宇宙機のドッキングおよび係留
[Wikipedia|▼Menu]


ISSにドッキングするため慣性飛行して接近するプログレス補給船カナダ製のロボットアームで係留されようとするドラゴン補給船

宇宙機のドッキングおよび係留(うちゅうきのドッキングおよびけいりゅう)とは、概して2機の宇宙機の結合のことを意味する。この結合とは一時的なものから、宇宙ステーションの区画の結合のように恒久的なものまである。

ドッキングとは、特に慣性飛行している2機の宇宙機の結合を意味する[1][2][3][4]。これに対し係留 (berthing) は、自ら動くことのない区画または機体を、ロボットアームを使用してもう1機の宇宙機の結合部に配置させる操作のことである[1][3][4]。一方で切り離す場合においては、ロボットアームによる作業は現在のところ手作業で困難が伴うものであるため、緊急時に乗員を迅速に退避させるような状況には適さないとされている[5]
目次

1 ドッキングの状態

2 有人宇宙船のドッキング

2.1 雌雄型

2.2 機構および系統のリスト

2.3 接続器


3 無人宇宙機のドッキング

4 非協力的ドッキング

4.1 宇宙ステーションサリュート7号回収計画

4.2 非協力的宇宙飛行体への無人ドッキング


5 脚注

6 関連項目

ドッキングの状態

ドッキングおよび係留の結合状態には、「ソフト (暫定的)」なものと「ハード (確定的)」なものがある。一般的にドッキングの操作は、宇宙機が自らのドッキング装置を目標の機体のものと接触させ、留め金をかける「暫定的ドッキング」から開始される。暫定的接続状態が確保され双方の宇宙機が与圧されると、「確定的ドッキング」の段階に進むことができる。ドッキング装置が双方の気密を確保し「確定的」な状態になれば、内部ハッチを安全に開けて搭乗員や貨物が移動できるようになる。
有人宇宙船のドッキング
雌雄型

ウィクショナリーに関連項目があります。androgynous

ドッキングおよび係留の機構は、機構のどの部分を使って結合するかによって、無性型と有性型に分かれる。初期の宇宙機の結合装置は、すべて有性型のものだった。有性型とは、結合する双方の機体がそれぞれ独特の形状 (『雄』型と『雌』型) を持ち、ドッキングの過程において特定の役割を果たすという設計のもので[2]、その役割は交代することはできない。さらに雄と雄、雌と雌など、同じ形のものは結合できない。

対照的に無性型のドッキング (また後には無性型の係留) では、双方の機体が同型の接合部を持つ。無性型の結合では接合部は単一の形状しかなく、それぞれは自身の複製と結合することになる。これによりすべての2機の宇宙機の間で救出作業や共同作業ができるようになるのはもちろんのこと、機構的な段階における冗長性 (役割の互換性) を持つことが可能になる。また柔軟な飛行計画を立てたり、特殊な飛行をする際の分析や訓練の手間を省くことが可能になる[2]
機構および系統のリスト

画像名称方式内部移動注記形式
ジェミニ
ドッキング機構ドッキング不可能ジェミニ宇宙船 (能動) とアジェナ標的機 (受動) とのドッキングを可能にした。有性型
アポロ
ドッキング機構ドッキング可能アポロ司令・機械船 (能動) とアポロ月着陸船 [6](受動) および宇宙ステーションスカイラブ (受動) とのドッキングを可能にした。アポロ・ソユーズテスト計画では、ソビエト連邦ソユーズ7K-TM宇宙船とドッキングするための接続器 (受動) との結合に使用された。移動トンネルの内径は81センチメートル[7][8] 。有性型
初期型探針誘導式
ドッキング機構
(ソ連)ドッキング不可能初期型ソユーズ「探針誘導式」ドッキング装置は、ソ連の宇宙ステーション計画準備のための技術的データを取得する目的で、ソユーズの第一世代機7K-OKで1966年から1970年まで使用された。そこで得られたデータはその後、ソユーズを改造した (当初はソ連の有人月旅行計画のために開発されたものだった) 宇宙ステーション搬送機に使用された[1]

2機の無人のソユーズによる初のドッキング (宇宙飛行の歴史において、初めて行われた完全無人のドッキング) は、1967年10月30日コスモス186号と188号の飛行で行われた。有性型
Kontakt
ドッキング機構ドッキング不可能ソ連の月飛行計画で、月周回機7K-LOK (能動) と着陸船LK (受動) のドッキングで使用される予定だった[9]。有性型
現行型探針誘導式
ドッキング機構
(ロシア)ドッキング可能現行のロシア式ドッキング機構である「ソユーズ探針誘導式ドッキング機構サリュート1型」は、1971年に実用化された。

この装置はロシアでは「Sistema Stykovki i Vnutrennego Perekhoda (SSVP)」と呼ばれ、その意味するところは「ドッキングおよび内部移動のための機構」である[10]。はじめて使用されたのはソユーズ10号およびソユーズ11号の飛行のときのことで、サリュート1号との間で宇宙開発史上初となる宇宙ステーションとのドッキングが行われた[1]。この装置はその後1980年代中頃に改良され、宇宙ステーションミールに20トンもの区画を結合できるようになった[10]。内部には内径80センチメートルの円形の経路がある[3][4][10]

「探針誘導式」機構では、ソユーズ、プログレス補給船欧州補給機などの探針部を持つ宇宙機が、サリュートやミール、国際宇宙ステーション (International Space Station, ISS) などに設置されている誘導部を持つ接続口に結合する。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:88 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef