太陽系外縁天体[1](たいようけいがいえんてんたい、英: trans-Neptunian objects, TNO)とは、海王星よりも遠い平均距離で太陽の周りを公転する天体の総称である。エッジワース・カイパーベルトやオールトの雲に属する天体、かつて惑星とされていた冥王星もこれに含まれる[1]。太陽系についての話題であることが自明な場合には、単に外縁天体とも呼ばれている[1][2]。
太陽系の天体の分類恒星(太陽)
太陽の
周りを
回る
天体惑星地球型惑星
木星型惑星
天王星型惑星
準惑星
小惑星帯にあるもの
(ケレスのみ)
冥王星型天体
太陽系
小天体冥王星型天体以外の
太陽系外縁天体
太陽系外縁天体
典型的には、太陽系外縁天体はさらにエッジワース・カイパーベルト天体のうち古典的カイパーベルト天体と共鳴外縁天体、散乱円盤天体、最も遠い部類であるセドノイドを含む分離天体に分類される[注 1]。2018年10月の時点で、太陽系小天体のリストには小惑星番号が与えられた外縁天体は528個、与えられていないものは2000個以上が登録されている[4][5][6][7][8]。
初めて発見された太陽系外縁天体は、1930年に発見された冥王星である。2番目に発見された外縁天体はアルビオンであり、これは1992年の発見であった(命名は2018年)。発見されている太陽系外縁天体で最も重いのは準惑星のエリスであり、その後冥王星、ハウメア、マケマケ、(225088) 2007 OR10 と続く。外縁天体の周囲には合わせて80個以上の衛星が発見されている。外縁天体の色は多様であり、灰青色 (BB) のものも非常に赤い (RR) ものもある。これらの天体は、岩石やアモルファス炭素と、水やメタンなどの揮発性物質の氷の混合物からなり、ソリンやその他の有機物で覆われていると考えられている。
軌道長半径が 150 au より大きく、近日点距離が 30 au より大きい天体は12個が知られており、このような天体は Extreme trans-Neptunian object (ETNO) と呼ばれる[9]。
日本語での呼称としては、日本学術会議は2007年4月9日の対外報告で太陽系外縁天体もしくは外縁天体という呼称を推奨している[10][1][2]。その他には、英語の "trans-Neptunian object" の直訳に相当する海王星以遠天体や[11]、トランスネプチューニアン天体[12]などの呼称がある。なお広い意味での太陽系外縁天体には、海王星とほぼ同じ軌道を公転する小天体である海王星のトロヤ群や、木星と海王星の間の軌道を持つケンタウルス族を含む場合がある[1]。ただしこれらの2つの集団は、英語では "cis-Neptunian object (海王星以内天体) として trans-Neptunian object とは区別されている[1]。
歴史
冥王星の発見ニュー・ホライズンズが撮影した冥王星
個々の惑星の軌道は、他の惑星からの重力によってわずかに影響を受ける。1900年代初期の天王星と海王星の軌道の観測値と予測値の食い違いから、海王星以遠を公転する惑星が1つ以上存在することが示唆された。そのような天体を探索する過程で1930年2月に冥王星が発見されたが、その質量は軌道のずれを説明するには小さすぎるものであったため、なお探査は続けられた。しかし1989年のボイジャー2号のフライバイの際の観測から海王星の質量が見直され、そもそも軌道のずれが存在するという当初の予測が疑わしいことが示された[13]。冥王星は既知の太陽系外縁天体の中で最も見かけの等級が明るいものであったため、最も発見しやすい天体であった。また他の大きな外縁天体と比べて黄道に対して小さい傾斜角を持っている。 冥王星の発見後、アメリカの天文学者クライド・トンボーは数年間にわたって冥王星と同様の天体の捜索を続けたが、そのような天体は発見されなかった。2006年8月までは惑星とみなされていた冥王星が海王星以遠でのただ一つの主要な天体であると長い間にわたって信じられていたため、しばらくの間はその他の外縁天体の捜索は行われなかった。2番目の外縁天体アルビオンが1992年に発見されてから初めて、外縁天体のさらなる系統的な捜索が行われた。空の黄道周辺の広い範囲が撮影され、天球上をゆっくりと移動する天体の有無のデジタル的な評価が行われた。その結果、直径が50から2500キロメートルの外縁天体が数百個発見された。最も重い外縁天体であるエリスは2005年に発見され、この発見は大きな太陽系外縁天体の分類や、冥王星のような天体を惑星とみなすべきかどうかについての科学界における長期にわたる論争を呼び起こすこととなった。その後冥王星とエリスは国際天文学連合によって準惑星と分類された。 2018年12月には、「ファーアウト」とニックネームが付けられた天体 2018 VG18 の発見が公表された。この天体は発見された時点では太陽から 120 au と観測された中で最も遠方に存在する太陽系の天体であり、1000年以上の時間をかけて軌道を一周すると考えられる[14]。
その後の発見