを経ず、物品の輸出入(貿易)を行うことである。
概要等)や条約により輸出や輸入が禁じられている物品を密かに輸出入するため。
課税される関税から逃れるため。
手続きを怠るため。
が挙げられる。多くの場合、暴力団やマフィアなどの犯罪組織が関わっており、それらの組織の資金源となっている。 古代以前、弥生時代前期(石器時代と金属器時代の中間)、中国大陸からカイコ種やクワの種が伝来するが、当時の中国は養蚕法やカイコやクワの種の国外持ち出しを厳しく禁じていたことが文献記述にあり(後述書 p.12。「養蚕業」も参照)、これも密輸だったといえるが、京都工芸繊維大学名誉教授の布目順郎
歴史
日本
中世期、室町時代に流入した宋銭によって、一時期、貨幣経済が安定するが(銭貨も参照)、宋側は銅銭の輸出を禁じていたため、基本的には民間商人による密貿易で成立していた[3]。この日宋貿易で輸入された銭の総量は2億貫にものぼる[4]。すなわち、中国銭自体が密輸品であり、その密輸品で中世日本経済が成立していたといえる。
近世期、江戸時代になり、江戸幕府は中国(清)、朝鮮、オランダとのみ公式な交易関係を定め、鎖国によって、外国からの帰国を禁じることとなるが、諸藩では密貿易を幕末まで続けていた。例として、加賀藩では銭屋五兵衛という商人が藩ぐるみでロシア帝国と交易し(後述書)、のちに投獄された。浜田藩では回船問屋の会津屋八右衛門の提案で、朝鮮やスマトラ、ジャワにまで密貿易した(竹島事件)。長州藩や薩摩藩、佐賀藩では密貿易の収入で財政を立て直し、幕末においては倒幕のための軍費として用いられることになる[5]。
このように古代・中近世を通して、前近代では経済や歴史を動かす原動力として密貿易が関わっていた面もあり、負の側面ばかりではない。 清代、1796年にアヘン密輸を取り締まるようになった。その甲斐なくアヘンは蔓延して社会危機を起こし、大英帝国との阿片戦争へとつながっていく。清は阿片戦争による大敗によって、大国としての地位を失うことになる。 現代では外国人麻薬密輸者の死刑判決が問題になっている(2010年中国における日本人死刑執行問題)。日本法に定められた刑の上限では、麻薬密輸は無期懲役であることにより起きた摩擦)。 ソビエト連邦時代に起きたベレンコ中尉亡命事件において、ベレンコ中尉がアメリカ亡命のために乗って来た戦闘機MiG-25自体が正規の手続きを得たものではなく、盗難自動車と同様、乗り物の密輸である(この場合、報酬は亡命である)。冷戦下のアメリカにとってはソ連の軍事機密の一端を知る機会を得たとはいえ、調査した上で最終的には返却している。 2013年7月15日、パナマ政府が北朝鮮船籍の貨物を調べた際、申告の無い武器・兵器の部品(MiG-25など)が密輸されていることが判明し、のちにキューバ政府が老朽化したMiGの修理を依頼していたことが判明している(詳細は「2013年#できごと」の7月15日を参照)。 2023年には北朝鮮が日本と米国産の煙草ブランドを偽造密輸し、多額の利益を得ていた事が発覚している。北はイギリス大手煙草会社ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(以下BAT)とその子会社とビジネス(密輸)をし、米国司法省が罰金支払いを求め、これにBATが合意している(日本円にして罰金840億円を支払った)[6]。米国の報告書によれば、2007年にBATは北に対する事業を切り離し、ビジネスから手を引くと声明を発表していたが、その後も仮の会社を使って4憶1500万ドルの取り引きを行っていた(前同記事)。 密輸が問題となる主な貨物は以下のとおり。
中国
ロシア
朝鮮民主主義人民共和国
主な密輸品
輸入禁制品・規制品
麻薬類、大麻、あへん、覚醒剤、コカイン、ヘロイン、MDMAなどの違法薬物
拳銃などの武器・兵器
偽札、偽造クレジットカード等
ポルノ雑誌、ビデオ、児童ポルノ等
偽ブランド製品、海賊版などの知的財産権を侵害する商品
マジコン等不正競争防止法に違反する商品
絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)で定められた動植物
北朝鮮で生産された物品
密輸出される物品
盗難自動車
軍事転用の恐れがあり、法により輸出を禁止している物資。ヤマハ発動機が以前、中国の企業へ無人ヘリを不正に輸出した。「ヤマハ発動機」「ミツトヨ」参照。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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