子宮頸がんワクチン
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この項目では、ヒトパピローマウイルスの感染予防ワクチンについて説明しています。治療目的で開発されているワクチンについては「HPV治療ワクチン」をご覧ください。

ヒトパピローマウイルスワクチン
ワクチン概要
病気ヒトパピローマウイルス
種別サブユニット
臨床データ
胎児危険度分類

US: B




法的規制

US: ?-only

投与経路注射
識別
ATCコードJ07BM01 (WHO)
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各国のHPVワクチン接種プログラム対象女子の接種率[1][2]国接種率 (%)
コロンビア87
マレーシア87
イギリス86
デンマーク82
スウェーデン80
オーストラリア73.1
メキシコ67
UAE59
ニュージーランド56
アメリカ40
フランス17
日本0.3

ヒトパピローマウイルスワクチン(HPVワクチン、HPV予防ワクチン)は、特定のヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus:HPV)の感染を予防するワクチンである[3][4]

WHOは、2006年から2017年までに、2億ドーズ(接種)以上のHPVワクチンが世界中で幅広く使用され、ワクチンの安全性に関する諮問委員会(GACVS)では当ワクチンの安全性に関して評価を行い、これまでのところ推奨の位置付けを変更する安全上の問題は判明していないと表明している[5][6]。約125カ国でHPVワクチンが導入され、世界の9歳から14歳の少女の3人に1人が接種を受けられる[7]。WHOは男児や年配女性などの二次的な対象へのワクチン接種は、実行可能かつ手頃な価格の場合に推奨している[8]。2023年現在までに2億7000万人以上に接種されているが、一方で2020年には34万2000人の女性が子宮頸がんで死亡しその90%が低・中所得国に住んでいた[9]

HPVは、尖圭コンジローマまたは子宮頸癌肛門癌中咽頭癌などのや,喉頭気管乳頭腫症の発生に関係し、HPVワクチンには2価「サーバリックス」(GSK)、「4価ガーダシル」(MSD)、9価「シルガード9」(MSD)の3つがあるが、4価か9価を初めての性行為での感染前に接種を済ませておけば、子宮頸がんと共に予防可能である。世界的にみると、HPV16型およびHPV18型が子宮頸がん全体の約70%を占めている[10]

HPV罹患は、性行為及び分娩時のHPV産道感染の可能性が指摘されているが、母子の遺伝子系が異なるなど未知の感染経路もあり、また レーザー治療煙で医療者が感染する場合もある[11][12]。多くは性行為で早期に感染し、長期間体内に潜伏する[13]。2023年ランセット掲載の35か国での調査では男性の3人に1人がHPV保有者であり5人に1人がハイリスクHPVであった[14][15]。39カ国以上で男性も定期接種対象になっている[16]

アメリカ合衆国では、アメリカ食品医薬品局(FDA)が、45歳までの男女に予防接種を推奨している[17]。接種は小児または婦人科できるが、HPVウイルスは100種以上存在[18]し全てがワクチンで防げないため、ワクチン接種後も子宮がん検診も推奨されている[19]。同ワクチンは男性に多いHPV由来中咽頭癌への予防効果もある[20]

日本では予防接種法でA類疾病に位置付けられ、法第9条で予防接種の対象者・保護者は予防接種を受ける努力義務が課せられている。国は副反応の報告を受け2013年6月から定期接種は継続するものの積極的勧奨は中止していたが、特段の懸念が認められないことから2021年11月にそれを再開した[21]。定期接種以外に積極的勧奨中止の影響を受けた世代に対し2025年3月までに限りキャッチアップ接種が行われ[22]、2022年度には30万人が第1回接種を受けた[23]。キャッチアップ接種の場合は、同法の保護者同意は16歳未満に限るため保護者の同意は不要[24]。日本での2022年度定期接種第1回目接種数は225,993人、実施率は42.2%であり[23]、これは積極的勧奨中止前の2013年98,656人、実施率17.2%を越え過去最高数となっている。ただし、2022年度接種実績をふまえた生まれ年度ごとの累積初回接種率が厚生労働省の部会で示され、積極的勧奨再開前から徐々に上昇しているものの、定期接種、キャッチアップ接種とも、緊急促進事業当時ほどには接種が拡がっていないと報告された。2005年生まれが31.6%であるものの一桁台も複数ある[25][26][27][28][注 1][注 2]。接種数は増加傾向にある[29]。なお、積極的勧奨中止により2000年前後生まれの女性は生涯で子宮頸がんに2万人以上超過罹患し、5千人以上超過死亡すると複数の研究が明らかにしている[30][31]

世界保健機関(WHO)は2022年、ワクチンの単回接種は、2回接種と同等の有効性があると発表した[32][33]。厚生労働省は2023年4月からシルガード9を定期接種を開始した[34]。また2023年2月同省専門部会で15歳未満は2回とする方針が了承された[35]が、引き続きそれ以外は3回接種となっている[36][37]。オーストラリアは2023年2月をもって、9価ワクチン定期接種を2回から単回に変更した[38]。同国とスコットランドに続きイギリスも2023年9月に単回接種となる[39]。オーストラリアは2035年に、イギリスは2040年までに子宮頸がん撲滅の目標設定をしている[40]。2008年定期接種を開始したスコットランドでは、定期接種完了者で子宮頸がんの症例は検出されておらず[41]、ノルウェーでもHPVワクチン接種後の同がん症例なしと報道している[42]。タイでは女性の死亡要因1位である子宮頸がんを防ぐため、2023年12月までに220万人がHPVワクチンを接種済であり、スクリーニングキャンペーンも実施した[43]。台湾の台北市は女子中学生に対する政府資金によるHPVワクチン接種率は91%となり、2024年から男子接種を開始する[44]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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