嫌われ松子の一生
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この項目では、山田宗樹小説について説明しています。

同小説を原作とした映画については「嫌われ松子の一生 (映画)」をご覧ください。

テレビドラマについては「嫌われ松子の一生 (テレビドラマ)」をご覧ください。

嫌われ松子の一生
著者山田宗樹
発行日2003年平成15年)
発行元幻冬舎
ジャンル小説
日本
言語日本語
形態上製本文庫本
ページ数381
コードISBN 4-344-00285-7

ウィキポータル 文学

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『嫌われ松子の一生』(きらわれまつこのいっしょう)は、山田宗樹小説。後に映画、テレビドラマ、舞台化された。本項では原作について説明する。
概要

ある事件で中学教師の職を追われた女性が、過酷な運命に翻弄されながらも愛を求め、まっすぐに生きた人生を描いたミステリー。小説では女性の甥が、彼女の知り合いである元殺人犯の男やかつての友人に出会い、女性の生涯を炙り出しており、二人の視点から見た物語が交互に進められている。

2003年に幻冬舎より発表され、文庫も含め発行部数は公称120万部。

2006年には、原作を読み感銘を受けたという中島哲也監督によって映画化。原作とは異なる視点からの物語を描いた。2006年10月から内山理名主演でテレビドラマ化されている。

2010年4月には葛木英の脚本・演出により長谷部優主演で舞台化、2016年には乃木坂46桜井玲香若月佑美のダブルキャストによる主演で舞台化作品が上演された[1]。2019年には森岡利行の脚本・演出により階戸瑠李主演で舞台化した。また、2012年に学生演劇も行われている。
あらすじ

東京で生活している大学生・川尻笙は、突然上京してきた父・紀夫から、三十年前に家を飛び出した伯母・川尻松子が、最近東京で殺害されたことを聞かされる。父からの依頼で松子が住んでいたアパートに出向き、部屋の後始末をすることになった笙と恋人の渡辺明日香は、松子がどのような生活をしていたのかに興味を持つ。そして、警察が松子殺しの犯人として追いかけていた、元殺人犯の男と出会うことから、松子が歩んできた壮絶な人生を知ることになる。
登場人物

年齢は原作の舞台になっている2001年7月現在のもので、映画およびテレビドラマでは設定が異なる個所がある。
主要人物
川尻 松子(かわじり・まつこ)
本作の主人公。53歳。東京のアパートそばの河原で遺体で発見された女性。周囲の住民からは「嫌われ松子」と呼ばれていたが、実は壮絶な人生を送っていた。詳細は該当項目を参照。
川尻 笙(かわじり・しょう)
松子の甥。19歳。東京で大学生活を送っている。伯母の存在を知らず、他人同然と思っていたが、警察が松子殺しの犯人として追いかけていた男と遭遇したことから、松子が歩んできた人生をたどることになる。松子の人生を知るうちに、彼女に対する気持ちの変化が起き、自分の人生を見つめなおしていく。最終章では被告人の初公判を傍聴。被告人の発言に逆上し、退廷を命じられた。実は5歳の時、松子が15年ぶりに帰郷したときに一度だけ会ったことがある。なお、小説では松子の人生をたどる現在シーンの語り部で、もう一人の主人公として描かれているが、映画やテレビドラマでは松子の人生にスポットライトを当てている関係で、存在が薄くなっている。
龍 洋一(りゅう・よういち)
45歳。松子が中学校の教師をしていたころの教え子であり、最後の恋人。松子を不幸と転落の人生へと導いた元凶の一人。笙にとっては中学校の先輩にあたる。現在は教会で牧師の手伝いをしている。松子殺しの容疑で追いかけられており取調べを受けたが、アリバイが成立して釈放されている。松子が死んだことにとてもショックを受けていて、最期を遂げたアパートの中で慟哭していた。幼い頃に父親が不審な死を遂げていて、母の手ひとつで育てられた。血の繋がりがない妹がいる。人となじめない性格で仲間から外れて行動していた。中学生のころには、問題児の烙印をおされて、修学旅行のときに、松子が教師の座を追われる原因となった窃盗事件を起こす。家にきて白状するよう促した松子に対してシラをきり、松子が脅迫してきたと学校に通報する(これが原因で松子は職を追われる)。その後は傷害事件を起こして少年院に入り、出所後は東京で覚醒剤の密売をするなど、極道を歩む。一方で密売の現場を押さえられたことから、スパイとして厚生省の麻薬取締役官(池谷)に報告を入れ、自らも覚せい剤を使用していた。組長の愛人が行きつけていた美容室「あかね」で松子と偶然再会、自分が松子をとても愛していることを告げ同棲生活をはじめるが、松子に覚醒剤の密売をしていることを突き止められ、気絶するまで暴力をふるってしまう。それでも自分と過ごすことを選んだ松子に心を動かされ、密売から足を洗う決意をするが、スパイであることが組織にばれて、追われる身となる。殺される寸前で警察につかまることで組織からは逃れられたが、出所を待っていた松子の一途さに恐ろしさを感じて、松子から離れる。心の弱さから再び覚醒剤に手を染めて、妄想の中、人生を狂わせた張本人である田所文夫を殺害、14年間服役する。面会に訪れた田所の孫娘の言葉に戸惑いを覚えるも、聖書に書かれていた言葉の真意を、教誨(刑務所の宗教教育)の牧師に諭されて、田所の孫娘や松子に神が宿っていたことを悟る。出所後は松子を探して人生を狂わせたことへ謝罪をするために、内田あかねを通して、沢村めぐみに会うが、松子が住んでいる場所は突き止められなかった。最終章では被告人の初公判を笙とともに傍聴している。
渡辺 明日香(わたなべ・あすか)
笙の恋人。19歳。長野出身。笙の話では、声がそっくりの姉がいる。生化学の講義でメモを英語でとっていたのを笙に見られ、そのころからの付き合い。半同棲生活を送っている。松子の存在を知って以降、松子の人生を知りたいと思うようになり、笙に対する態度が変わってしまう。しかし、洋一が落としていった聖書を教会に届けにいって、お祈りを捧げたあとで、突然帰郷する。実は幼少のときに母親が蒸発しているので、自然に松子と自分の母親をダブらせて考えていた。数日後に東京に戻って来るが、そこで自分の夢である医者になるために、今の大学をやめて医学部を受け直して、笙と別れることにした。洋一とは最初に遭遇して以来、一度も会っていない。
沢村 めぐみ(さわむら・めぐみ)
49歳。旧姓は東(あずま)。アダルトビデオに出演するタレントを抱える芸能事務所「サワムラ企画」の取締役社長。2児の母親でもある。見た目は30歳くらいに見えるという。20代に傷害の罪で和歌山の女子刑務所に服役。松子とは同じ雑居房にいたことがあり、そのころからの親友。刑務所では男役として人気があり、ラブレターを多くもらっていた。看守に見つかっても誰からもらったかを決して語らなかったため、懲罰房行きになることもあった。出所後はモデルおよびダンサーとして活動し、タレント事務所と契約。この事務所の社長と結婚する。事務所が軌道に乗るまでは、秘書としてマネージメントをする一方、水沢葵(みずさわ・あおい)の芸名でAV女優として破格のギャランティをもらう。夫を病気で亡くした後は自らが社長となり、辣腕を振るっている。出所後の松子とは「あかね」で再会。松子を美容師として高く評価していたが、洋一に暴力をふるわれ、美容院を休みがちになった松子のアパートを訪れた際に、喧嘩別れしてしまう。松子が死んだ当日、病院で18年ぶりに偶然再会した時に専属の美容師として雇おうと名刺を渡す。松子を最後まで信じていた人物である。
内田 あかね(うちだ・あかね)
美容室「ルージュ」オーナーで創業者。60歳は超えていると思われる「大先生」。以前は「あかね」という名前の店名で、松子を雇っていたことがある。受刑者が職業訓練に使っている美容室と同じ名前であったため、受刑者がよく訪れていたという。親会社の方針が気に入らず、一人パリで修行を積む。カットコンテストの常連で何度も優勝したことがある。松子が店にきた当時はスタッフの募集はしていなかったが、松子の熱意に押され、テストを行い採用した。前科持ちであったことで断ろうとは決して思っていなかった。美容室を休みがちになった松子を訪ねにアパートを訪れ、部屋が荒らされているのを発見、その後松子が逮捕されてしまい、以降関係は切れている。その後、松子を捜していた龍洋一を不憫に思い、沢村めぐみに連絡していた。
川尻 紀夫(かわじり・のりお)
笙の父親。51歳。松子の弟。現在も大野島で生活している。若い頃は違ったが、現在は笙や兄弟、両親と異なり、筑後弁を使用している。松子の事に関しては、「どうしようもない姉」と語ったきり、多くを話そうとはしなかった。松子が家を出た後、家庭が崩壊していくのを目の当たりにしており、結婚して家庭を作り直そうとする。松子が八女川と生活していた当時、金を工面するためデパートの屋上で再会するが、そこで父・恒造が亡くなったことを話し、手切れ金を渡し、松子との縁を切る。また、松子が40歳の時にアパートを追われ大野島に戻ってきた際は、佐賀駅に車を飛ばし、冷たく追い返してしまう。家族の誰にも松子の存在をいないことにしていた(紀夫の妻・つまり笙の母は、雄琴に行く前の松子に会っている)。
川尻家
川尻 恒造(かわじり・こうぞう)
松子の父。市役所の総務課に勤めていた。久美が大病を患ったあとは滅多に笑わなくなり、久美のことを気にかけ、松子には厳しくあたってしまう。しかし、実際は久美だけでなく松子のことも気にかけており、ひそかに日記をつけ、松子からの連絡を待っていた。松子が失踪して三ヵ月後、脳卒中で倒れ亡くなった。享年51歳。
川尻 多恵(かわじり・たえ)
松子の母親で専業主婦。松子が出て行った後は老け込んだが、紀夫、紀夫の妻、笙(5歳の頃)と暮らしていた。現在も生きているのかどうか小説では明らかにされていない(ドラマでは健在である事が明示されている)。
川尻 久美(かわじり・くみ)
松子と紀夫の妹。3歳の時に大病を患い、入退院を繰り返していた。松子をとても慕っていたが、松子が家を出たあと、精神的ショックから病気になる。以後は紀夫の家族とともに過ごしており、笙が5歳のときまで一緒に生活していた。14年前(34歳くらい)、肺炎を起こし亡くなる。松子にとっては両親の愛を独占された相手であるとともに、最後にすがりたい相手でもあった。最期の言葉は、「姉ちゃん、おかえり」。
松子と関係を持った男たち
八女川 徹也(やめかわ・てつや)
蒸発した後、松子が最初に好きになった男。太宰治が玉川上水に入水した翌日に生まれていることと、『人間失格』を読んで、
太宰治の生まれ変わりと思い込んでいる。松子がパーラーのウェイトレスをしていたころの常連で、松子の部屋に上がりこみ同棲を始める。アルバイトを辞め、文学一筋に生きることを決意するが、定職につかず、松子をソープランドで働かせようとしていた。また、酒癖が悪く、松子にしばしば暴力を振るっていた。その文才には岡野も嫉妬していたほどだったが、松子がお金を工面した当日、電車に飛び込み自殺した。
岡野 健夫(おかの・たけお)
八女川の親友かつライバル。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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