安全
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安全(あんぜん、: safety セイフティ、: securite セキュリテ[注釈 1])に関して、安全の国際標準の定義「許容できないリスクがないこと」[1][2]と、「危険をゼロにする(絶対安全)」について解説をする。概説では、安全を、一般の人々がどのように考えているのか、工学分野の研究者・技術者が20世紀後半(1900年代後半)から最近(2014年時点)においてどのように考えていたかを紹介する。次に、安全の定義や、安全を達成するためのリスクマネジメントについて紹介する。「命や財産を保護すること」という意味については、「セキュリティ(: security)」または「保安」を参照。
概説

1971年、イザヤ・ベンダサンは著書『日本人とユダヤ人』の冒頭章「安全と自由と水のコスト」の中で、「日本人は安全と水は無料で手に入ると思い込んでいる」という、駐日イスラエル公使館(伝聞当時)のある書記官の言葉を紹介した[3]。この冒頭章について、向殿政男は、「ユダヤ人は大切な自分の生命を守るためならば高額な費用を払ってでもホテルに居住したりするのに対して、日本人はこれまで安全は自然と守られているもの、又は 誰かが守ってくれるものと考えていたので、安全を意識もせず、民族ごとに大きな違いがある、ということにも気づいていなかった日本人に初めて強烈な衝撃を与えた。」[4]と、紹介している。歴史的・地政学的・宗教的・文化的に異なっている民族間では、安全についての意識が異なっており、それは国ごとの 安全に関連する法律規制技術や商習慣合意形成プロセスの違いとなって現れている[4]

科学技術における「安全」の定義は国語辞典での定義と異なっており、時代と共に変化もしている。1950年前半から1980年後半まで、安全性の研究は、信頼性の研究の一部であった[5]。1970年代、世界各地でプラントの重大事故が発生した。1976年に発生したイタリアのセベソ事故をきっかけとして、当時の欧州委員会(EC、後の欧州連合(EU))が1982年にセベソ指令(欧州指令)として、欧州統一の安全規格を策定した[6]。1990年、国際基本安全規格第1版(ISO/IEC GUIDE 51:1990[7])が策定され『「品質は安全の同義語ではなく、品質規格と安全規格のそれぞれの役割を混同すべきではない。」「絶対安全は存在しない。」』[8]と宣言した。そして、安全とは「受容できないリスクがないこと」[7]と定義された。その後、1999年に、ISO/IEC GUIDE 51:1999が発行されたが、安全の定義に変更はなかった[9]。2014年、ISO/IEC GUIDE 51:2014で「許容できないリスクがないこと」[1][2]と定義が改定された。しかしながら、日本では現在においても、『消費者の多くは、安全といえば一切危険は存在しないという絶対安全を考えている人が多く、リスクの概念や消費者責任の意識に乏しく、ただ騒いだり不安になったりするだけの傾向もある。特に報道機関も含めて、過剰対応としか思えない例もある』[4]と向殿政男は書いている。→#「安全」の用法や定義

安全を扱う学問には安全学や安全工学がある。→#学問
「安全」の用法や定義

安全の用法や定義は、領域ごとに定義の仕方が異なっている。各国ごとの個別の歴史・地理などを踏まえるとどのように考えられるようになっているかまた、最近世界でどのように整合化が進みつつあるのか、ひとつひとつ見てゆく。
国語辞書での用法説明

とりあえず、国語辞書(定義宣言や意見表明をするのではなく、基本的に、当該言語圏である言葉が使われてきた実際の歴史や、現状で一般の人々の間で頻度の高い使用法(言葉の用法)は実際はどのようなものなのか学問的に説明する役割・任務があるとされている書物)の説明を見てみる。

(大辞泉)「危険がなく安心なこと。傷病などの生命にかかわる心配、物の盗難・破損などの心配のないこと。」としている[10]

(広辞苑)

「安らかで危険のないこと。平穏無事。[11]

「物事が損傷したり、危害を受けたりするおそれのないこと。[11]


文部科学省 科学技術・学術審議会 (第12回)配付資料(2004)

「人とその共同体への損傷、ならびに人、組織、公共の所有物に損害がないと客観的に判断されることである。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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