寄合百貨店
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寄合百貨店(よりあいひゃっかってん)は、複数の小売店が出店する商業施設形態の一つである。
概要

一つの店舗建物の中に複数の小売店が出店する共同店舗で[1][2]、中小商業者が5人以上参加して[3]事業協同組合を作って[3][1]その中で全組合員が営業し[3]、全体で百貨店のような[1]対面販売中心の[2]総合小売店の機能を持たせた商業施設形態である[1][3]

この形態に、セルフサービス方式を導入してスーパーマーケット方式による販売を行なうものについては「寄合スーパー」と分類される[2][3]

また、中小商業者が共同で設置する百貨店形式の店舗であっても、各組合員が営業するのではなく共同出資した法人が営業をする場合には「協業百貨店」とされ[3]、そのうちセルフサービス方式を導入してスーパーマーケット方式による販売を行なうものについては、「協業スーパー」に分類される[3]

一つの店舗建物の中に複数の小売店が出店する共同店舗という形態で、かつ対面販売中心であるという点では「小売市場」もあるが[2]、「小売市場」は小規模で[4]やや旧式の運営形態となっているのに対して[2]、「寄合百貨店」は百貨店のような大型店舗に[4]商品部(業種)別の売り場構成などを[5]導入して近代化が図られている点が異なるとされている[4]

百貨店のような対面販売中心の[2]総合小売店…という店舗形態のため、入居する店舗の業態も服飾雑貨などの買い回り品を扱うものが多くなる傾向にあり[5]、食品など最寄り品が主体となる「寄合スーパー」とはその点でも異なっている[5]

なお、ショッピングセンターは、小売業や不動産業などの大手企業が開発・運営会社(ディベロッパーに)となって統一的に計画し[4][1]、各小売店はその一部を賃借して出店する形態が一般的で、運営主体との関連性が異なるものとされている[1]。ただし、広義のショッピングセンターの定義には「寄合百貨店」も含まれる場合がある[6]
全国大型小売店総覧などにおける定義

「全国大型小売店総覧」などを発行する経済雑誌発行会社の東洋経済新報社では、百貨店、スーパー、食品スーパー、ホームセンター、専門店、ショッピングセンターの6業態を定義した上で、これら6業態に該当せず、かつ、核店舗がないか、あっても全体に占める割合が低く、複数の業種の店舗が多数集まったものとしている[7]。このため、先述の定義よりは幅広い大型小売店がこの中に含まれることになっているが、6つの業態定義の明確なもの以外を指す「その他の複数の業種の店舗が多数集まったもの」になっており、厳密な業態の定義とはなっていない。
駅ビル内の商業施設

第2次世界大戦後、旧日本国有鉄道の駅舎(駅ビル)の改築工事費を地元が一部負担して代わりに民衆駅内に設置した複数の店舗が入居した商業施設(○○ステーションデパートなど)は[8]、この業態の1つとみなされる[5]ことが多く、「全国大型小売店総覧」などでもそのように分類されているものがある[9]

ただし、釧路ステーションデパートのように協同組合が運営していた[10]ケースもあるが、株式会社による経営の場合には組合による運営という最も狭義の定義からは外れると見ることもできる。しかし、開設時の岐阜ステーションデパートのように株式会社であっても出資者と出店者が完全に一致して個別に営業する場合もあり[11]、この場合は法律上の法人形態こそ組合形式ではないものの実質的には組合形式の運営に近く、狭義の「寄合百貨店」とみなすことも可能である。

なお、国鉄分割民営化などにより、大都市圏などでは旧民衆駅を民営化後のJR各社が買収して完全に支配下に入れたり解体して新ビルを建設した例も多いほか、地方では自家用車の普及による車社会化の進展によって駅ビルの集客力の衰えで空き店舗化する事例もあり、中小小売業者の出資による本来の寄合百貨店形態の駅ビルは減少傾向にある。
百貨店法の規制除外と疑似百貨店問題の発生

百貨店に代表されるような大手企業による影響を抑制して中小小売業者の事業機会の確保を目的とする観点から[12]、「寄合百貨店」のような協同組合などによる共同店舗を規制対象外とするため[12]、1956年(昭和31年)6月に施行された(第2次)百貨店法では[12]、(第1次)百貨店法のような建物全体での店舗面積を基準とする「建物主義」を採用されず[12]、企業毎店舗ごとに基準以上の売場面積である場合に規制の対象とする「企業主義」が採用された[12]

ところが、量販店(総合スーパーなど)がこの「企業主義」を逆手にとり[12]、同一建物内に取扱品目やフロア毎に別会社とした形式的には共同店舗とすることで店舗面積を基準面積未満とすることにより[12][13][14][15]、外観的にも実質的にも一体のものながら百貨店法の適用を免れる「疑似百貨店」と呼ばれるものを出店して問題となった[12][13][14][15]

そのため、「疑似百貨店は百貨店法を無意味化するものであるから、規制すべきである」との要求が百貨店と中小小売業者の双方から出されたものの[12]、「大規模小売業の消費者にとっての利益や流通近代化」などを理由に事実上黙認され[12]、1974年(昭和49年)3月1日に百貨店法に代わって施行された大規模小売店舗法の規制が始まるまでそうした状況が続いて総合スーパーなどが急速に発展する結果となった[12][15]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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