子どもの貧困
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OECD各国の児童の貧困率。再分配後の世帯所得が中央値の50%以下と定義

子どもの貧困(こどものひんこん)とは、必要最低限の生活水準が満たされておらず心身の維持が困難である絶対的貧困にある、またはその国の貧困線(等価可処分所得の中央値の50%)以下の所得で暮らす相対的貧困にある17歳以下の子どもの存在及び生活状況を言う[1][2]

世界銀行が定める国際貧困ラインは一日1.9ドル未満であり[3]、世界中で、子どもの約3人に1人(およそ6億6,300万人)が栄養、生活な水を欠く貧しい世帯に住んでいる[4]。2020年5月、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年末までに貧困下の子どもが15%増加、最大8,600万人の子どもが新たに貧困に追い込まれる恐れがあるとする分析を国連児童基金とセーブ・ザ・チルドレンが公表している[5]

日本での対策財源については「子供の未来応援基金」などが当てられている。ところで地方自治体には歳出歳入外現金として、処分もできず管理だけしていく死亡者の遺留金は20政令指定都市で約10億円にのぼる財産があり法整備がなされなければ継続保管しかない[6]。OECDや厚生労働省調査の相対的貧困率には等価可処分所得の中央値の50%が使用されている。この50%という数値は絶対的なものではなく、40%や60%を用いる場合もあり、EUは公式の貧困基準のひとつに中央値の60%を使用している[7]。子どもの相対的貧困率については、発表主体、統計利用データ年次によって変動する。本ページでは日本国内における相対的貧困状態の子どもについて記述する。
定義と統計
OECD「貧困線#相対的貧困」も参照

経済協力開発機構は2008年10月に「Growing Unequal? Income Distribution and Poverty in OECD Countries」で子どもの相対的貧困率を公表。2005年の日本の子どもの相対的貧困率は14%であった[8]。世界的には、より母親が働いている国では子どもの貧困率が低く「労働は貧困を減らす」というデータも同報告書には掲載されている。2005年の日本の母親の就業率は52.7%で、24か国中の平均を下回っている[9]

日本ではひとり親の相対的貧困率が高く、無職では60%で30か国中ワースト12位と中位であり、有業のひとり親の相対的貧困率については58%で諸外国中ワースト1位だった[8][10]。2012年1月27日公表の2008年現在データでは、ひとり親無職の相対的貧困率は52.5%で、有業では54.6%と働いているほうが貧困率が高くなっている[11][12]

このため、キャロライン・ケネディ駐日アメリカ合衆国大使(第29代)からは「日本は、仕事をすることが貧困率を下げることにならない唯一の国」と評されている[13]。2009年には所得再分配後の子どもの相対的貧困率は15.7%となっている[14]

ただし、平成28年4月28日の参議院厚生労働委員会にて福島瑞穂議員がOECDの子どもの貧困でデータが示されない理由を尋ねたところ、厚労省は、相対的貧困率はOECDで定めて定義に基づき各国で数字を出すが「一応私どもはその定義に基づいた数字を使って算出をして先方とのデータのやり取りをしておりますが、OECDの基準自体が、各国、それぞれ国が違ったり制度が違ったりするので、何といいますか、技術的な面で調整というかそろわないところがあります」と明かし、「何度も先方から修正ですとか追加の作業の依頼がありまして、これは二十六年十月以降、何回かやり取りをしております」という中で「現在そのデータをやっている中で若干、何といいますか、異常値が出ていまして、例えば就業者がいる世帯の方が貧困率が高く出るとか、ちょっといろいろそういう問題がありまして、更に今向こうと調整をしております」「これは、調整が完了し次第、OECDの方には出したいと思っておりますが、(中略)ここはできるだけ正確を期して登録をしてまいりたい」[15]と答弁しているため、先の有業者の相対的貧困率が無業者を超えていることは異常値であり、遡及して補正が入る可能性がある。

OECDの統計データによれば、2018年の子どもの相対的貧困率は日本で約14.0%であり、OECD諸国35カ国(2018年以後に加盟したリトアニアコスタリカ含む)の中で11番目に高く、先進国の中でイスラエルアメリカスペインイタリアルクセンブルクニュージーランドに次いで7番目に高い国であった[16]

内閣府は、OECDによる国際比較研究においては、日本に関するデータは「国民生活基礎調査」が用いられており、ジニ係数や再分配効果が大きくなりやすいことに注意が必要と指摘している[17]
国連児童基金

国連児童基金(ユニセフ)では日本を含む先進35ヶ国を対象に調査し、『Report Card 10-先進国の子どもの貧困(Measuring child poverty)』を2012年5月公表。日本の子どもの相対的貧困割合は、14.9%(約305万人)。35ヶ国の中で、相対的貧困率の高い方から9番目にランクされている。ただし、貧困率を可処分所得の50%でなく40%や60%で試算した結果も掲載があり、その場合には貧困率及び国際順位が変動している[18]。2016年報告書『子どもたちのための公平性』では、日本は所得格差で下位だった[19]
日本(厚生労働省)「貧困線#国民生活基礎調査による相対的貧困率」も参照

厚生労働省国民生活基礎調査の一環として実施。貧困率は、OECDの作成基準に基づいて算出している。令和3年(2021年)の「子どもの貧困率」(17歳以下)は10.6%となっている[20]。記録のある昭和60年(1985年)以降において増加傾向にあったが、最も高かった平成24年(2012年)の約16.3%をピークに減少し、令和3年(2021年)は昭和60年(1985年)以降で2番目に低い貧困率となった。なお、ひとり親世帯に関しては、平成9年(1997年)の63.1%を境に減少傾向にあり、令和3年(2021年)は44.5%と昭和60年(1985年)以降最少の貧困率であった。

貧困率の算出方法は2018年以降と2015年以前では違いがあり、前者は「非消費支出」に「自動車税軽自動車税自動車重量税」、「企業年金個人年金等の掛金」及び「親族や知人などへの仕送り額」を加えているのに対して、後者は加えて算出していない。そして、両者の算出方法でそれぞれの貧困率を出している2018年調査によれば、前者の方が貧困率が加えない場合より約0.3%ほど高かった。

また、都道府県別の統計は公表されていないが、各世帯から集められた個票は全て都道府県を通じて厚生労働省に報告される[21]ため、各府県で自地区の結果は把握が可能である、または厚生労働省から匿名データの提供を受けること[22]により都道府県レベルでは分析が可能である。しかしながら、阿部彩によると「(日本の2012年における貧困率の)16.3%の元データである「国民生活基礎調査」にて、都道府県別集計ができれば少なくとも都道府県レベルの貧困率がわかります。しかし、都道府県別ではサンプル数が少なくなるため、厚労省ではこの集計をしていません。」[23] との見解が示されている。

2012年度厚生労働省白書では、2000年代半ばまでのOECD 加盟国の相対的貧困率について日本が加盟国中大きい順から4位であったこと、うち子どもの貧困率は13.7%と30か国中ワースト12位である[24]と記載されている。
日本(総務省)「貧困線#全国家計構造調査(旧全国消費実態調査)(総務省)による相対的貧困率」も参照

総務省「全国家計構造調査」(旧全国消費実態調査)で公表している。2016年安倍首相が子どもの相対的貧困率が改善したと発言したが、この数値をもとに発言している[25]とされている。
子どもの貧困に関する概要

政府の貧困に関する統計「低消費水準世帯」の推計は、1965年を最後に打ち切られていた。その後長年にわたり貧困の定義と測定を持っていなかったとの指摘がある[26]。なお、政府統計うち相対的貧困率を算出している調査としては、総務省「全国消費実態調査」と厚生労働省「国民生活基礎調査」があり、調査対象、手法等が異なっている。この結果、両調査の相対的貧困率を世帯主年齢別、世帯類型別に比較すると、ほとんど全ての区分で国民生活基礎調査の相対的貧困率が全国消費実態調査に比べて高くなっている[27]阿部彩によると、相対的貧困率については、貧困線より高い所得者は考慮しないため「格差」の問題ではなく、また国や地方団体の政策によって変動するため所得差があっても相対的貧困率は減らせないものではないとされている[28]。なお、山形大准教授の戸室健作は「就業構造基本調査」のデータなどを分析し、都道府県別の「子どもの貧困率」を独自に算定した[29]


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