季語
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代表的な春の季語である「花」はもっぱらを指す。

季語(きご)とは、連歌俳諧俳句において用いられる特定の季節を表す言葉を言う。「」(冬)、「」(秋)、「」(春)などのもの。流派、結社によっては、題詠の題としたり、一句の主題となっている言葉を「季題」(きだい)と言い、単に季節を表すだけの「季語」と区別することもあるが、両者の境は曖昧であり互いを同義に用いることも多い[1](詳細は後述)。「季語」「季題」いずれも近代以降に成立した言い方であり、古くは「季の詞(きのことば)」「季の題」「四季の詞」あるいは単に「季(き)」「季節」などと呼ばれていた[2]。以下では特に説明のない限り「季語」で統一して解説する。
歴史「紅葉」「月」はどちらも秋の季語。「花」「ほととぎす」「雪」とともに「五箇の景物」とされた

日本の詩歌において季節は古くから意識されており、『万葉集』の巻八と巻十、『古今和歌集』の最初の六巻はそれぞれ季節によって部立てがされている。季語が成立したのは平安時代後期であり、能因による『能因歌枕』では月別に分類された150の季語を見ることができる。五番目の勅撰和歌集『金葉和歌集』では、それまで季節が定められていなかった「」が秋の景物と定められ、以後「」(季語ではのこと)(春)、「ほととぎす」(夏)、「紅葉」(秋)、「」(冬)とともに「五箇の景物」と言われ重要視された[3]

鎌倉時代連歌が成立すると、複数の参加者の間で連想の範囲を限定する必要性から季語が必須のものとされた[4]。発句(連歌の最初の五七五の句)は必ずそのときの季節に合わせて詠むべきものとされ、南北朝時代の『連理秘抄』(二条良基)では40ほど、室町時代の『連歌至宝抄』(里村紹巴1627年)では270ほどの季語を集めている[2]。また連歌の時代からは季語の本意・本情(ほんい、ほんじょう。和歌以来受け継がれてきた、その季語にまつわる伝統的な美意識のこと)が問われ盛んに議論されるようになった[5]

江戸時代俳諧が成立すると、卑近な生活の素材などからも季語が集められて著しく増大した[2]。俳諧の最古の季題集『はなひ草』(野々口立圃1636年)には590、『山の井』(北村季吟1648年)では1300、『俳諧歳時記』(曲亭馬琴1803年)では2600の季語が集められている[6]。芭蕉の正門俳諧では、漢詩、和歌以来の伝統的な季語を「竪題」(たてだい、縦題とも)、俳諧からの新しい季語を「横題」(よこだい)とも言い、松尾芭蕉は「季節(注:ここでは季語のこと)の一つも探り出したらんは、後世によき賜(たまもの)となり」(『去来抄』)として季語の発掘を推奨した[7]

明治時代に俳句の近代化を行った正岡子規は、十七字という俳句の短さに対して、季語によって起こる四季の連想が重要な役割を果たすと考えた(『俳諧大要』)。子規の考えを受け継いだ高濱虚子は、俳句の主題は四季を反映した自然(ならびにそれを反映した人事・生活)であるべきことを説き(花鳥諷詠)、無季俳句に対して厳しい態度を取ったが、昭和初期に起こった新興俳句運動は都会や戦争など社会的素材を扱い積極的に無季俳句を容認した[8]。明治時代に西暦が導入されると、旧暦の季節感と西暦の季節感とのずれが生ずることになった。そのため正月の季語は「新年の季語」として別の扱いとされた。

さらに外地が拡大していくに従い、椰子水牛[9]などの各地の風物や年中行事が季語として取り入れられるようになり、北海道沖縄県台湾、また日系人の多いブラジルハワイ州などで独自の歳時記が編纂されるようになった[10]

新しい季語は近代以降も、俳人が俳句に取り入れ、それが歳時記に採集されるという形で増え続けており、現代の歳時記ではおおむね5000を超える数の季語が収録されている[2]

ただし、現在は公式に季語を認定する機関は存在しない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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