この項目では、映画について説明しています。小説については「孤狼の血」をご覧ください。
孤狼の血
監督白石和彌
脚本池上純哉
原作柚月裕子
『孤狼の血』
製作天野和人
ナレーター二又一成
出演者役所広司
松坂桃李
真木よう子
音尾琢真
駿河太郎
中村倫也
阿部純子
野中隆光
『孤狼の血』(ころうのち)は、柚月裕子の小説『孤狼の血』を原作とした日本の映画。白石和彌監督、役所広司主演で2018年5月12日に公開された[2]。R15+指定。
広島県を舞台に暴力団の抗争、警察の癒着・腐敗などを描いた作品で、『孤狼の血シリーズ』第1作。 昭和49年に広島県で勃発した、呉原市の暴力団尾谷組と広島市に拠点を置く五十子会による第三次広島戦争は、五十子会幹部の死と尾谷組組長(伊吹吾郎)の逮捕という痛み分けに終わった。血みどろの抗争が勝者無き結末を迎えてから14年が経ち、ヤクザ組織が群雄割拠する昭和は終わろうとしていたが、呉原市では尾谷組の残党に対し、五十子会の下部組織の加古村組が抗争を仕掛け、新たな火種が燻り始めていた。 昭和63年(1988年)8月、呉原東署のマル暴刑事・大上章吾(役所広司)のもとに、広島県警本部から新米刑事・日岡秀一(松坂桃李)が部下として配属された。大上と日岡は、加古村組のフロント企業・呉原金融に勤める上早稲二郎(駿河太郎)という男が行方不明になっていると相談を受け、捜査を開始する。捜査を初めて早々に加古村組組員・苗代(勝矢)と接触した日岡は、大上から「因縁つけてこい」と命令されて苗代に喧嘩を売り、半殺しにされる。割って入った大上が懲役をチラつかせながら上早稲二郎の居所を尋ねるが、苗代は頑なに口を割ろうとしない。その態度から上早稲二郎は既に殺害されていると推測する。後日、大上は広島仁正会系列の街宣右翼・瀧井銀次(ピエール瀧)からの情報により、上早稲二郎が苗代ら加古村組に拉致される瞬間を捉えたビデオテープを入手する。日岡は、窃盗、侵入、放火などの犯罪行為をもって捜査を行い、その上、尾谷組から賄賂まで受け取るというヤクザ顔負けの手段を取る大上に反発するが、不本意ながらも大上の違法捜査に手を貸していることに葛藤を覚える。 警察官としての正義と大上流の正義の間で複雑な感情を抱く日岡は、苗代から暴行を受けた傷を手当てしてくれた薬局の桃子(阿部純子)と親しくなる。 そんなある日、尾谷組のシマであるクラブ梨子に挑発に来ていた加古村組・吉田(音尾琢真)が梨子ママ(真木よう子)にセクハラをしたことが許せなかった尾谷組・柳田タカシ(田中偉登)は短刀を持って吉田を襲うが、逆に返り討ちにされ吉田に拳銃で撃たれ死亡する。激怒した尾谷組若頭・一ノ瀬守孝(江口洋介)は加古村への報復を始めるが、大上はヤクザ同士の間に入り、落としどころをみつけ均衡を保とうと奔走する。しかし、事情を知らない日岡は報復に乗り出した尾谷組の若い衆を逮捕してしまう。一ノ瀬は全面戦争を決意するも、大上は3日の猶予を申し出、呉原金融の上早稲二郎の首(遺体)を見つけ、加古村組を挙げることを誓う。 大上の違法捜査の証拠と尾谷組との関係を記録した日岡は、上層部に大上の不正を訴える。日岡は広島県警本部から大上の内偵のために配属されたスパイであり、上司の監察官・嵯峨(滝藤賢一)に大上の早期逮捕を訴える。しかし嵯峨は内偵を続行するよう命じ、ヤクザとの関係を綴った「大上の日記」を見つけるように言う。日岡は大上と行動を共にするうちに、14年前の抗争で五十子会幹部の金村(黒石高大)が殺害された事と、その死に大上が関与している疑惑を持つ。 大上は梨子ママと共に加古村組・吉田をラブホテルに誘い出して拘束し、陰茎から真珠を抉り取る凄惨な拷問を行う。吉田は上早稲二郎を脅迫して呉原金融の売り上げを横領させていたこと、更に金を要求された上早稲二郎が五十子会が経営する「ホワイト信金」の金庫から金を盗み出したために加古村組から制裁を受けた事を白状する。シッポを掴んだ大上は、加古村の息がかかる養豚場に向かい、そこで働く善田大輝(岩永ジョーイ)を薬物所持の疑いで引っ張る。これは捜査じゃないと止める日岡を取調室から追い出し、大上は大輝を拷問して上早稲二郎の首がとある島に埋められたことを突き止める。さっそく捜索隊が組織され、島に埋められた上早稲二郎の首と胴が発見され、苗代ら加古村組組員は全国に指名手配される。事件解決も目前と思われた矢先に、大上は安芸新聞社の記者・高坂(中村獅童)のタレコミで、吉田に対する拷問などが呉原東署長・毛利(瀧川英次)に知れたため謹慎処分となる。 猶予の3日は過ぎ、日岡は何とか抗争を止めようと奔走するが、ヤクザ相手に人脈の無い日岡は相手にされず、尾谷組は五十子会幹部を銃撃し抗争が勃発してしまう。ある夜、日岡が家に戻ると、侵入した大上がハイライトを吸いながら酒を飲んでいた。日岡は慌てて大上の不正を記録したカセットテープと日誌を片付けた。安芸新聞記者・高坂が署長にタレこんだ内容の中には、その場にいた者しか知らないはずの吉田への拷問の詳細までもが含まれていたという。 謹慎の最中も大上と日岡は抗争を止めようと説得するも、五十子会は手打ちの条件として尾谷組長の引退と尾谷組若頭・一ノ瀬の破門を突きつけ、当然聞き入れない一ノ瀬からは相手にされなかった。クラブ梨子で日岡はヤクザに深入りしすぎだと大上に忠告する。広島の2大ヤクザの抗争に巻き込まれ、大上に翻弄される日岡は、薬局の桃子の家へ行き桃子に慰めてもらう。その日を境に大上は行方不明となる。 愛媛県内に潜伏していた加古村組・苗代らが呉原東署に逮捕された時を同じくして加古村組長(嶋田久作)以下幹部が殺人罪などで大量検挙され、毛利署長は上早稲二郎殺害事件の解決を宣言するも、大上は4日間行方知れずであった。五十子会に拉致されたと考える日岡は捜索を申し出るが、嵯峨は「大上の日記」を手に入れろと掛け合わない。業を煮やした日岡は嵯峨を追求する。日岡が報告した内容を漏洩したのは嵯峨であった。 日岡は瀧井と面会し、協力を仰ぐ。ヤクザに深入りしすぎたと言う日岡に対し、大上を良く知る瀧井は、大上にとってヤクザは駒でしかなく、カタギを守ることしか頭にないと告げられる。また、日岡は梨子ママに14年前の金村殺しは大上の仕業ではないかと話すが、ママは金村を殺したのは自分であり、大上が庇ってくれたことを告白し、上層部が欲しがっていた「大上の日記」を日岡に渡す。「大上の日記」には広島県警上層部の不祥事が詳細に記されており、大上はメモを盾に警察上層部さえも抑えていたことが分かる。さらに日岡が初めから監察官であることまで記されていた。 翌日、港で大上の水死体が上がった。遺体には明らかな暴行の痕と十数か所の刺し傷があったにもかかわらず、呉原東署は記者会見で睡眠薬を飲んだ上に酒に酔って海に落ちたと報じる。大上の胃に大量の豚の糞が入っていたことを聞いた日岡は、養豚場へ行き大輝を問い詰め、必死に証拠を探し、豚の糞の中から大上が使っていた「狼のジッポー」を見つけだす。日岡と別れた直後、五十子(石橋蓮司)の説得に向かった大上は逆に拉致されリンチに遭い、拷問を受けたことを根に持つ大輝に豚の糞を食わせられ、ドスで刺され殺害されたのだ。大上を殺害する様子を話しながら半笑いする大輝に日岡は激怒し、口に豚の糞を押し込み、激しく殴り付け半殺しにする。 自宅に戻った日岡は、大上の不正を記録したカセットテープと日誌を破棄しようとする。しかし日誌は大上の手によりヤクザを挙げるために不都合な記録は黒塗りで塗りつぶされ、さらに「こういうとこがダメなんじゃ」「われの目は節穴か」と大上による注釈がビッシリと書き込まれていた。大上は日岡が監察官であると知りながらも、マル暴の刑事として育てていた。自分の死を悟った大上は、梨子ママに日岡に託すよう日記を預けていた。ダメ出しばかりの注釈の中、最後のページにはこう書かれていた。 「ようやったのう、ほめちゃるわ」 大上なりの教えと思いを知った日岡は、大上が遺したジッポーとハイライトを握りしめて号泣する。 日岡は瀧井と、広島の政財界の大物が集まる会合「やっちゃれ会」に出席する五十子会長を一ノ瀬に殺害させる計画を立てる。「やっちゃれ会」には五十子会長、瀧井夫妻のほか、広島県警本部長も参加しており、その中には嵯峨の姿もあった。五十子会長がトイレに立つのを確認した日岡は裏に回り、隠れていた尾谷組の一ノ瀬ら一派を引き入れる。トイレで一ノ瀬は五十子会長を追い詰め、日本刀で首を切断し小便器に突っ込む。一方、瀧井はカチコミに驚く嵯峨ら広島県警幹部を裏口から逃がす。待機していた呉原東署員がなだれ込み、尾谷組の若い衆の藤岡(木原真之介)が一ノ瀬の身代わりとなって殺人を自白するが、日岡は一ノ瀬に手錠をかける。
ストーリー