この項目では、光電効果を利用している「太陽光発電」について説明しています。太陽エネルギーを熱として利用する発電方式については「太陽熱発電」をご覧ください。
砂漠に設置された大規模太陽光発電所。それぞれのパネルは一軸式の追尾装置(ソーラートラッカー)上に取り付けられ、太陽と正対するように旋回する(米国、2007年10月)一般家庭の屋根に設置された太陽光発電システム(米国、2007年5月)水上式太陽光発電システム(富山県射水市、2010年(平成22年)4月)水上式メガソーラー発電所(愛知県豊明市、2018年(平成30年)5月)
太陽光発電(たいようこう はつでん、またはソーラー発電、英: Photovoltaics[注 1], Solar photovoltaics[4]、略してPVともいわれる)は、太陽光を太陽電池を用いて直接的に電力に変換する発電方式である。大規模な(特に設備容量が1メガワットを超える)太陽光発電所は「メガソーラー」とも呼ばれる[5][6]。再生可能エネルギーである太陽エネルギーの利用方法の1つである。
概要ISSの太陽電池パネル灯台の電源として用いられる太陽光発電設備
技術的特徴として、発電電力量が日照(気候・天候や季節、地形による差が大きい)に依存し不随意に変化する一方、昼間の電力需要ピークを緩和できる。さらに火力発電では不可避の化石燃料消費量と温室効果ガス排出量をともに削減できる。放射性廃棄物の処理や事故が起きた場合の汚染被害といった課題を抱える原子力発電への依存度を下げる手段としても活用されつつある[7]。さらに、発電装置はパネル状なので屋上にも設置でき、本来であれば太陽光発電専用の敷地を必要としない。だが、メガソーラー式では太陽光発電専用の敷地を用意している。
設備は1つ目として太陽電池、2つ目は電力として利用するために必要な電圧及び周波数を変換するインバータ(パワーコンディショナー)で構成される。発電が行われる時間帯・地域と電力需要が異なる場合には、蓄電池も組み合わせて調整される。
開発当初は極めて高価で、宇宙開発等限られた用途に使われた[8]。近年は発電コストの低減が進み、多くの発電方法と比較して高コストながら、年間数十ギガワット単位で導入されるようになった(太陽光発電の市場動向を参照)。今後コスト低減や市場拡大が続くと見込まれ[9][10][11]、各国で普及政策が進められると同時に、貿易摩擦に発展する例や[12]、価格競争で倒産する企業が見られる[13]。
SDGsの観点とパネルのコスト低下から目覚ましい勢いで普及しており、IAEAは太陽光発電が今後10年の再生可能エネルギーの供給拡大をけん引すると予想している。ビロル事務局長は「太陽光が世界の電力市場の新たな王様になるとみている」と述べている[14]。
長所
装置
発電部(セル)に可動部分が無くソリッドステートであるため、原理的に機械的故障が起きにくい(太陽電池#原理を参照)。
規模を問わず発電効率が一定なため小規模・分散運用に向く。
発電時に廃棄物、排水・排気、騒音・振動が発生しない。
出力ピークが昼間電力需要ピークと重なり、需要ピーク電力の削減に効果がある[15]。
設置位置
屋上に設置できるため、専用の敷地を必要としない
需要地に近接設置が可能で送電コストや損失を最小化できる。
蓄電池の利用で、非常用電源となりうる。
運搬・移動に適した小型製品がある。
他の発電方式と比較し設置制限が少ない。建築物の屋根や壁面に設置でき土地を占有せずに設置可能。
社会
エネルギー自給率を向上させる。
稼働に化石燃料を必要とせず、エネルギー安全保障上で有利(#エネルギー収支を参照)。
発電時に温室効果ガスを排出せず、設備製造等での排出も比較的少ない(#温室効果ガス (GHG) 排出量を参照)。
短所
装置
送配電系統へ連結する場合、直流から交流へ、及び必要な商用電源周波数へ変換するためのインバータ装置が必要。
コスト
発電電力量当たりのコストが他の発電方法より割高である(#発電コストを参照)。
設置面積当たりの発電電力量が、集中型発電方式に比べて低い。
発電電力量に関してスケールメリットが効かず、規模を拡大しても発電効率が変わらない(コストにはスケールメリットがある)。
夜間には発電できず、昼間も天候等により発電電力量が大きく変動する[16]。
発電環境
高温時に出力が落ちる[17](太陽熱発電と逆の特性。温度の影響参照)。
影やパネルの汚れ、火山灰、降雪等で太陽光を遮蔽されると、電力出力が落ちる[17][18][19]。また、影はパネル全体にかからなくとも、部分的に影になるだけでも発電効率は大幅に低下する[20]。
原子力と再エネに必要な面積
環境
十分な発電量を得るためには広い面積が必要であり[21]、景観・自然環境への影響や災害リスクの増大が懸念される。具体的には、発電施設建設のため森林が伐採されることなどによる動植物の生息環境悪化や土砂災害の危険性が指摘されている[22]。
人家近くに設置された場合、パネルで反射された太陽光による光害や熱中症が引き起こされる[23]。
火災等で設備が破損した場合、日中はもちろんのこと夜間であっても、炎の光で発電が継続されてしまうため、設備が新たな発火の原因になったり、放水による漏電で消火作業中の消防隊員が感電したりする恐れがある。なお、消防隊員が残火確認中に感電した事例も報告されている[24][25]。このため消火作業・鎮火宣言が遅れることがある。
太陽光パネルの損壊部から、鉛やセレン等の有害物質が流出し、土壌汚染を招く危険がある[26]。破損したパネルを処理する場合は、排出事業者が処理責任を負う[27]。
設置者は、感電の危険性や有害物質流出についての注意喚起し、災害時には安全のために立ち入り禁止としたり、破損部をシートで覆う等の危険防止策が必要となる[28]。