安全データシート(あんぜんデータシート、英: Safety Data Sheet、略称 SDS)とは、危険性または有害性のおそれがある化学物質を含む製品を他の事業者に譲渡または、提供する際に、対象化学物質等の性状や取り扱いに関する情報を提供するための文書。有害物質の取り扱いとそのガイダンス、組成および特性に関する情報の文書有害物質に関する関連情報、属性、および取り扱い手順を提供するアメリカ合衆国の文書
国際的には国際連合の化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)や ISO11014 で標準化されている。 化学物質等を適正に使用、管理するには、その人体や環境への有害性、危険性について認識し、適切な取り扱いをすることが必要であるが、そのためには情報が不可欠である。化学物質を製造や輸入する事業者など譲渡・提供[1]する事業者は、化学物質の使用事業者や輸送・保管事業者などに比較的して情報を入手しやすいが、これらの情報は、取引の際に積極的に提供されにくい性質を有することから、危険性有害性のおそれがある化学物質等については、自主管理に必要となる情報が確実に伝えられるようにすることを目的に、統一した様式で提供するように法令で義務付けられている。 日本では、GHS関係省庁連絡会議 日本では、毒物及び劇物取締法および施行令で指定されている毒物や劇物(日本の毒物一覧、日本の劇物一覧を参照。)の全て[5]、労働安全衛生法および施行令で指定された通知対象物(名称等を通知すべき危険物及び有害物)、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質排出把握管理促進法、PRTR法、化管法とも呼ばれる)の指定化学物質を1%以上(ただし、特定第一種指定化学物質は0.1%以上)含有する製品を事業者間で譲渡・提供するときに、事前または同時にSDSの提供が義務化されている。媒体は文書、磁気ディスクによるものとし、受領者側の承諾があれば、ファクシミリ、電子メール、譲渡提供者の管理下にあるWebページへの掲載も可能である。また、内容に変更が生じた場合も速やかに変更後の内容で提供するように努めるよう規定されている。 また、あわせて化学物質の容器にもGHS対応の絵表示や注意喚起語、措置の概略が記載されたラベルの貼付が規定されている。 労働安全衛生法(第57条の2)に基づく通知対象物は、2021年1月1日現在で674物質ある[6]。 PRTR法に基づく政令で定められている物質は、2014年末現在、第一種指定化学物質が462物質 [1]
目的
日本のSDS
対象化学物質
なお、上述の法でSDSの提供が義務付けられないケースは各法律で異なっており、注意が必要である。例えば、PRTR法では次のような場合は対象とならない(施行令第5条、第6条参照)。
指定化学物質の含有率が指定の値より小さいもの。
固形物であり、使用時にも固形物以外の形状(粉体、顆粒や液体)とならない(管、板、組立部品など)
密封された状態で使用されるもの(バッテリー、コンデンサなど)
一般消費者用の製品(家庭用洗剤、殺虫剤など)
再生資源(空き缶、金属くずなど)
記載内容
日本工業規格(JIS Z 7253:2019「GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法?ラベル,作業場内の表示及び安全データシート(SDS)」[3]
2006年12月からは、SDSにもGHS対応の絵表示(包装ラベルに示すものと同じもの)を付ける事が求められるようになった(危険有害性の要約)。なお、約3000物質については、GHSに基づく政府分類を、厚生労働省・環境省、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)でも公開している[7]。 欧州連合(EU)では欧州化学物質庁(ECHA)のREACH規則でSDSを規定している。 アメリカ合衆国では、労働安全衛生標準の連邦規則CRF1920:1200 App D[8]でSDSを規定している。 米国国家規格協会(ANSI Z400、1/Z 129.1-2010)「職場の危険有害化学品における危険有害性評価、安全性データシート及び安全ラベルの作成」を参照。 中華人民共和国では、1998年に国家規格GB/T 17519-1998『化学品安全資料集』で作成が標準化され、MSDSまたはCSDSと称されていたが、2003年に「化学品安全技術説明書(SDS)」に統一され、2008年にはGHS対応となった。現在、作成方法や記載内容は、欧米日本の規格を参照して2013年に作成、改訂された、GB/T 17519-2013『化学品安全技術説明書編写指南』により規定されている。 中華民国では、従来『物質安全資料表(MSDS)』と称していたが、2014年12月11日より改正『毒性化学物質標示及び安全資料表管理弁法』によって『安全資料表(SDS)』と改称された。 日本のアーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)が推奨する製品含有化学物質情報を伝達するための基本的な情報伝達シート。製品中に含有される成分が規定を受ける「法規等の名称」、管理対象物質の「含有有無」、「物質名」、「CAS番号」、「濃度」などの情報に関して、SDSの作成規定から外れる微量含有物質の情報についても補足、伝達するための資料[9]。作成のためのソフトウェアが用意されていたが、chemSHERPA
欧州連合のSDS
米国のSDS
中国のSDS
台湾のSDS
MSDSplus
脚注^ 販売に限らず、無償譲渡、所有権を移転しない提供、寄託等も含まれる
^ ?GHS対応?化管法・安衛法・毒劇法におけるラベル表示・SDS提供制度
^ 日本規格協会 ラベル表示・SDS
^ 経済産業省 SDS制度
^ 濃度が規定されていないものは0.1%以上。
^ 表示・通知対象物質
^ 厚生労働省・環境省 (2014年10月22日). “ ⇒政府によるGHS分類結果(Excel、HTML)”. 独立行政法人製品評価技術基盤機構. 2015年1月20日閲覧。
^ ⇒米国労働安全衛生標準
^ アーティクルマネジメント推進協議会 (2013年). “ ⇒MSDSplus”. アーティクルマネジメント推進協議会. 2015年1月20日閲覧。