太陽変動
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ここ30年の太陽変動の様子

太陽変動(たいようへんどう、太陽活動変動、太陽活動変調、: Solar variation)は、太陽からの放射量の変化を指す。

これら変動はいくつかの周期単位が存在する。最も基礎的なものとして、11年の太陽活動周期 (黒点周期) があり、典型的な非周期的変動である。

太陽活動は、ここ最近の10年間は衛星観測から、それ以前は「間接的」な変動因子から計測されていた。気候学者たちは、何らかの太陽活動変化特に地球に影響を与える変動因子を解明することに関心を寄せており、地球の気候変化に影響する太陽活動変化を「太陽の放射強制力」と呼ぶ。

全太陽放射照度 (TSI) の変動計測は、衛星観測時代以前には、計測閾値以下の変動にとどまっていたが、現在では紫外線領域の数パーセント程度の小さな変動を捕らえている。太陽全放射は、現在 (最近の11年周期・第23期) において、約0.1パーセント[1][2]または約1.3W/m2の極大-極小変動幅を記録している。

地球大気圏の外表面で太陽放射を受け取る量の変化は、平均値1.366ワット毎平方メートル (W/m2) に比してごく僅かである[3]

長期間の直接計測による変化記録 (衛星観測) は存在しない。また代理変数として解釈可能な変化も近年の議論の結果、現在から2000年前まで0.1パーセント前後の幅でしかないことが判明したものの[4]、その一方で、他の痕跡により1675年から2000年までに放射照度が0.2パーセント増加したという[5]。太陽の活動変化と火山活動が組み合わさる効果は、マウンダー極小期のように気候変動に顕著な影響を及ぼす。

2006年、太陽活動に関する研究と、現存する研究書と出版物のレビューがネイチャーに掲載された。この報告書は「1970年代の半ばから、太陽の輝度について純増が見られず、太陽の熱出力の変化が過去400年に渡って地球温暖化に対する影響を殆ど与えていない」というものであった[6]。しかしながら、同じ報告書の著者たちは「太陽の輝度を別にしては、宇宙線や太陽紫外線の与える気候への微妙な影響を語ることは出来ない。研究者たちにとって、これらの影響については、物理モデルの開発が未だ貧弱なために、確証を得るには至っていない。」と述べている。
太陽活動変動研究の歴史ウォルフ黒点相対数400年の変遷

太陽活動の変化を捉える最も古くから続く記録は太陽黒点数の変化である。太陽黒点に関する最初の記録は、中国で紀元前800年頃に行われ、日付を確認できる最古の黒点の描写は西暦1128年のことであった。西暦1610年頃から、天文学者たちは天体望遠鏡を用い、太陽黒点とその活動について観測を開始した。初期の研究は、黒点現象そのものと振る舞いに重点がおかれた[7]。発見以来、黒点の物理学的側面については1900年に至るまで解明されなかったが、観測は続けられた。太陽黒点に基づく太陽変動の研究は、1600年から1700年の間、現在ではマウンダー極小期として知られる太陽活動低下期に差し掛かって太陽黒点数が極端に減少したことから、低迷を余儀なくされる。その後1800年代に至ってようやく太陽活動の周期性を示唆するに十分な数の黒点観測記録が揃うことになった。1845年プリンストン大学の教授ジョセフ・ヘンリーとステフェン・アレクサンダー (天文学者) は、サーモパイルを用いて太陽を観測し、太陽黒点からの熱放出がそれ以外の太陽表面よりも小さいことを突き止めた。太陽表面には、平均よりも高い放出量を示す場所白斑があることも、後の観測から見出された[8]

1900年頃から、研究者たちは太陽活動と地球気象の相関に付いて探求を開始した。特筆すべきものとして、チャールズ・アボットによる一連の研究がある。アボットは、スミソニアン天体物理観測所すなわちSAOに、サミュエル・ラングレーの助手として入り、ラングレーの始めた太陽定数の研究に関わって、太陽放射量の変化を見出した。(太陽定数を参照) アボットの観測チームは、太陽放射量を計測する為、1909年に計測機器の開発を行った。後にアボットが、SAO所長に就任すると、観測チームによってチリカラマに観測所が設けられ、ウィルソン山天文台の観測を補完するようになった。これら観測からアボットは、27調和周期、7,13,39か月の周期パターンが273か月のヘール周期内にあることを見出した。アボットは、月単位の諸都市の気温とその統計や太陽活動の統計の間に、地球の天候に結びつくようなものを探していた。同じ頃に、年輪年代学が登場したことで、ウァルド・グロックをはじめとするような科学者たちは、樹木の生長と太陽変動周期を1000年の規模での太陽定数の長期的な変動の連関に結び付けようと試みた[9]

統計学的研究、すなわち太陽活動に関する気象気候の関係について、一般的に行われるようになったのは、ここ数百年程度であり、遡って1801年に ウィリアム・ハーシェルにより、小麦の価格と太陽黒点の記録に付いて明白な関連があるとする記述がなされている[10]

今や彼ら研究者たちは、太陽活動変動の効果が地球の気候システムを通して伝播される詳細な過程を調査するために合成、もしくは観測された太陽活動変動に関する地上観測網、および気象衛星観測からの結果、もしくは、「既知の」気候モデルへの「はめ込み」などから集成された、高密度かつ地球規模の観測データの集合体に取り組んでいる[11]
太陽活動
太陽黒点Graph showing proxies of solar activity, including changes in sunspot number and cosmogenic isotope production.

太陽黒点とは、相対的に周囲の太陽面領域よりも暗く、強い磁場活動が表層面の対流活動を抑制することにより周囲よりも温度が低い領域である。また太陽の黒点数は、太陽放射の強度に相関関係がある。太陽活動の変化量の小さい (1ワット平方メートルまたは全放射比0.1パーセント以下の) 変動記録は、1980年代になって衛星による計測が可能になってはじめて得られるようになった。アボットの計測記録を基礎として、Fouka 他 (1997) らは、全太陽面中で太陽放射の高い放射領域が黒点に関連することを明らかにした。気象観測衛星ニンバス7号 (1978年10月25日打ち上げ)、太陽観測衛星ソーラーマックス (1980年2月14日打ち上げ) は、太陽黒点を取り巻く領域が、他の領域よりもより強く輝くことを検出し、太陽黒点の増加が太陽の輝きを強める効果を持っていることを見出した。

太陽直径の変化は、太陽活動変動から引き起されているかもしれないという仮説が以前から存在する。しかし近年の研究、その多くが太陽観測衛星SOHOに搭載された、マイケルソン・ドップラー撮影装置による計測により、直径そのものの変化が小さく僅か0.001パーセント程度であることが示された (Dziembowski 他, 2001)。Reconstruction of solar activity over 11,400 years. Period of equally high activity over 8,000 years ago marked.

これらのさまざまな研究は、黒点数 (数百年にわたる記録) を太陽活動の代理変数として (この数十年は詳細な記録がなされているものとして) 利用している。地上観測機器においても、高層観測、衛星機器と相互比較されて較正されるようになっている。また研究者らは、現在読み取られているデータと過去のデータを繋げるための補正係数を得ている。他の代理変数となるデータ、たとえば多量の地球外から到達する放射性同位体、などは、太陽磁気活動とともに精度の高い太陽の輝度を推論するために用いられている。

太陽活動度は、約300年間、ウォルフ黒点相対数によって測定されていた。この指数 (チューリッヒ数としても知られる) は、黒点の数と黒点群の数に幾つかの補正係数によって求めている。2003年に、フィンランドオウル大学のイリヤ・ウソーキンの研究により、太陽黒点は1940年頃から現在に至るまで、ここ1150年間で最も活動的であることが示された[12]

現在から遡って過去11400年間の太陽黒点数は、年輪年代学による14C蓄積量によって再構成された。現在から過去70年間の太陽活動レベルは例外的に高く、同程度の規模での活動は8000年以上前に遡るものである。太陽の磁気活動がこのように高レベルであるのは過去11400年間の10%前後に過ぎず、ほとんどの活動極大の前駆的期間は、現在の活動レベルに至る状況よりも 短いものであった[13]

太陽変動現象と発生年代現象名経至
オールト極小期1040年1080年中世の温暖期を参照
中世極大期1100年1250年中世の温暖期を参照
ウォルフ極小期1280年1350年
シュペーラー極小期1450年1550年
マウンダー極小期1645年1715年
ダルトン極小期1790年1820年
現代極大期1950年継続中

歴史的に大規模な太陽活動の極小期のリストは[14]、西暦の紀元690年、紀元前360年 (以後西暦の紀元前)、770年、1390年、2860年、3340年、3500年、3630年、3940年、 4230年、4330年、5260年、5460年、5620年、5710年、5990年、6220年、6400年、7040年、7310年、7520年、8220年、9170年

となっている。
太陽周期

太陽周期は、太陽活動の周期的変化を指す。幾つかのパターンの存在が提案されており、11年周期、22年周期は長年の観測結果により明白な事実として捉えられている。

11年周期: 最も明瞭な点として太陽黒点の増加と減少が約11年の周期で起きるこの現象はシュワーベ周期と呼ばれ、ハインリッヒ・シュワーベの研究によって見出されたことからこの名前がつけられた。


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