密会_(安部公房)
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密会
Secret Rendezvous
作者
安部公房
日本
言語日本語
ジャンル長編小説
発表形態書き下ろし
刊行新潮社 1977年12月5日
装幀:安部真知
ウィキポータル 文学
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『密会』(みっかい)は、安部公房書き下ろし長編小説。ある朝突然、救急車で連れ去られた妻を捜すために巨大病院に入り込んだ男の物語。巨大なシステムにより、盗聴器でその行動を全て監視されていた男の迷走する姿を通して、現代都市社会の「出口のない迷路」の構造を描いている[1][2][3]

1977年(昭和52年)12月5日に新潮社より刊行された。文庫版は新潮文庫で刊行されている。翻訳版も1981年(昭和56年)のJuliet Winters Carpenter訳(英題:Secret Rendezvous)をはじめ、各国で行われている。

作者の随筆・掌編集『笑う月』にも同名の別作品が収録されている。本作品との関連は明記されていないが、一部類似した点が存在する。目次

1 作品成立・構成

2 主題

3 あらすじ

4 登場人物

5 作品評価・解釈

6 おもな刊行本

7 脚注

8 参考文献

作品成立・構成

安部公房は『密会』の執筆のきっかけとなったものは、中学校の教師が自分の教え子と関係も持ち、自殺したという新聞記事だとし、それを見た時に、その教師の内面に入ってみたらどうかという考えが浮かび、中学生の女の子が「中心のイメージ」となり、構想が徐々に出来ていったとしている[1]。また救急車のサイレンの音も着想の一つとされる[4]

安部公房は『密会』の函文では以下のように付記している。地獄への旅行案内を書いてみた。べつに特別な装備は必要としない。ただ入口だけは、まぎらわしいので、よく指示に従ってほしい。いったん中に入ってしまえば、あとは君が通いなれた道順にそっくりのはずである。地上ではと殺意という二本の枝に別れていたものが、地獄では一つの球根に融けあっているとしても、驚くことはないだろう。いま以上に迷ったりする気遣いはないのだから。 ? 安部公房「著者の言葉」[5]

作品構成としては、盗聴器をしかけられ全て監視されていた主人公が、そのテープを聞きながら、自身の行動記録を三人称の「男」を用いて、ノートに記述していったものを軸にしたストーリー展開となり、最後の「付記」では、一人称に戻る。かねてより常に独自の表現を求める安部は、既成の比喩や言い回しを使うことなく、その情景が皮膚感覚として読者に伝わるような独特な表現の世界を描くことを目指しているが、『密会』における空間構造は、8年ぶりに自作を読み返した安部自身が、あまりの不気味さに書いた本人ですらたじろいでしまったという[6]

安部は作品の一つの骨格となっている「病人医者」という「管理するものと管理されるもの」の関係性について以下のように語っている。自分自身の中に、やはり患者としての自分、医者としての自分というものがあって、医者と患者というものは、両方ともある意味では自立した人間ではなくなっているわけだ。われわれが今おかれている現代という構造、これは非常に病院の構造に似た面があって、人間がその中で疎外されていっている側面に、事件として、出来事として次々ぶち当たるわけだ。その結果、ますます深い迷路の中に迷い込んで行くという、その部分は探偵小説らしくない、いわゆる解決というものは出てこないけれども、解決がないことによって、われわれの、逆に現実認識の実態というものに深く照明を当てるという構造になっていると思うけれども、これは説明が難しい。 ? 安部公房「自作を語る――『密会』」[2]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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