宇宙戦争
The War of the Worlds
初版
作者H・G・ウェルズ
国 イギリス
言語英語
ジャンルSF小説
初出情報
初出ピアソン誌
『宇宙戦争』(うちゅうせんそう、英: The War of the Worlds)は、イギリスの作家ハーバート・ジョージ・ウェルズ(H・G・ウェルズ)が1898年に発表したSF小説。
概要イギリスのウォキング市街中央に建てられた、火星人の戦闘機械のオブジェ
20世紀の初めに火星人が地球に到来し武力で侵略する様子が、英国人男性による回顧録の形で書かれた作品であり、SF作品の古典的名作として知られている。原題の"The War of the Worlds"は直訳すれば「世界同士の戦争」、つまり「地球人の世界」と「火星人の世界」の2つの「世界」が争うという意味である。
原作の挿絵はアルヴィン・コレアによるが、後にはエドワード・ゴーリーなど様々なイラストレーターの絵を採用した判も刊行された。
アメリカ合衆国でラジオドラマ化[1]された際に、火星人の侵略を事実と信じこんだ人々によってパニックが引き起こされたとする説は現在では否定されているが[2][3][4]、オーソン・ウェルズによって、初期のドラマ化作品として現在でも参照される作品となっている[5]「#ラジオドラマ「宇宙戦争」事件」の項で後述)。
この作品の影響によって、大きな頭と退化した四肢を持つタコのような姿をした火星人のイメージが世に広まったとされている[6](詳細は火星人#フィクションの火星人を参照)ことから、「タコ型宇宙人が、強力な機動兵器を持ち込んで地球(主に合衆国)で侵略行動をする」という一般的認識がある作品でもある。
また、数々の模倣作品や、これを題材にした作品、ジュブナイルSF化した作品が、数多く製作されている。そうした作品の中には、『シャーロック・ホームズの宇宙戦争』のように、「彼らは火星人ではなく、火星を前線基地としていた」という見解の作品もある(アメコミ『続リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』や、アニメ『ジャスティス・リーグ』の第1エピソードなどでも、彼らは「火星を経由して地球を侵略した」という展開となっている)。 本作の1年前(1897年)に発表された『水晶の卵』(The Crystal Egg
前日譚
知り合いの科学者が調査した結果、夜空の星(恒星)は地球とほぼ同一(=太陽系内)なのに太陽が小さく見え、月が小さく2つあったことから、これは火星の風景と火星人の姿が映し出されており、逆に火星人からもこちらの様子が見えると判断され、火星人が地球の偵察のために送り込んだ物体であろうと思われた。しかし、さらに研究を進めようとした矢先、骨董店主人は死亡、水晶は誰かに売られて行方不明となり、研究は頓挫する。
明確に同一世界とは言われていないものの、この話の火星にも『宇宙戦争』の火星人が持ち込んだ植物と同じ赤い植物が繁茂し、火星人とは別に二足歩行の人間(あるいは猿)型の生物[8]がいて火星人がそれを捕まえる描写があるほか、火星人自体も「口のすぐ下方に物をつかめるような二束の触手」などと『宇宙戦争』の火星人とよく似た形状で、昆虫を思わせる機械に乗って移動するなど似たような技術を持っている[9]。
あらすじ軍艦を攻撃するトライポッド(アルヴィン・コレアによる挿絵)火星人の死体とトライポッド
19世紀6月の金曜日の未明、イングランドのウィンチェスター上空で緑色の流れ星が観測され、天文学者のオーグルビーは、流れ星がロンドン南西ウォーキング付近に落ちているのを発見。それは直径30ヤード(27.4メートル)ほどの巨大な円筒だった。夕方、主人公「私」を含めた見物人が群がる中、円筒の蓋が開いて醜悪な火星人が現れた。オーグルビーは、王立天文官ステント、新聞記者のヘンダーソンらと共に急遽<代表団>を結成。火星人がいかに醜悪な外見でも、何らかの知性を持っている以上、こちらも知性を持っている事を示そう、という理由だが、彼らが円筒に近づいた途端、目に見えない熱線が人々を焼き払った。熱線は恐るべき威力で、人間や動物を含め、周囲の木々や茂み、木造家屋などが一瞬で炎に包まれた。夜、英国軍が出動したが、真夜中過ぎに火星人の第二の円筒が落下する。
土曜日の午後、軍隊の攻撃が始まったが、夕方には「私」の自宅付近も火星人の熱線の射程内となる。「私」は近くの店で馬車を借り、妻を引き連れ彼女のいとこが住むレザーヘッドへ逃げる。その馬車を返す途中、真夜中過ぎに火星人の第三の円筒が落下。家より背が高い3本脚の戦闘機械(トライポッド)が登場し、破壊の限りを尽くす。馬車を借りた店の主人も死に、出動した英国軍も全滅。自宅に生き残りの砲兵が逃げ込んで来た。
日曜日の朝、二人はロンドン方面へ避難を開始。午後、テムズ河畔に火星人の戦闘機械5体が現れるが、砲撃で戦闘機械の1体を撃破。一旦は撃退に成功する。その戦闘の混乱で「私」は砲兵とはぐれてしまい、夕方、教会の副牧師と出会う。一方、火星人はその夜から、液体のような黒い毒ガスと熱線を使う攻撃に戦法を変更し、軍を撃破してロンドンへと向かう。
月曜日の未明、ロンドン市民はパニック状態で逃げ惑う。軍隊は総崩れ。英国政府は「もはや火星人の侵攻を阻止し、ロンドンを防衛するのは不可能である。黒い毒ガスからは逃げるより他に無い」と避難勧告を出す。これを知ったロンドン在住の「私」の弟も避難を開始。暴漢に襲われていた女性らを助け、共に馬車で英仏海峡の港を目指す。港にたどり着いたのは水曜日の午後だった。3人が乗った蒸気船が出港すると、火星人の戦闘機械が3体現れる。沖にいた駆逐艦サンダーチャイルドは、戦闘機械目がけて突進し、砲撃で撃破。2体目に迫る途中、熱線を受けて大爆発するも、体当たりで2体目も撃破。3体目の戦闘機械は逃げ去り、「私」の弟たちの乗った船は英国から脱出した。「私」は、出逢った副牧師と共に、日曜日の夜から黒い毒ガスを避けて空き家に避難していた。翌日の夕方、火星人が去ったので、2人は逃避行を続け、ロンドン近郊の空き家にたどり着くが、真夜中、突然近くに火星人の円筒が落下。廃屋に閉じ込められてしまう。日数が過ぎるうちに「私」は副牧師と対立。極限状態に陥り、大声を出す彼を殴り倒す。その物音を気付かれ、火星人にあと一歩で捕まりそうになったが、何とか生き延びる。15日目の朝、辺りが静まり返っている。思い切って外に出ると、火星人らは姿を消していた。
「私」は以前出逢った砲兵と再会し、人類が負けた事と将来の事について話し合う。砲兵と別れたあと静寂に包まれたロンドンに入った「私」は、そこで戦闘機械を見つける。死を決意し近づいていくが、そこで見たものは火星人たちの死体だった。彼らを倒したのは、人間の武器や策略ではなく、太古に神が創造した病原菌であった。地球の人間と違って、これらの病原菌に対する免疫が全くなかった火星人たちは、地球で呼吸し、飲食を始めた時から死にゆく運命だったのである。
やがて人々は舞い戻り、復興が始まる。「私」は約4週間ぶりに自宅に戻る。幸い自宅はほぼ無事だった。外で話し声がする。窓から見ると、それは妻と彼女のいとこだった。
メディア展開
ラジオドラマ「宇宙戦争」事件「宇宙戦争 (ラジオ)」も参照
ウェルズ『宇宙戦争』のラジオドラマは、1938年10月30日に、アメリカのCBSネットワークで俳優オーソン・ウェルズ率いる「マーキュリー劇場」という番組で放送された[10]。舞台は実在するアメリカの地名に置き換えられ、火星人がアメリカに攻めてきたという内容である[10]。