宇宙望遠鏡
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地上600kmに位置するハッブル宇宙望遠鏡

宇宙望遠鏡(うちゅうぼうえんきょう)とは、地球衛星軌道上などの宇宙空間に打ち上げられた天体望遠鏡のことである。地上に設置された望遠鏡に対して多額の費用がかかることと、打ち上げを要する困難さはあるが、地球大気に邪魔されず観測できるため、現代観測天文学の重要な設備となっている。
宇宙望遠鏡の利点「電波天文衛星」および「X線観測衛星」を参照

最大の利点は、地球の大気による電磁波の吸収がないことである。ガンマ線X線紫外線遠赤外線などは、大気に吸収されてしまうため地上からの観測が困難である。よって、大気圏外に望遠鏡を設置することで大気に邪魔されず観測を行える。

さらに、大気の流動による像の揺らぎがないことも大きな利点である。ハッブル宇宙望遠鏡は紫外線から近赤外線までの波長域の観測を行うが、大気による像の揺らぎがないことから、望遠鏡の回折限界いっぱいまで空間分解能を向上させられる。

大気とはあまり関係がないが、開口合成法によって大きな口径の観測装置を運用できる点もある。地球上に設置する場合には、その直径約12,756kmが開口合成による最大の口径となる。しかしながら、宇宙空間に展開する場合には、その制限がなくなる。
宇宙望遠鏡の難点

最大の困難は、その打ち上げである。ロケットで打ち上げる以上その積載重量には制限があり、口径10mクラス地上望遠鏡のような大きなサイズの宇宙望遠鏡は打ち上げられない。もちろん、打ち上げ失敗のリスクもある。さらに、いったん軌道上に送ってしまうと、一般的には改修したり新検出器を取り付けたりできない。

ハッブル宇宙望遠鏡は打ち上げ後、5度に渡りスペースシャトルによるメンテナンスが行われたが、スペースシャトルが運用されている時期であり地球に比較的近いという配置位置から可能であった例外的事例である。

さらに、同じサイズの地上望遠鏡に比べて費用がより高価であり、一般には運用期間も数年と短い。
様々な宇宙望遠鏡詳細は「宇宙望遠鏡の一覧」を参照

IRAS
アメリカのNASA、オランダのNIVR、イギリスのSERCが共同で計画した赤外線天文衛星である。1983年1月25日に打ち上げられ、10ヶ月間の観測を行った。

ハッブル宇宙望遠鏡
1990年4月打ち上げ。大型光学式宇宙望遠鏡として、計画開始から打ち上げまで10年近い時間を要した大型宇宙望遠鏡。しかしながら、この望遠鏡によって撮影された天体現象や遥か彼方の銀河系などは、多くの天体観測家を魅了した。様々なトラブルに見舞われたが、宇宙飛行士の船外活動などによって修理が行われ、宇宙における多くの知見をもたらした。5回の修理ミッションを受け、30年以上に渡り活動している[1]

スピッツァー宇宙望遠鏡
2003年8月打ち上げ。IRAS に続く、赤外線天文衛星。最初に宇宙望遠鏡を提唱したスピッツァー博士にちなむ衛星。IRAS よりも高い解像度を持つ望遠鏡と観測機器により、銀河系内部にある暗黒星雲の温度分布や恒星系の誕生におけるエネルギー観測に成果を上げている。2020年1月30日に運用終了。

チャンドラX線観測衛星
X線観測衛星。宇宙でのX線による観測は、古くはスカイラブ計画における太陽コロナのX線観測から始まる。高感度のX線センサーを搭載して、中性子星やブラックホール周辺におけるX線バースト現象などの精密観測に多くの成果を上げている。

X線観測衛星「XMM-Newton
X線観測衛星。チャンドラX線観測衛星と同じくして、宇宙でのX線観測を行う衛星。より精度の高いセンサーを搭載することによって、遠く離れた電波銀河やクェーサー(活動銀河核)内部で起こるX線バースト現象などの精密観測に多くの成果を上げた。

X線天文衛星 「すざく」 (ASTRO-EII)
2005年7月打ち上げ。硬X線から軟ガンマ線領域を観測できる、日本の衛星。一部の機器に不具合はあったものの、それまで打ち上げてきたX線観測衛星よりも、より高エネルギーの領域の観測が可能になった衛星。高エネルギー線のエネルギー分布や位置などの精密観測で多くの成果を上げた。2015年6月に機能停止。

赤外線天文衛星 「あかり」 (ASTRO-F)
2006年2月打ち上げ。赤外線領域を観測できる、日本の衛星。精密な光学系と精密な観測機器によって、IRAS が捉えた赤外線分布よりも、より精度の高い赤外線分布を測定できる衛星。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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