学歴
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学歴(がくれき、:Educational background)は、個人の学業上の経歴を表す用語[1]
概説

国際標準教育分類 (ISCED 2011) ではレベル0から8までの9段階の学歴水準を規定している[2]

レベル0 - 就学前教育(幼稚園、保育所、特別支援学校幼稚部等)レベル

レベル1 - 小学校、特別支援学校小学部レベル

レベル2 - 中学校、特別支援学校中学部、専修学校高等課程1年制以上の学科(高等専修学校)レベル

レベル3 - 高等学校、前期中等教育修了以上の各種学校で修業年限2年以上、専修学校高等課程2年制以上の学科(高等専修学校)、特別支援学校高等部レベル

レベル4 - 専修学校専門課程1年制以上の学科(専門学校)、高等学校専攻科1年制以上の学科、特別支援学校高等部専攻科1年制以上の学科、高等教育機関進学準備(予備校等)、就職準備(職業訓練校等)レベル

レベル5 - 短期大学、高等専門学校、後期中等教育修了以上の各種学校で修業年限2年以上、専修学校専門課程2年制以上の学科(専門学校)レベル

レベル6 - 大学の学部の学士課程レベル

レベル7 - 大学の大学院の修士課程(博士前期課程)・専門職学位課程レベル

レベル8 - 大学の大学院の博士課程(一貫性博士課程、博士後期課程等)レベル

歴史
近代社会における学歴

近代以前の社会においては、人々の社会的地位や職業はその身分家柄財産によって定められ、世襲や血縁地縁などを加味して人材の選抜・配置が行われていた。

ところが、18世紀から19世紀ごろにかけて、近代的な官僚制度が生じ、官僚たちが試験によって任用されるようになり、また同じころ、専門的知識・技術が必要とされる職業についても試験制度が取り入れられ、学歴もそれらの職業につくための基礎資格として徐々に重要性を増していった[3]

産業革命と市民社会が進展したイギリスにおいて、1853年東インド会社によってインド高等文官の任用が会社理事による推薦から公開競争試験に移行し、1870年にはイギリス本国高等文官にも同様の試験が導入され、試験による人材の選抜・登用が官僚のみならず各種専門職などでも行われるようになった。このような人事制度は、「人々の能力・業績を公平かつ客観的に図る方法」などと謳われつつ導入され、「身分制社会から社会を解放して社会問題を解決する手段」として各国に普及した。ノーバート・ウィーナーは学歴社会を「統治者は永久に統治者であり、兵士は永久に兵士であり、労働者は労働者に運命づけられている」と定義づけている[4]
学歴のインフレ化

先進国においては、社会の高学歴化が起きた(後述)が、そうした仕組みの中で、大量の人々に学歴が与えられるようになり、学歴のインフレーションが進んだ。つまり高学歴を持っている人の数が非常に増え、相対的に高学歴者の価値は下がった(例えばフランスなどもそうである[5])。日本でも少子化で定員割れの大学が増えている。

学歴社会という事象は、歴史の節で説明したように、学歴が特定の職業的地位を獲得するための手段となったときに始まったと見ることができる[3]。学歴社会が生まれた要因としては、体系的な学校制度の進展と近代官僚制の成立により、いわゆる「ホワイトカラー」が誕生したことがあげられる[3]。学校教育制度について言えば、上級学校への進学者に対して一定の学歴を求める傾向が強くなったことと、多くの人々に学歴が賦与されるようになった[3]。企業組織の官僚制化ということに関して言えば、20世紀には大企業が多数出現した。これら大企業ではホワイトカラーの従業員の供給源を学校卒業者に依存する傾向を強めた[3]。かくして、18-19世紀に官僚になったり専門的職業に就く時だけ必要とされた学歴が、次第に様々な組織での任用の基礎的な資格として用いられるような状況になり、学閥を形成したのである[3]

学歴が、特定の専門職に必要な知識の一指標として用いられている限りは、学閥として合理性を有してはいるといえる[3]。もっとも、今日では技術の進歩は速く、学歴は過ぎ去った過去に習得された古い技術の指標にすぎないにもかかわらず、学歴が学閥として派閥活動の元になり、一生にわたって人々の能力評価の尺度とされることもしばしばある[3]。このような学歴の持つ有害な側面(学歴コンプレックス)は社会にとって不要なものであることから、2018年問題を好機として、学歴社会を解消する為に、ICTを利用し、スマートフォンなどでも教育を利用できる放送大学をより発展的に拡大し、貧富の差がなく、学歴を意識せずとも、高等教育が社会のあらゆる層に満遍なく行き渡るよう通信教育を広げる文教政策が取られ始めている。
アメリカ合衆国における学歴アメリカにおける25歳以上の学位と失業率・給与のグラフ。高学歴ほど失業率が低く、給与が高い。アメリカにおける25歳から64歳までの雇用された民間人の職業分野別の学歴[6]。専門職や管理職では、学士以上の学位(英語版)の割合が高く、農業では高学歴の割合が低下する。詳細は「アメリカ合衆国における学歴(英語版)」を参照
日本における学歴

学業の形態は様々であるが、学校教育法で定められた小学校特別支援学校小学部)、中学校特別支援学校中学部)、前期中等教育修了以上の各種学校(修業年限2年以上)・専修学校高等課程高等学校特別支援学校高等部)、後期中等教育修了以上の各種学校(修業年限2年以上)・専修学校専門課程高等専門学校短期大学大学学部大学院等の教育機関における学業上の経歴を指すことが多い。狭義には教育段階だけを指すが、卒業した学校の入試難易度も本人の能力水準を測る上での重要な指標となるため、広義の呼び方として学歴に含むようになった。

短期大学、大学の学部・大学院の各課程の修了者には、学位が授与される。短期大学の卒業者には短期大学士の学位、大学学部の学士課程修了者には学士号が授与される。大学の大学院における修士課程あるいは専門職学位課程修了者には修士号あるいは専門職学位が授与される。博士課程を修了し、論文が認定された者には博士号が授与される。短期大学及び大学学部の学位を初級学位(First Degree)、大学院のそれを上級学位(Advanced Degree)と呼ぶ。学位は世界的通用性を持ち、異なる国の間でも相互に互換性を持つ。2017年の厚生労働省の発表では学歴別の男女計の平均初任給は大学院了{修士課程(博士前期課程)・専門職学位課程}が23万3千円、大学の学部卒が20万6千円、短大・高専・専門学校卒が17万9千円、高校・高等専修学校卒が16万2千円となっている[7]

日本には国立の学費が出せない人や働きながら大卒資格を欲しい人が大卒資格を獲得できる放送大学が設置されている。放送大学は大学卒業までの総授業料が70万6千円であり、国立大平均の3分の1以下である。開学当初には入学者の約7割は高卒者であり、大学資格獲得の機会を保障するセーフティーネットとしての役割を果たしてきた[8]

筑波大学の後藤嘉宏教授によると、他国との比較統計から日本は他の国に比べ学歴による格差が小さく、学歴の重要度は他の国に比べ小さいとしている[9]。また青少年自身も学歴に実利的なメリットをそれほど感じていないという調査結果がある[10]。そもそも日本は年功序列が強く、一流大学卒でも若手の給料が安いと言われている。しかし一流大学卒は大企業で昇給が大きいので、生涯賃金は高くなる。

後藤によると「日本は学歴社会だ」というのは神話にすぎない[9]。むしろそのような神話があったことによって、社会階層の再生産化(つまり社会階層が固定化してしまうこと)が起きている、という[9]。“誰でも努力すれば、良い教育を受けられるし、いい学歴を得れば誰でも良い職業を得られる” などという考えは神話にすぎない、事実ではないという[9]。実際には、高学歴の親を持つ子が高学歴となり、学歴が低い親を持つと子は学歴が低くなってしまう傾向があるという不平等が実際にあるにもかかわらず、神話によってそうした現実が隠蔽されてしまっていたのである[9]。また「学歴によって生まれ変われる(階級を超えられる)」などとする神話は、あくまでブルーカラーからホワイトカラーへの移動について妥当なだけで、学歴ではその先のホワイトカラー同士の階層、ミドル階層と資本家(経営者)階層の間の社会階層差は乗り越えることができないと後藤は指摘している[9]


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