宮本から君へ
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宮本から君へ
ジャンル
青年漫画
漫画:宮本から君へ
作者新井英樹
出版社講談社
掲載誌モーニング
発表期間1990年 - 1994年
巻数12冊
漫画:定本 宮本から君へ
作者新井英樹
出版社太田出版
巻数4冊
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『宮本から君へ』(みやもとからきみへ)は、新井英樹による日本漫画作品。新卒営業マンの主人公が、恋や仕事に不器用ながらも成長し、自分なりの生きざまを見つけていく物語である。

新井英樹の連載デビュー作であり、講談社『モーニング』誌上に、1990年35号から1994年34号にかけて掲載された。単行本は講談社より全12巻(モーニングKC)。後に全6巻(KCデラックス)。2009年には太田出版より全4巻の豪華本を刊行。『定本』には2009年時点の主人公周辺のエピソード『はんぶんくらい』が新規書き下ろしで収録されている。また、講談社はモーニングKC版をオンデマンド配信している。

1992年度第38回小学館漫画賞青年一般部門受賞[1]

2018年4月に連続ドラマ化され、2019年9月には映画が公開された[2][3]
作品解説

作者の新井英樹によると、題名を映画『まごころを君に』(1968)[note 1] の作品名に由来するという。主人公の職場として漫画に登場するマルキタの社屋は作者が実際に社員として働いていたセキセイ東京本社がモデルとなっている[4]
あらすじ

大学を卒業して都内の文具メーカー・マルキタの営業マンになった宮本浩は、未熟で、営業スマイルひとつ出来ず、自分が社会で生きていく意味を思い悩んでいる。

山手線の渋谷駅で毎朝見かける美しい女性に恋をした宮本は、その女性がトヨサン自動車の受付嬢である甲田美沙子であることを突き止めアタックし、いったんは成功するもののすぐにその恋は破れてしまう。失恋の痛手を忘れようと、仕事に打ち込もうとするが、ライバル営業マン・益戸の嫌がらせを受けて大口の仕事を奪われてしまう。

マルキタを辞めて独立した先輩・神保の知人である中野靖子と恋に落ち、靖子と腐れ縁にある風間裕二に向かって「この女は俺が守る」と宣言した宮本は、靖子と結ばれてやっと幸福な時間を手に入れることが出来るが、取引先の部長の息子で大学ラグビーの花形選手・真淵拓馬に靖子をレイプされてしまう。その時、泥酔して寝ていた宮本は、すぐそばで靖子がレイプされていたのに気付かず、靖子に絶縁される。怒った宮本は、力の差が歴然としている拓馬に復讐を誓うのだった。
登場人物
宮本浩
本作品の主人公。作中では
東京都千代田区飯田橋に所在する文具メーカー・マルキタの営業部員。24歳。最初は人生の方向性が定まらず、何をしても失敗していた。やがて、先輩の神保と営業をするようになってからは何事にもがむしゃらに立ち向かっていくようになる。人生が良い方向に行きかけてはすぐ挫折してしまうことを繰り返し、自らを「幸せ貧乏人」と称していた。中野靖子と結ばれ、靖子をレイプした真淵拓馬を叩きのめすことで「俺という男の凄さ」に気づき、一度は絶縁した靖子に向かって「俺の人生はバラ色で、このすごい俺がお前も生まれてくる子供も幸せにしてやる」と宣言する。その後、言葉通りに靖子との間に6男4女の子をもうけ、仕事も家庭生活も幸運続き。とどめにロト6で1億円の大当たりを当てるが、5000万円を寄付した慈善団体が実は巨大詐欺グループであり、その被害に遭う。冒頭では神奈川県横浜市大倉山大倉山記念館付近にある実家から通勤している姿が描かれていたが、甲田美沙子への失恋を経て独立を決意し、JR東日本赤羽駅から徒歩15分の木造アパート「ひなぎくハウス」201号室に転居した。靖子との同棲生活や、最終回における靖子の自宅出産もこのアパートを舞台として描かれている。名前は作者がファンであると公言しているエレファントカシマシのヴォーカル宮本浩次からつけられている[5]
中野靖子
北海道小樽市出身。作中では東京都港区新橋に所在するコンピューター関連会社・コスモスシステム社員。26歳。説教癖があり、大の男がウジウジしているのを嫌う男勝りの性格だが、心がもろい一面も持っている。遊び人の風間裕二と同棲していたが、宮本の「この女は俺が守る」という宣言を聞いて感激し、宮本の胸に飛び込んでしまう。紆余曲折の末に宮本と結ばれ、最初の子供を自宅で出産。6男4女の母になり、後日談では更に一人の子供を身ごもっている場面が描かれている。初登場の場面では、宮本と結ばれることをいきなり明かさないために、わざと高齢の落ち着いた女性として、また顔もやや醜く描かれていた。田島は性格のきつい靖子を「つり目のいじわるねえさん」と評している。靖子の住むマンションは、東京都北区飛鳥山と設定されている。また、靖子が宮本のアパートに忘れたジャケットを宮本が届ける場面、風間裕二を追い出して靖子と宮本が初めて結ばれるエピソード、真淵拓馬を叩きのめした宮本が自転車で靖子のもとに駆けつける場面では、1993年に閉鎖解体されたスカイラウンジを擁した飛鳥山公園の風景が描かれていた。閉鎖直前の時期にあたるスカイラウンジの内部も描かれている。
甲田美沙子
自動車メーカー・トヨサンの受付嬢。宮本が毎朝JR東日本山手線の渋谷駅で見かける美しい女性。意を決した宮本に声をかけられ交際を始めるが、実は以前に付き合っていた男性と別れたばかりであり、なかなか宮本に心を許さない。合コンに知人を連れてきて、彼女を宮本に押しつけようとする一面も持っている。やがて宮本と本格的に交際を始めるが、別れた男性と再会すると宮本の前から去っていく。しかしその恋もすぐに破局を迎え、靖子と結ばれた宮本と偶然再会すると、もう一度戻ってきてほしいと懇願するが、宮本に罵倒される。宮本は、美沙子が自分をきっぱりあきらめるようにあえて乱暴な態度に出たのだが、美沙子はその宮本の心が最後までわからずただ泣き伏すのみだった。美沙子が勤務するトヨサン東京本社の外観は、東京都文京区後楽トヨタ自動車東京本社ビルがモデルとなっている。
田島薫
宮本と同期の、マルキタの営業部員。自称ロンリーウルフ。関西弁で喋る。常に宮本の相談役をさせられていて、自分には恋の話ひとつないのに宮本から恋の話を聞かされてイライラすることもある。偶然出会った綾部栞に恋をして、いつも彼女が自分についてくるので、きっと栞も自分に気があると思い込んでいるが、栞は本当は宮本のことを想っていることに次第に気づいていき、何とか栞の気持ちを引き寄せようと必死になる。真淵拓馬に復讐しようとする宮本に、どんな巨漢でも一撃で倒す「キンタマ攻撃」を伝授する。後日談では、年下らしい女性と結婚している姿が描かれている。作者は「宮本の次に思い入れがある人物」と語っている。京王電鉄京王線芦花公園駅付近のマンションに在住。
風間裕二
靖子と同棲している遊び人。ヒモのような生活をしているが、作中ではヒモとは言っていない。あちこちに愛人がいるらしい。小説家志望と言っていて、街でナンパした女にはペンネームが「小林多喜二」であると言う。映画館で同性愛の男に犯されそうになった宮本を助けて、一緒に酒を飲んだ後で宮本を連れてきたのが靖子の家だった。靖子が宮本と関係があることを知っていったんは靖子に暴力を振るうが、宮本が必死で靖子を守ろうとする姿を見て手を引く。しかし、レイプされて宮本と絶縁した靖子が助けを求めるとすぐに駆けつけてきて靖子を優しい言葉で慰める。ところが、靖子が妊娠していて、それが裕二の子か宮本の子かわからないと告げられると堕ろすように忠告する。以前靖子と別れようとして自分が胃癌だと嘘をついたら、靖子が毎日お百度参りで裕二の無事を祈っていたことを宮本に話し、靖子がいい女であること、そんな靖子を土壇場で裏切るなと宮本に言った。
神保和夫
マルキタの営業マンで宮本の先輩。28歳。マルキタを退職し独立する事を考えており、最後の仕事となる大東製薬別製のプレゼンで宮本と仕事をともにし、宮本に営業のノウハウを教える。ライバル営業マンの益戸に妨害されて大東製薬の仕事をいったんは取り損なうが、宮本の度外れた熱意に圧され、益戸に吠え面をかかせるために、駄目になりかけた仕事にとことんしがみつく。いつも笑顔の「営業には得な顔」をしているが、最初の頃は営業の仕事が嫌でたまらなかったという。独立後しばらくは仕事が順調で、その輝いた姿が宮本を焦らせることもあったが、やがて独立して立ち上げた新会社が経営不振になり、宮本に弱音を吐くようになる。
神保緑
神保の妻。旧姓は土田。明るい性格だが、出産と夫の会社の経営不振を契機として、愚痴っぽくなり涙もろくなっていく。神保が益戸を目の敵にするようになったのは「俺の女(緑)をブス呼ばわりした」から。
重松
神保の親友でコスモスシステムの「歌って踊れる」プログラマー。神保と新会社を立ち上げようとしている。コワモテの顔だがひょうきんな性格。顔に似合わず子供の頃に読んで感動した『星の王子さま』からバオバブという名前を社名にしようと提案し、靖子に笑われる。靖子には事あるごとに説教され、頭が上がらない。重松が酒の席に靖子を連れてきたことが、宮本と靖子の出会いとなった。
広瀬真理子
コスモスシステム社員で、靖子の親友。医者に「苦労が顔に出ない体質」と言われるほどおっとりとした性格。しかし靖子が真淵拓馬にレイプされると知るとさすがに慌て、子供の時から知っている産婦人科の診断を受けるように靖子に勧める。
月島
広瀬が靖子に紹介した産婦人科の開業医。女医。いったん笑い出すとなかなか止まらない性格。広瀬は靖子がレイプされて感染症にかかってないか心配で月島のもとに連れてきたが、月島は靖子が妊娠しているという意外な事実を告げる。
益戸
大手文具メーカー、コクヨンの営業マン。実質物語前半の主人公のライバルキャラクター。熱くなりやすい宮本や神保とは異なり、クールな性格。人生には興味を持つべきことがたくさんあって、営業の仕事はその一部にすぎないと割り切っているために、神保や宮本を嫌っている。まだ神保のサルマネをするしかない宮本には事あるごとに意地悪をし、「お前なんかはなっからカヤの外」と言い放つ。大東製薬別製(会社名などを添付した既成の事務用品)でマルキタと競合した際には、事前にマルキタの見積価格を聞き出してそれより安い価格を出したり、宮本の出した見積もり価格を操作するなど卑怯な手で宮本と神保を潰そうとする。しかし最後には一人前になった宮本を受け入れ、神保の会社が潰れたことを知ると心配したりする、宮本いわく「本当は心の温かいいい奴」の一面も持っている。
小田三紀彦
マルキタ営業部の課長。関西弁でしゃべる。宮本や田島のお目付け役的な立場で面倒見が良く、宮本が窮地に陥ると常に宮本をかばう。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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