子ども有害情報からの子どもの保護に関する法律
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青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」とは異なります。

青少年有害社会環境対策基本法案(せいしょうねんゆうがいしゃかいかんきょうたいさくきほんほうあん)は、2000年(平成12年)に自由民主党が作成した日本の法律案である。2002年(平成14年)に国会への上程を予定していたが、世論の強い反対にあい提出することを断念した。青環法(「せいかんほう」、又は「あおかんほう」)案と略される。その後、2004年(平成16年)と2014年(平成26年)に、内容を修正した青少年健全育成基本法案が国会に提出されたが、いずれも審議されないまま廃案となっている。
概要

自由民主党所属の参議院議員を中心に、1999年平成11年)より起案が進められ、2000年(平成12年)に「青少年社会環境対策基本法」の名義で第一次草案が公表された。その後「有害」の二文字が追加され、2002年(平成14年)の第154回国会への法案提出が予定されていたが、個人情報保護法人権擁護法と並ぶ「メディア規制三法」との激しい世論の批判に晒され、提出断念に追い込まれた。この法案は、中曽根弘文が仕掛け、田中直紀(青少年有害社会環境対策基本法案推進小委員会委員長)に法案のとりまとめを振ったと言われている[1]

その後、2004年(平成16年)の第159回国会では、各業界ごとの青少年有害社会環境対策センター設置や、自主規制基準制定に関する部分などを除去した(「除去された箇所は、後で改めて立法する」とされる)「青少年健全育成基本法案」[注 1]参議院へ提出された[2]。法案の提案者は、中曽根弘文(元文相)外3名である[2][注 2]。しかし、付託委員会すら決定されない(参議院には衆議院と異なり、青少年問題に関する特別委員会は設置されていない)まま、審議未了で廃案となった。

2014年(平成26年)の第186回国会では、子ども・若者育成支援推進法の改正案として、「青少年健全育成基本法案」[注 3]が参議院へ提出された。法案の提出者は中曽根弘文ほか4名である[注 4]。上記の通り、中曽根は2004年の時の法案提出者でもある。同国会に提出された[注 5]が、審議されないまま廃案になった[3][4]。2014年の時は、既存の法律である「子ども・若者育成支援推進法」を、その基本理念を含めて全面的に書き換え、全く別の法律に変えようとする異様な手段がとられた[5]
青環法案をめぐる政党の動き
自民党内の動き(1998年-2000年)

2000年(平成12年)の自民党による「青少年社会環境対策基本法案」の背景には、1997年(平成9年)に起こった神戸連続児童殺傷事件と、中曽根弘文の2つの要因がある[6]。事件発生時、自民党政審会長だった中曽根は、第142回国会予算委員会[注 6]において、少年犯罪多発の要因がテレビやアニメ、ゲームなどであると主張、小里貞利総務庁長官に対して「青少年保護法」を制定しろと要求したのが、「法案」の動きのきっかけである[6]。中曽根の実際の質問は以下のようなものだった[7]。.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}次に、青少年の保護法関係を質問いたします。

 少年犯罪の多発の原因はいろいろありますけれども、少年たちの情報源となっているテレビや雑誌、アニメあるいはテレビゲームなどの影響はかなり強いものと思います。日本PTA全国協議会が行いましたアンケートでは、八八%の父兄がテレビやマスコミの情報が悪影響を及ぼしていると回答しております。これら有害なものから子供たちをいかにして守るか、これもみんなで真剣に考えなければなりません。 現在、各都道府県におきまして青少年保護育成条例等を制定していますけれども、その状況はどういうふうになっていますでしょうか。総務庁長官、お願いします。各地の市町村議会で、青少年保護法の制定を求める決議が今次々と採択をされております。私の地元の群馬の町村からもかなりの数の要請が来ております。規制項目も各省庁の所管にまたがるものでありますので工夫が必要とは思いますけれども、こうした青少年問題に関する重要な対策は、都道府県にすべてお任せするのではなくて、政府が青少年保護の基本的な理念や目的、方針などを示すと同時に、規制項目のうち重要なものかつ共通したものについては一元化をして青少年保護法というようなものを制定すべきと考えております。各国にもこのような法律があるようでございますけれども、諸外国の例なども調査されまして、参考にしながら青少年保護法の制定にぜひ取り組んでいただきたいと思います。 総務庁長官のお考えを再度お聞かせください。基本法と保護法と二つ考え方がありますし、両方盛り込んだものも考えられます。基本法は理念とかそういうものが中心となると思いますが、これだけ子供のいろいろな事件が多発しておりますので、今申し上げたように各県でばらばらになっております有害図書や有害玩具や有害薬品等に対する規制というもの、これは私はある程度国で一元化して統一して規制なりをすべきと、そういうふうに思っております。検討していただけるということでございますが、ぜひよろしくお願いをいたします。

小里総務庁長官の回答は「私は、先ほど議員から御指摘がありまするように、保護育成に関する基礎的な要諦あるいは事項につきましては、何らかの形できちんと整理を進める方向で検討はしてみたい、さように思っておる次第でございます。」というもので[7]、制定すると確約はしないものの、検討を約したので自民党は「青少年保護育成法案」作成に乗り出すことになった[7]

政府は、この問題について青少年問題審議会(青少審)に諮問、青少審(石川忠雄会長)は1999年(平成11年)7月22日[8]に答申「『戦後』を超えて―――青少年の自立と大人社会の責任」をまとめた[6]。この答申では、有害環境の対策などを含んだ青少年育成基本法の制定を提言していた[6][注 7]。さらに、この答申を根拠にして、中曽根文弘の肝いりで、参院自民党の政策審議会の中に青少年問題検討小委員会が設置された[6][注 8]

このパターン(規制推進派が政府に働きかけ、政府は中青協(中央青少年問題協議会、青少審の前身)に諮問して「青少年保護育成基本法」を推進せよとの答申を出させ、それを理由にして法案を作成する、または検討を行うというパターン)は、1954年(昭和29年)以来何度も繰り返されてきたものである。


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