守銭奴
[Wikipedia|▼Menu]

この項目では、モリエールの戯曲について説明しています。金銭を惜しんで使おうとしない人物については「けち」をご覧ください。

ポータル 文学

ポータル 舞台芸術
1810年にドイツで上映された本作のポスター

『守銭奴』(しゅせんど、仏語原題: L'Avare )は、モリエール戯曲。1668年発表。パレ・ロワイヤルにて同年9月9日初演。
目次

1 登場人物

2 あらすじ

3 成立過程

4 評価

5 翻訳・翻案

5.1 日本語訳

5.2 翻案


6 映画

7 脚注

登場人物

アルパゴン…クレアントとエリーズの父。マリアーヌに恋している。守銭奴。

クレアント…アルパゴンの息子、マリアーヌの恋人。

エリーズ…アルパゴンの娘、ヴァレールの恋人。

ヴァレール…アンセルムの息子、エリーズの恋人。

マリアーヌ…クレアントの恋人。アルパゴンに恋されている。

アンセルム…ヴァレールとマリアーヌの父。金持ち。またの名をドン・トーマ・ダルブルチ。

フロジーヌ…取り持ち婆

シモン親方…ブローカー

ジャック親方…アルパゴンの料理人、御者

ラ・フレーシュ…クレアントの従僕、足が不自由。

クロード婆さん…アルパゴンの女中

ブランダヴォワーヌ…アルパゴンの下僕

ラ・メルリューシュ…アルパゴンの下僕

警部

初演当時、モリエールがアルパゴンを演じた。モリエールはこの当時すでに胸部に疾患を抱えており[1]、日常的に咳の発作に襲われていた。その発作を生かしたセリフが作中に見える[2]。ラ・フレーシュに「足が不自由」という劇の筋に関係のない設定がついているのは、モリエールの劇団にジョセフ・ベジャールという足の不自由な団員がいたためである。この役は彼に割り当てられた[3]
あらすじ

舞台はパリ。アルパゴンは金に異常な執着心を示す男で、金のためにクレアントとエリーズに結婚を押し付けようとする。その上クレアントの恋人、マリアーヌと結婚すると言い出した。マリアーヌは母親が病気であり、家が貧しいため、「いやな結婚でも永遠に続くわけではないし、アルパゴンは年寄りだからもう長くはない。アルパゴンが死ねば財産が転がり込んでくるので、そうなれば本当に望む人と結婚すればよい」とフロジーヌに唆され、気の進まない結婚を承知しようとする。アルパゴンはそれぞれの結婚を進めようとするが、反発もあって、うまく進まない。そんな折、アルパゴンが庭に埋めておいた大金が盗まれる。これはラ・フレーシュが発見し掘り出したもので「金をとられるのが身を切られるよりつらい」アルパゴンの性格を巧く突いた、クレアントの策略であった。そのような事情を知らないアルパゴンは、動揺を隠しきれず、喚き散らす。そこへアンセルムがエリーズとの結婚のために登場。話をするうちに、ヴァレールとマリアーヌがドン・トーマ・ダルブルチの子供たちであることが露呈する。ナポリの騒動[4][5]によって、亡命の際にドン・トーマ・ダルブルチは妻子ともども溺死したはずであったが、全員生き残るも、散り散りとなってしまったのである。アンセルムこそ、かつてのドン・トーマ・ダルブルチであり、その時に分かれた子供たちが、ヴァレールとマリアーヌなのであった。アルパゴンは盗まれた金を返すこと、結婚費用はすべてアンセルムが負担すること、の2点で結婚を認め、幕は閉じる。
成立過程

モリエールは現在、古典主義の三大作家のうちの1人に数えられているが、ほかの2人、ラシーヌコルネイユが多くの作品のアイデアを古代ローマやギリシャに求めているのに対し、モリエールはほとんど古代に作品の題材を見つけようとはしなかった。本作は珍しくモリエールが、古代ローマに題材を見出した作品であり[6]それを軸に、フランスやイタリアなどで当時話題になっていた作品から多くの場面を借用し、彼なりの咀嚼を加えて、完成した[7]

現代ならばこれは「盗作」とか「剽窃」とか言われる行為だが、古代の作品の模倣を主としたのが古典作家であり、また17世紀のフランスにおいては同時代の作品からアイデアの借用を行うのは公然と行われていたことで、咎められるべき行為ではなかった[8]し、モリエールの天才のおかげで、借用の基となった作品、ひいては作家が現代において日の目を見ていることも事実である[9]

17世紀中盤までのフランスの観客の趣味は、「ズボンの中に(汚物を)垂れ流した」と聞いて大笑いするような、現代からすれば全く下品なものであった[10]。しかしそれでもモリエールは彼らの鑑賞力を高く評価し「高貴な宮廷人でも、平民でも楽しめるような」作品を書くことを念願としていた[11]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:24 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef