最高裁判所判例
事件名固定資産税等課税免除措置取消(住民訴訟)請求事件
事件番号令和1(行ツ)222号
2021(令和3)年2月24日
判例集民集 第75巻2号29頁
孔子廟訴訟(こうしびょうそしょう)は、沖縄県那覇市が孔子廟のために都市公園内の土地を無償提供したことが、日本国憲法の政教分離に反するとして、市長による公園使用料の全額免除措置の無効と利用料の請求を求めた訴訟である[1][2]。
最高裁判所は、2021年に憲法20条3項に反するとして公園使用料の全額免除は違法との違憲判断を下した。目次 久米至聖廟(本件の「孔子廟」)は、元々17世紀に建てられたが第二次世界大戦で焼失し、那覇市内に再建されていた[3]。琉球王国時代に中国から渡ってきたとされる人たちの子孫らの団体(久米崇聖会)は、「ゆかりの地に回帰させたい」として2013年に松山公園に久米至聖廟を移転し、その際に市は公園への設置を許可した[3]。市は「体験学習施設」にあたると公益性を認め、年576万円となる公園の敷地の使用料を全額免除していた[3][4]。 住民が政教分離に反するとして、市長による公園使用料の全額免除措置の無効と利用料の請求を求めて訴えた。訴えに対し、市は「沖縄の歴史や文化を伝え、観光にも活用される公共的な施設だ」と主張していた[5]。 最高裁の判決では、久米至聖廟の観光資源としての意義や歴史的価値をもって無償提供する合理性はないと指摘の上で、「この施設で行われる祭礼は、孔子を歴史上の偉大な人物として顕彰するだけでなく、霊をあがめ奉る宗教的意義のある儀式で、施設には宗教性がある。市が特定の宗教に対して特別な便益を提供していると評価されてもやむをえない」と指摘した[5][6]。また、年576万円の使用料を免除された久米崇聖会の利益は「相当に大きい」として、公園使用料の免除は政教分離を定めた憲法に違反するとした[5][6]。また、公園使用料の一部減額ができるとした2審の結論を認めず、市に公園使用料を全額請求するように求めている[6]。今回の判決は、裁判官15人のうち14人の多数意見であった[6]。 佐々木弘通(東北大学教授・憲法)は、今回の判決を「施設の設置許可自体も違憲だとほのめかして」いるとして高く評価している[3]。 林景一裁判官は、判決の反対意見にて「もはや宗教性がないか,既に希薄化していると考えられる中で,外観のみで,宗教性を肯定し,これを前提に政教分離規定違反とすることは,いわば「牛刀をもって鶏を割く」の類というべきものである。」と、孔子らの言行を記録した「論語」陽貨からの成句「牛刀をもって鶏を割く」を用いた。林裁判官は、年500万円以上にも上る使用料を全額免除したこと自体については「公的支援として過ぎたるものではないかという違和感を覚える」としながらも、政教分離に反しないため無効とは判断しないとしている[2]。 原告側代理人の弁護士は、他の孔子廟については今回の判決が影響することはないと表明している[7]。 大法廷は、歴史的・文化財的な価値や、観光資源などとしての意義があれば、施設に宗教的性格があっても「公有地の使用料が免除される場合もあり得る」としている[7]。佐々木弘通(東北大学教授・憲法)は、他の施設についてはそれぞれの実情に合わせて判断するので、今回の判決の影響はほぼないとしている[3]。
1 概要
1.1 反対意見
2 他の施設への影響
3 関連訴訟
4 関連項目
5 脚注
6 外部リンク
概要
反対意見
他の施設への影響
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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