宿屋の富 - 暇つぶしWikipedia

宿屋の富

宿屋の富（やどやのとみ）は古典落語の演目の一つ。上方落語では『高津の富（こうづのとみ）』と呼ぶ（元は上方落語）。

上方発祥の演目で、3代目柳家小さんが東京に持ち込んだ。

そのナンセンスさ故か演者は多く、ざっと挙げるだけでも東京の4代目柳家小さんや5代目古今亭志ん生、上方の6代目笑福亭松鶴や5代目桂文枝など堂々たる大看板が手がけている。

また松竹新喜劇でも「大当たり高津の富くじ」として劇化された。目次

 1 あらすじ

 2 湯島天神（高津神社）の境内

 2.1 境内での喧騒

 3 富くじ

 4 高津神社と落語

 5 脚注

 6 外部リンク

 あらすじ

神田馬喰町 [1]〔上方版『高津の富』では北船場大川町 [2]。以下〔　〕内は『高津の富』での表現〕のはやらない宿屋に一人の男が泊まりに来る。男は人のよさそうな様子で自分がいかに金持ちかをあれこれ話す。宿の主人は男の話をすっかり信じてしまう。主人が副業として売っている富くじの最後の一枚を買ってくれるよう男に頼むと、男は千両なんか当たったらその金が邪魔でしょうがないなどと言って嫌がるが、根負けして買うことし、当たったら半分お前にやろうと約束する。

しかし実は男は貧乏人で、富くじを買ったことで最後の一分もなくなってしまっていた。

翌日、湯島天神〔高津神社〕で富くじの抽選が行われ、たくさんの人が集まっておおいに賑わう。

抽選が終わって人々が帰り始めた頃、散歩していた件の男が通りかかる。一枚買っていたことを思い出して札の番号を見ると千両が当たっている。

あまりのことに寒気がした男はそのまま宿へ帰ると部屋で蒲団にもぐりこんでしまう。一方、売った富くじの番号を控えていた宿屋の主も、昨日客が買ったくじが当たっていたことを知る。慌てたあまり下駄をはいたまま二階に上がると男は蒲団をかぶったまま「うるさい奴だなぁ、君は。千両ばかりで騒ぐな。客の座敷に下駄のままで上がったりして。だから貧乏人は嫌いなんだ。え、宴の支度？　結構です!」。

「そんなこと言わずに」と主人が蒲団をめくると客は草履をはいたままだった。
湯島天神（高津神社）の境内

掲載したあらすじは、5代目小さんの型を基盤とした『似非金持ち』のほら話に重点を置いたバージョン。このほかにも、『湯島（高津）の境内でのドタバタ』に重点を置き、宿屋を飛び出した男が境内にたどり着く間に以下の件が入るバージョンが存在する。
境内での喧騒

ちょうどその日は富の当日で、境内は大勢の人でごった返していた。

「千両当たったら質屋を始める。自分でやるなら置きに行く手間が省けるから…」

なんて頓珍漢なことをいっている奴がいるかと思うと、「私には一番は当たらない。その代わり二番が絶対当たる」と怪気炎を上げている奴もいたりする。

「夕べ枕元に神様が立って、『お前に一番富を当てることが出来ない』と言うんですよ。それを無理やり拝み倒したら、『二番を絶対当てる』と約束してくれたんです」

「へー。で、当てたら如何するの？」

「まず、全部細かにして、紺色の反物で作った、一反(約36cm2)もある特注の財布を作ります」

吉原〔新町〕へ行って馴染みの女郎を口説き落とし、身請けするまでを一人二役の大熱演。

「で、当たらなかったら？」

「うどん食って寝ちゃおうかな…」

大騒ぎをしていると、寺社奉行〔世話方〕が出てきていよいよ富の抽選開始。