家売るオンナ
ジャンル連続ドラマ
脚本大石静
松島瑠璃子(第2シリーズ)
演出猪股隆一
山田信義
佐久間紀佳
『家売るオンナ』(いえうるオンナ)は、2016年7月13日から9月14日まで日本テレビ系「水曜ドラマ」枠で放送された日本のテレビドラマである。主演は北川景子。日本での放送の1時間後に「Your Home is MY BUSINESS」のタイトルで香港、フィリピン、タイ、インドネシア、カンボジアで、1週間後には韓国、台湾、アメリカでもそれぞれ放送された。
2017年5月26日21時 - 22時54分に、続編である『帰ってきた家売るオンナ』(かえってきたいえうるオンナ)が同局系『金曜ロードSHOW!』特別企画・7daysTVスペシャルドラマとして放送された[1]。
2019年1月9日から3月13日まで、第2シリーズとして『家売るオンナの逆襲』(いえうるオンナのぎゃくしゅう)が放送された[2]。 「テーコー不動産」で「私に売れない家はありません! 」と豪語する天才的不動産屋・三軒家万智は、客の抱える個人的な問題をも慧眼で察知し、容赦なく関わりながら、家という人生最大の買い物を型破りな方法や手段で豪快に売りまくる。万智の働き方・生き方に、次第に若手社員の庭野聖司と万智が来る前までエースだった足立聡ほか周りの社員たちも影響を受け、感化されていく。テーコー不動産本社が進める再開発計画に、万智と課長の屋代大が背いたことにより共に会社を去り、都内のとある海沿いの町で、2人で「サンチー不動産」という不動産会社を営むようになる。 やがて万智と屋代は結婚し、共に「テーコー不動産」へ復帰する。それと同時に、万智の宿敵となるフリーランスの不動産屋・留守堂謙治の出現により、「テーコー不動産」に波乱が起きようとしている。ある夫妻の物件をめぐって留守堂は万智に勝負を挑み、留守堂が勝利して万智は初めて敗北を味わい、彼女の逆襲が始まる。万智は敗北後に留守堂の名前を詮索して、彼が小学校の同級生だと判別した。その後は、対等の立場で協力し合いながら、ともに売り上げを伸ばしていく。やがて、感情を抑えきれなくなった留守堂は万智に告白するものの恋は実らず、彼は彼女への絶望と逆恨みを抱いて姿を消した。 留守堂はライバル会社「リッチブラスト不動産」に移り、1年後の新宿界隈の物件は万智の人工知能を使った売上方法で売上の7割を占めるようになり、「テーコー不動産」の新宿営業所は他営業所に吸収合併される危機に瀕するようになる。この危機に万智は社長に直談判をしてマンション買収の資金調達を行ない、社員たちは買収したマンションを売り上げようと一致団結した結果、売上が急激に伸びて危機を脱した。この業績によって、新宿営業所売買仲介営業課は売買仲介営業部に昇格し、万智はチーフ兼社長に、屋代は部長に、足立は課長に昇進した。留守堂は「リッチブラスト不動産」を辞職し、海沿いの町で「サンペー不動産」という不動産会社を営むようになった。 ※〈〉の年齢は第1シリーズ開始時の年齢による。
あらすじ
キャスト
テーコー不動産株式会社 新宿営業所売買仲介営業課
三軒家万智(さんげんや まち)〈30〉
演 - 北川景子本作の主人公。チーフとしてテーコー不動産株式会社の目黒営業所から新宿営業所売買仲介営業課に異動してきた、売上成績がトップクラス[注釈 1]の営業。新宿営業所に配属される前は、目黒営業所に5ヶ月、その前には飯田橋営業所に3ヶ月勤務していた。「私に売れない家はありません! 」と豪語する自信家。特徴として、部下に仕事を指示した後に発する「ゴー! [注釈 2]」や「家を売るためです」が口癖。顧客が家を購入すると決めたあとに「落ちた」と心の声を発するのが定番。歩いて曲がるときは、ほとんど直角。神出鬼没で、物音を立てずに突然背後に現れたりする。言動は常に機械的かつ無表情で笑顔は見せないものの、緊張するとしゃっくりが止まらなくなる[注釈 3]。趣味と言うほど「家を売ること」に異常なまでに執着しており、契約を成立させるためなら、部下である庭野らの担当する顧客を横取りするなど強引な手段を取ることも厭わない[注釈 4]。古典的手法であるチラシの作成・配布から、SNS・ハッシュタグを利用した現代的な情報拡散術まで、あらゆる営業方法を得意とする。裏道の狭い道路でも、軽々と運転できる。部下に対する呼び方は、年下の庭野たちに対して基本的に呼び捨てにして下僕のように扱う容赦無い態度をとり、年上の布施たちに対して「さん」付けはするが、態度は厳しい。会社の部下指導マニュアルは全く使わない[注釈 5]。独身であり「結婚して愛するパートナーと家庭を持つこと」を望んでおり、何度も婚活パーティーに参加しているが毎回失敗している[注釈 6]。屋代とのキス現場を見た庭野が屋代に気持ちを尋ねた際に、屋代は「光輝く特別な存在だ」と言い、その際に若干の動揺を示す。次いでこころに「サンチーさんは2人をどう思っているの」と問われ、庭野や屋代に少なからず好意を抱いているものの「彼らが私を『女』として愛していない以上、私も(庭野と屋代を)『男』として見ることはない」と語る。一家惨殺事件を起こした事故物件の邸宅に住んでおり、時折ドアが勝手に開いたりすることもあるらしいが、それでもその家に住み続けるのは、本人曰く「家」には罪がなく、「家賃が5万円で安いから」とのことである。後にその邸宅を手放し、足立が売却した[注釈 7]。最終話にて、テーコー不動産本社が密かに進めていた再開発計画に反対する行動(こころの店存続と、万智の客のためのビル一棟売却)を取ったため、屋代と共に会社を離れ、都内のとある海沿いの町で、屋代と二人で「サンチー不動産」という不動産会社を営んでいる。なお、この時は彼女が社長となっている。小学校時代のあだ名は「マンチッチ」。現在の常に機械的かつ無表情とは違い、小学校時代の彼女は、表情が豊かで明るく特技の手品で場を和ませ、クラスの「ひょうきん者ランキング」1位だった。手品を特技としたのは、当時一世を風靡したコミックマジシャングループ「マジック7」の大ファンだった影響。「ゴー! 」の口癖は、「マジック7」メンバーの「サーベルのジョー」がボックスにサーベルを刺す際の掛け声を真似てから始まっている[4]。高校2年生の時に両親を事故で亡くし、父親が抱えていた膨大な借金を返済するために自宅を売却したが、全額返済には至らなかった。さらに、誰も借金返済を手助けしたり、引き取ったりする人がいなかったため、ホームレスとして公園で生活していた。このとき、留守堂に「欲しいもの、それは家」と語って、彼が不動産屋になるきっかけを作った。一週間後に肺炎で倒れて病院に搬送され、退院後に養護施設に引き取られるが、施設での生活に嫌気が差して抜け出し、お金を稼ぐために昼夜を問わず働き続け、物語が始まる一年前に借金の返済を終えた。なお父の借金は相続放棄が可能であったが、周囲の大人からそのことを教わらなかった。「家を売ること」に人一倍熱心に取り組む理由について、第7話にて、「借金を返済できずに家を追い出された過去から自分自身を解放するため」と明かしていた。続編の「帰ってきた家売るオンナ」では、庭野が泣きついてきたため短期のバイトとして一時的にテーコー不動産に復帰し、第2シリーズの「家売るオンナの逆襲」から正式にテーコー不動産に復帰して屋代と結婚し姓を「屋代」に変えるが、復帰してからも旧姓の「三軒家」と名乗って仕事をしている。公私ともに屋代のことを「課長」と呼び、敬語で接している。結婚後も「家を売ること」への異常なまでの拘りは変わらず、終業後も「家を売る仕事」の為に夜遅くまで自宅に帰らないことが多い。家での料理はフルコースでおもてなしするが、屋代に重荷と感じられている。第4話で、当初は家の購入予定のなかった山路夫妻に夢であった喫茶店の物件を案内して契約を結んだが、山路の娘夫妻である満島夫妻の物件の契約は留守堂に横取りされて、初めて敗北を味わう。第7話まで一生涯ボウリングをやったことがなく、ボールの握り方は全くわからなかった。第8話では、庭野の父・茂雄との商談中に白洲に呼び出され、しばらくして彼女のいる喫茶店に物音を立てずに現れた。白洲から夫の屋代が浮気をしていると告げられ、更に彼女が働いているスーパーの店長の三郷と一緒に映っている複数の写真を見せられ激しく動揺し、その写真を保存している白洲のスマホを持ち帰る。その後、棟方親子との内見中に突然声が出なくなってしまい[注釈 8]、同行していた庭野に「口パク」での自身の発言を通訳させ、彼のアドリブによる発言も容認し、会社に戻った時には声も元通りになり、「庭野が(棟方親子に物件を)売りました」と報告する。会社から帰る際、前述の「浮気」について屋代を問い詰めるが、彼が素直に経緯と潔白を説明したことで一応は誤解が解ける。第2シリーズ最終話では、「新宿ガーデンハイツ」を100億円の買収に自ら社長に直談判して資金調達した。社長から買収後にマンションの売上が伸びたときの引き受け条件として、「テーコー不動産」の代表取締役社長を受けることを提示され、公約通りに売上が伸びたことに伴って、今までのチーフ職を兼ねて社長に昇進した。社長に就任後、新宿営業所内に在席しているときは部下たちにチーフと呼ぶように徹底させている。同時に妊娠していることが判明した。
庭野聖司(にわの せいじ)〈25〉
演 - 工藤阿須加営業。真面目な性格ながら、営業成績は下から2番目の若手社員。周囲からは「三軒家の犬」と呼ばれているが、本人は「三軒家チルドレン」と訂正している。物静かな人物だが、深酔いすると相手に乗せられたり、感情を表に出することもある。万智が新宿営業所に来て間もない頃は、「夢のように美しく、鬼のように恐ろしい」彼女の常識破りの手法や横暴な態度に反感を持ち、振り回されることも多かったが、彼女の言う事は乱暴ながらも核心を衝いており、担当客と真摯に向き合い、彼ら彼女らの幸せな人生のために仕事をしていると徐々に悟るようになり、密かに彼女に好意を抱き始める。「家を売るのが仕事、そのために必要な行動を起こす」重要性を万智から学んだ。最終話で足立から「(万智に)深川営業所への異動の噂がある」と聞かされ、自分の気持ちを伝えられず悶々としていたところ、万智が会社の計画に背き、辞職をも覚悟で仕事に臨もうとしていることを知り「自分も辞めます、これからもチーフと一緒に仕事がしたい」と懇願するも、「甘ったれるな! 」とビンタを食らって突き放され、そのまま居残ることになる。1年後、新宿営業所の様子や望月母娘の近況を綴ったFAXを万智と屋代の職場であるサンチー不動産へ送信する。続編の「帰ってきた家売るオンナ」では、課長になった布施の代理としてサンチー不動産を訪れ、自分たちの力不足で家を売れないため、情けなくもとっくに辞めた万智に泣きついて助けを求めた。第2シリーズの「家売るオンナの逆襲」では、「テーコー不動産」に復帰した万智と留守堂が対等の関係を築いているのに、自身は万智の助手として対等の関係でないことに思い悩む。屋代から鍵村の指導係を任され技術面を教えるが、現実主義の彼は言うことを聞かず、手を焼いている。第8話では、棟方親子との内見中に突然声が出なくなった万智に代わって通訳しているうちに興奮して、必要以上の発言をするものの彼女に容認される。そして、万智から「庭野が売りました」と発言させたことで自信がつき、悩みが解き放たれつつある。
屋代大(やしろ だい)〈49〉
演 - 仲村トオル課長。コンプライアンスと組織の結束を重視する穏健派。バツイチで独身。万智曰く「女性不信」。かつては「ミスター・テーコー不動産」と呼ばれるほど成績抜群で女性社員らからもモテていた。課長となってからはコンプライアンスと売上アップというなかなか折り合いが付きにくい至上命令の板挟みで委縮していた。そのためか、夏の管理職人事では同期が何人も出世したが、自分は昇進できなかった。転勤してきた万智の暴走には当初慌てふためいていたが、彼女による「家の爆売り」で課の営業成績が急上昇したこともあり、万智の実力を次第に認めて信頼し、白洲の徹底教育を依頼したり、社員をきちんと叱れるようしたりするなど、徐々に感化されていく。万智と参加した婚活クッキングスクールの帰り道、途中で立ち寄ったバーで飲んだお酒に酔った勢いもあり、タクシーの車内で「君は凄いが、僕はダメだ」と嘆いたところ、万智から7年前の自分と万智との間にあった意外なエピソードを聞かされ、自分を励まそうとした彼女に思わずキスをしてしまう[注釈 9]。最終話にて、行きつけのバー「ちちんぷいぷい」のママであるこころから、「ビル取り壊しのため、立ち退きを迫られて困っている」と相談を受け、取り壊しを回避するべく奔走するが、その取り壊しがテーコー不動産本社の進める再開発計画の一環であり、さらに上層部から「計画の妨げをすれば厳しい処分を下す」と釘を刺され諦めようとする。しかし、その態度について万智から「会社の犬」と非難され、彼女がビルの一棟売却に成功した後、「責任を取る」形で彼女と共に会社を辞め、都内のとある海沿いの町で「サンチー不動産」を営む。なお、この時は屋代が課長(他に社員がいないため事実上の平)となり、社長となった万智と立場が逆転している。続編の「帰ってきた家売るオンナ」では、顧客に子供を押し付けられたため、万智がいない間は仕方がなく面倒を見ながら、一人で仕事をしていた。第2シリーズの「家売るオンナの逆襲」から万智と結婚し、テーコー不動産に再び課長職として復帰した。公私ともに万智のことを「三軒家くん」と呼んでいる。万智が会社での仕事が終わった後も、「家を売ること」の為に夜遅くまで帰ってこない日が多い事に寂しさと不満を募らせ、白洲のバイト先の店長の三郷に気持ちが揺らぎかけた。第8話で、仕事帰りに三郷に声をかけられラブホテルに連れ込まれそうになったが、万智を裏切ることはできないと断った。第2シリーズ最終話で、売買仲介営業課から売買仲介営業部に昇格したことに伴って、課長から部長に昇進した。
白洲美加(しらす みか)〈28〉
演 - イモトアヤコ[5]営業。家を売る意欲が全くなく、未だに売上実績がない営業成績最下位の社員。万智からはフルネームで呼び捨てられている。入社前は他の仕事を転々としていた。仕事(主にチラシのポスティング)を途中で放り出して、映画を見たりカフェでお茶するなどサボることも少なくない。そのため、布施は白洲の不真面目な勤務態度が、新宿営業所の営業成績が伸び悩んでいる要因、屋代も自分の出世を妨げている最大の要因と、共に「いい加減で目障りな存在」と思われている。お酒を飲むと喜怒哀楽が激しくなり、最後には寝てしまい、寝言も非常に多い。自身の容姿が良いと思っている場面もあり、ナルシストな一面もある。万智のいないところでは、彼女のことを「三軒茶屋」と罵っている[注釈 10]。足立には好意を抱いており、万智の「指導」に耐えきれず「もう仕事を辞めたい」と泣き出しては「足立さんがいるから」という理由で立ち直って会社に留まっている。最終話では、帰り道に偶々すれ違った足立に結婚とキスを迫るが、両方とも断られた。また、足立だけでなく第2シリーズ「家売るオンナの逆襲」では留守堂にもメロメロになるなど顔が良い者に対して弱い傾向があり、興奮して鼻血を出したことがある[6][7]。第7話にて、父の浮気がきっかけで両親の離婚が成立。更に、母の依頼による実家の取り壊しと土地の売却を万智が独断で進めるのを阻止するため、実家と土地をセットで買ってくれる客を探そうと初めて真剣に仕事に取り組むがうまくいかず、それでも実家の取り壊し阻止を諦めきれずに立て籠り騒動を起こす。そして、説得に現れた万智から「白洲美加は、私自身のように過去に囚われたままでいてはいけない。自分を解放するべきだ」と諭され、ようやく実家の取り壊しを受け入れた。離婚した両親は万智の計らいにより近隣の部屋にそれぞれ居住し、良好な関係を再構築する。最終話にて、あと一歩のところで不動産の契約が成立しそうになったところを、他の不動産会社に顧客を横取りされたことにひどく落ち込み、さらにその様子を見ていた万智から「貴女は仕事に向いていない。会社を辞め、守ってくれる人を探しなさい」と言われ、休みがちになる。万智と屋代が会社を辞めた後に退社したらしく、足立にフラれた現場を見ていた宅間と結婚して姓を「宅間」に変え、妊娠した。