婚外子相続差別訴訟
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最高裁判所判例
事件名遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件
事件番号平成24(ク)984
2013年(平成25年)9月4日
判例集民集第67巻6号1320頁
裁判要旨

一 民法900条4号ただし書前段の規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していた。
二 民法900条4号ただし書前段の規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたとする最高裁判所の判断は,上記当時から同判断時までの間に開始された他の相続につき,同号ただし書前段の規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない。
大法廷
裁判長竹ア博允
陪席裁判官櫻井龍子竹内行夫金築誠志千葉勝美横田尤孝白木勇岡部喜代子大谷剛彦大橋正春山浦善樹小貫芳信鬼丸かおる木内道祥
意見
多数意見全会一致
意見金築誠志、千葉勝美、岡部喜代子
参照法条
憲法14条1項、憲法81条、民法900条
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婚外子相続差別訴訟(こんがいしそうぞくさべつそしょう)とは男女間に生まれた婚外子(非嫡出子)の遺産相続の取り分を結婚した男女の婚内子(嫡出子)の半分とする民法第900条第4号但し書きの規定について、平等権を規定した日本国憲法第14条に違反するとして争われた訴訟。
概要
事件と下級審
東京都の男性の相続の例
2001年7月25日に東京都の男性が死亡し、婚内子(嫡出子)3人と婚外子(非嫡出子)2人がいたが、婚外子(非嫡出子)側が「民法の相続規定は違憲・無効」と主張して、婚内子(嫡出子)と同等の取り分を求めて家事審判となった[1][2]。2012年3月26日の東京家裁及び2012年6月22日の東京高裁では婚外子(非嫡出子)側の主張を認めなかった[1]。そのため、婚外子(非嫡出子)側が特別抗告をした[1]
和歌山県の男性の相続の例
2001年11月に和歌山県の男性が死亡し、婚内子(嫡出子)2人と婚外子(非嫡出子)2人がいたが、婚外子(非嫡出子)側が「民法の相続規定は違憲・無効」と主張して、婚内子(嫡出子)3と同等の取り分を求めて家事審判となった[2]。和歌山家裁及び大阪高裁では婚外子(非嫡出子)側の主張を認めなかった[3]。そのため、婚外子(非嫡出子)側が特別抗告をした。
最高裁

2013年9月4日に最高裁判所大法廷は旧憲法下で制定され1898年10月に施行された民法規定を新憲法でも引き継いだ婚外子相続差別規定について、戦後の家族の形が国民意識が多様化し、諸外国でも差別撤廃が実現していることなどを総合的に考慮し、「子が自ら選択・修正できない事柄を理由として、その子に不利益を及ぼすことは許されないという考えが確立されてきた」と指摘し、裁判の対象の相続が発生した2001年7月にはすでに違憲だったとする違憲判決を下した[2][4]。一方で、当時から12年経過し相続が決着済みの事案について違憲判断の効力を及ぼすのは「法的安定性を著しく害する」として、混乱回避のため2001年7月から今回の決定までに相続が発生し、裁判や当事者間の合意で決着した相続は覆らないとする判断を示し、決定で審理を高裁に差し戻した[4]。今後、高裁で取り分を同等とする決定が出される見通しである[4]

最高裁裁判官の1人である寺田逸郎は元法務省民事局長の経歴から審理を回避し、14人による判決であった[4]

最高裁判決を受けて、国会で遺産相続の取り分について婚外子(非嫡出子)と婚内子(嫡出子)を同等とする民法改正案が同年12月5日に成立し、同月11日に施行された[2][5]。法施行前でも最高裁決定後に開始した相続ならば、さかのぼって適用する規定も設けられた[5]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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