安楽椅子探偵_(テレビドラマ)
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『安楽椅子探偵』(あんらくいすたんてい)は、朝日放送(現・朝日放送テレビ)の制作により、テレビ朝日系列で放映されたテレビドラマシリーズ、および同シリーズに登場する探偵の呼称。視聴者参加型の推理ドラマであり、劇中の殺人犯人およびそのトリックを当てる公式懸賞企画が催される。

1999年10月1日に第1作の出題編が放映されて以来、これまでに第8作まで製作・放映。原作は、8作品とも推理作家の綾辻行人有栖川有栖の共同執筆による書き下ろし。脚本は戸田山雅司。監督は内片輝(第1-7作)、山口正紘(第8作)。

2018年、シリーズは2017年放送の8作目が『最終作』となり、「少なくとも同様の形式による新作の制作は行われない」ことが原作者の一人である綾辻行人により告知された。シリーズ終了に至る要因はいろいろあったと言うが、最大の理由は「制作局である朝日放送の局内事情によるもの」だという[1]



解説
ドラマのフォーマット
第一週目 (前編・出題編)
2週連続で放映される推理ドラマで、まず第1週目に、ストーリーテラー(作品ごとに異なる)による冒頭の番組紹介のあと、事件の発生と経過や事件の関係者を詳しく描写する出題編が放映される。出題編のドラマ本編のあと、再びストーリーテラーが現れて視聴者への挑戦を宣言する。番組最後のコーナーでは原作者2人が登場し、対談形式で原作執筆時のエピソードや正解に至るためのコツなどを語る。
第ニ週目 (後編・解答編)
翌週の解決編では、謎の人物安楽椅子探偵が登場して、明快な推理と証拠をもとに謎を解き、犯人を特定して事件を解決する。安楽椅子探偵が去ったあと、劇中の登場人物によるエピローグで終幕する。エピローグ最後のカットでは、数学において「証明終わり」を意味する
Q.E.D.の文字が映し出されるのが恒例となっている。解決編本編終了後、ストーリーテラーと原作者2人が登場して、犯人当て懸賞への応募状況の分析と正解者の発表を行う。
作品の方向性

原作の綾辻と有栖川は、「このシリーズでは、テレビ番組という媒体でなければ成立しえないミステリーの構築を目指している」と本編終了後の対談コーナーで繰り返し語っている。

実際、推理小説等の文字媒体ではおそらく表現しえないであろう『テレビ独特の演出』を逆手にとったトリックやヒント、さらには視聴者をミスリードするさまざまな情報が本編中に数多くちりばめられており、小説から派生して製作された従来の映画テレビドラマとは異なる新領域を目指したものといえる。

そのため、一度見ただけでは正解に辿り着くことは極めて難しく、番組冒頭でナレーションで推奨されているように「ビデオ録画」して何度もストーリーを見返して、番組内に隠されているトリックやヒントをすべて探しだして、自分の推理が正しいのかを検証していく必要がある。
犯人当て懸賞企画

視聴者は出題編放映後に、番組中に示された映像、テロップ、音声などあらゆる情報をもとに推理を組み立て、葉書もしくは ⇒公式ウェブサイトのフォームから、下記を記述して懸賞に応募できる。
解答内容
犯人の名前だけでは正解にはならず、その人物だと断定するに至った理由も含めて、簡潔に回答する必要がある。正解者のうち、より多くの手がかりを挙げて、より正しく説明している数名のみが「当選者」となる。
犯人の名前

犯人を特定するに至った過程

応募締め切り
推理の応募締め切りは、解決編の放映の2?3日前に設定される。放送直後から多くのスタッフを動員して正解者の抽出を行うが、締切直前での応募が多いため、かなりギリギリの作業となっていたという。
前提条件
不必要に推理の可能性を広げないため、推理の際の前提としていくつかの条件が提示される。

単独犯の犯行である(全作品共通)。ただし、知らずに犯人に利用される人物は存在する。

テロップ等に登場した時刻は、いずれも正確なものである(第2作以降は日本標準時であることも併記)。

テロップで表記された登場人物の氏名などに偽りはない(第8作)。

エレガントな推理
締め切りまでに届いた回答の中から正解者を選び出し、その中でも原作者自身がもっとも「エレガント」と考える回答を当選として選出し、解決編のドラマ本編が終了したあとのコーナーで紹介する。当選者や次点の応募者には、懸賞金や原作者のサイン入り著書などがプレゼントされる。犯行の動機は出題編の内容だけからは不明瞭なことが多いが、動機がどう推定されようと犯人の特定プロセスには直接影響しないとされる。むしろ作品中に示された事象のみから、いかに論理的・直截的に「この犯人以外はありえないこと」を示すかが、「エレガント」かどうかの指標とされている。
キャラクターとしての安楽椅子探偵

俳優と声を演じるのは、草野徹、第5作 演:坪田秀雄・声:草野徹、第8作 非公開である。

本作品に登場する安楽椅子探偵は、本来の語義どおり、現場に赴くことなく椅子に腰掛けたまま、論理的な推理のみですべての謎を解明する探偵であるが、本作品では、探偵自身の劇中における実在性が曖昧で、荒唐無稽な謎の超越的存在として描かれているところが他の安楽椅子探偵系ミステリと比べて特徴的な点である。
呼び出しアイテムとしての笛

安楽椅子探偵は、劇中の登場人物がなんらかの形で譲り受けた「小さなオカリナ型の笛」を吹くことによって現れる。この笛には、下記のような制約が課されている。
本当に困ったときに吹くと、一生に一度だけ助けてくれる。

一度使ったら、次の誰かに手渡さなければならない。

第1作出題編冒頭の時点ですでに誰が作ったものかはわからなくなっており、劇中の登場人物が通りすがりの人間から受け取ったものとして登場する。第8作では人伝ではなく、ベンチの下のダンボール箱に入った物を受け取る形となっている事に加え、劇中の23年前にはすでに存在していることが語られている。

この笛を持っている人物が、劇中で殺人事件の犯人として疑われて窮地に追い込まれ、やむにやまれず笛を吹くところで出題編のエンディングを迎えるものがほとんどである(第4作は例外)。

また、第6作では本編中の事件解決以外の用途(ある登場人物が過去に遭遇した事件の解決)で用いられたことがあるが、そのせいで本編の殺人事件の推理に使うことが出来ず、その人物が殺された後に別の人物が使っていた(少なくとも9回(本編8回+前述の第6作で触れられている事件)は犯人解明に使われている)。
安楽椅子探偵の登場

解決編の冒頭では、笛が鳴り響いたあと、安楽椅子探偵がスモークと閃光の中どこからともなく現れる(なお、第7作までは登場・退場時に「カルミナ・ブラーナ -おお、運命の女神よ-」が流れる)。

目の部分だけが開いた銀色の仮面をかぶり、黒ずくめのフード付きマントを羽織り白い手袋をはめ、肘掛け椅子に腰掛けている、という異様な姿で登場する。そのため、連続殺人者と間違えられたりと散々な言われようをする場合もある。

安楽椅子探偵が現れる空間は純粋推理空間と呼ばれ、劇中の現実世界とは異なる特別な空間である。この空間には劇中事件の関係者すべてが集められており、安楽椅子探偵は彼らと会話を交わしながら、事件解決の鍵となる条件をひとつひとつ整理しつつ推理を進行する。
推理の過程

推理の過程では、出題編のシーンを宙に浮かぶ仮想スクリーンに再生しながら推理結果を検証していく。


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