太陽の王子_ホルスの大冒険
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太陽の王子 ホルスの大冒険
監督
高畑勲(「演出」名義)
脚本深沢一夫
製作関政次郎
相野田悟
原徹
斉藤侑(「企画」名義)
製作総指揮大川博
出演者大方斐紗子
市原悦子
平幹二朗
堀絢子
東野英治郎
音楽間宮芳生
撮影吉村次郎、片岡幸男
編集千蔵豊
配給東映
公開 1968年7月21日
上映時間82分
製作国 日本
言語日本語
製作費1億2900万円
前作アンデルセン物語
次作長靴をはいた猫
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『太陽の王子 ホルスの大冒険』(たいようのおうじ ホルスのだいぼうけん)は、東映動画製作の日本劇場用アニメ映画。公開は1968年7月21日、上映時間82分、シネスコ(東映スコープ)。『東映まんがパレード』(のちの『東映まんがまつり』)の一本として上映された。

文部省選定作品[1]

キャッチコピーは「ホルスはとても強いんだ!」「太陽のつるぎがきらッきらッとかがやくと 巨人モーグがあらわれた! かわいゝ動物やおそろしい怪物もいっぱい!」[1]
概要

アイヌの伝承をモチーフにした深沢一夫戯曲(人形劇)『春楡(チキサニ)の上に太陽』を基とし、舞台を「さむい北国のとおいむかし」として製作された。

制作トップに立った高畑勲にとっては初めての監督作品(当時東映動画では監督という言葉は用いず監督業を演出と呼称していた)。興行的な成功には縁遠かったとはいえ、高畑が中編・長編アニメに進出する足がかりとなった。宮崎駿が本格的に制作に携わった初めてのアニメ作品でもある。

2002年7月21日にDVDが発売された。初公開時の上映作品すべてをまとめて収録したDVDは『復刻! 東映まんがまつり 1968年夏』として2012年7月21日に発売された[注 1]

動画枚数49,355枚。
あらすじ

悪魔グルンワルドの手から自分の息子を守りたいという一心で、父の手によって他の人間の許から離されて育ったホルスは、ある日岩男モーグに出会い、モーグの肩に刺さっていた太陽の剣を抜き取る。モーグはそれをホルスに与え、それを鍛え直した暁にはそれを持つ者は太陽の王子と呼ばれるようになり、モーグ自身もその許に馳せ参ずるだろうと告げた。意気揚々と走り回るホルスだが、次にホルスを待っていたのは父が危篤であるという知らせだった。ホルスの父は、ホルスを人間の元から離して育てた事は間違いであり、他の人間の所に向かうようにホルスに告げて、息絶える。

父の遺言に従い、他の人間の住む陸地に辿り着いたホルスだが、早々にグルンワルドの手下に捕らえられてしまう。その後グルンワルドとの対面を果たすが、グルンワルドの弟になることを拒んだために崖から突き落とされる。太陽の剣のおかげで九死に一生を得たホルスは、気を失っていたところをガンコ爺さんに助けられ、ガンコ爺さんの鍛冶仕事に関心を持つ。

しかしその村はグルンワルドの手下である大カマスのために魚が獲れず、食料不足に苦しんでいた。大カマスの退治に向かった若者達が為す術も無く帰ってきた様子を見たホルスは、一人大カマスのいる滝壺に向かい、見事大カマスを仕留める。一人で大カマスを仕留めたと言うホルスに村人は驚きを隠せないが、程なくして再び魚がやってくるようになり、ホルスは一躍村の英雄となった。しかしそれは同時に村長とドラーゴの嫉妬心を買う事も意味していた。

死んだとばかり思っていたホルスが、大カマスを退治したという知らせを聞いたグルンワルドは、狼たちを村に遣わすが、一致団結した村人の前には歯が立たず、多くが討たれる。討ち逃した銀色狼を追っていたホルスは、廃墟の村の中でヒルダと出会い、孤独な境遇に親近感を抱いて村に招く。ヒルダはその美しい歌ですぐに村人たちに気に入られた。

しかしヒルダは、過去の記憶が足枷となっているのか、協調的に生きる村人の輪に入る事が出来ない。ヒルダの孤独感はむしろいや増し、それに伴ってヒルダの悪魔としての心が呼び覚まされていく。トトにそそのかされたヒルダは、村人たちにホルスに対する疑念を抱かせ、ホルスを迷いの森へと誘い込む。

迷いの森に堕ちたホルスは、次々に襲ってくる幻想に苦しめられるが、その中でグルンワルドに対抗する手がかりをつかむ。村人全員が力を合わせれば、グルンワルドに対抗する力に成り得ることを知ったのである。ヒルダの心の葛藤も見破ったホルスは、ヒルダの人間の心を呼び覚ますことにも成功する。

ホルスのいなくなった村では、グルンワルドの出現におののいていた。グルンワルドの魔法で村は吹雪に襲われるが、その中でもガンコ爺さんやポトムたちがグルンワルドに対抗しようと必死に策を練っていた。ガンコ爺さんが積み上げた薪に火をくべ、村人を団結させたところにホルスが舞い戻り、団結の象徴であるその火で太陽の剣を鍛え上げる。約束通りモーグも応援に駆けつけ、グルンワルドは退散を余儀なくされる。勢いづいた村人たちはグルンワルドの城まで追い討ちをかけ、モーグによって太陽の光を浴びせられてグルンワルドがひるんだところにホルスが太陽の剣でとどめを刺し、グルンワルドは倒れる。

ヒルダは、雪の中を彷徨うフレップとコロに命の珠を与えたが、息絶える事はなかった。勝利に沸く村にヒルダも現れ、ホルスがヒルダの手を取り、ポトムたちと駆けていくところで大団円となる。
登場人物

この作品のキャラクターデザインはアニメーターが出し合ったデザイン案を高畑監督が方向性を考えながらまとめて、最後に担当者を決めて仕上げられた。どのキャラクターにも複数の人間のデザインが取り入れられ、高畑監督自身の考えも反映されている。そのためこのキャラクター一人一人について作った人物を特定することは難しい。この項の「キャラクターデザイン」ではデザインの仕上げをした担当者の名前を記す。
ホルス
声:
大方斐紗子、キャラクターデザイン:大塚康生14歳。大自然の仲で伸び伸びと育った。真っ直ぐな性格であまり他人を疑ったりしない。常に村人に先んじて行動に出、問題を一人で解決しようとする傾向がある。父親の遺言により仲間となるべき人間を捜して住み慣れた家を離れる。
ヒルダ
声:市原悦子、キャラクターデザイン:森康二15歳。孤独な少女。悪魔グルンワルドの妹。グルンワルドに滅ぼされた村の生き残り。グルンワルドに授けられた「命の珠」により永遠の命を持つ。歌によって人の心を魅了するが、自分自身の心の歌は歌えない。グルンワルドの手先として行動し人々に不和を芽生えさせる。人間の心と悪魔の心の間で常に葛藤している。
グルンワルド
声:平幹二朗、キャラクターデザイン:宮崎駿奥山玲子林静一雪や氷を操り氷の城に住む悪魔。人を疑心暗鬼にさせ、数々の村を滅ぼした。銀色狼、大鷲、大カマス、そしてヒルダを使い人間に災いをもたらす。気に入った人間をスカウトし自分の弟妹として利用する。ヒルダに「命の珠」を与える。
ホルスの父
声:横森久、キャラクターデザイン:宮崎駿55歳。悪魔に滅ぼされた村の生き残り。ホルスのために村を捨てて船で逃げた。船を改造した小屋でたったひとりでホルスを育てる。ホルスに集団生活を教えなかった事を後悔している。死の間際、ホルスに自分の斧を渡し「仲間の所へ行け」と遺言を残す。
岩男モーグ
声:横内正、キャラクターデザイン:宮崎駿岩でできた巨人。人間で言う髪にあたる部分には木が茂っている。大地に埋まって昼寝していた。肩に刺さっていた太陽の剣をホルスに与える。「『太陽の剣』を鍛え直し、使いこなせた者こそ『太陽の王子』と呼ばれるようになる」と予言する。グルンワルドとの戦いでは人間に味方し、氷のマンモスを倒した。氷の城の壁に穴を開け、城に太陽の光を注ぎ込んだ。
ポトム
声:堀絢子、キャラクターデザイン:小田部羊一15歳。村長の息子。正義感が強くホルスの一番の理解者。村のおとなたちに不満を感じている。
ガンコ爺さん
声:東野英治郎、キャラクターデザイン:宮崎駿60歳。村の鍛冶屋。村に流れ着いたホルスを保護する。グルンワルドとの戦いでは槍などの武器を用意する。
ボルド
声:横内正25歳。村の青年リーダー。実直な人柄。ヒルダの歌に惑わされなかった。しばしば村人の先頭に立って行動する。
村長
声:三島雅夫45歳。自己中心的で臆病。自分の保身ばかりを気にする。
ドラーゴ
声:永田靖、キャラクターデザイン:小田部羊一50歳。村のNo.2。常に奸計をめぐらす。ヒルダを利用して村長の座を狙おうとする。ホルスを陥れて村から追放した。
ルサン
声:津坂匡章(現・秋野太作)、キャラクターデザイン:小田部羊一25歳。村の青年。大カマスとの戦いで腕を負傷する。ピリアと婚礼を上げる。
ピリア
声:赤沢亜沙子、キャラクターデザイン:奥山玲子20歳。村の若い女性。ルサンと婚礼を上げる。
チャハル
声:杉山徳子、キャラクターデザイン:奥山玲子30歳。フレップの母親。夫のモラスは村のために大カマスと戦い死んだ。ガンコ爺さんに食事を運んだり、ピリアの婚礼衣装を縫ったりと村のお母さん役を務める。
フレップ
声:堀絢子、キャラクターデザイン:大塚康生5歳。村の少年。チャハルとモラスの息子。流れ着いたホルスを最初に発見する。大カマスに殺された父親の敵を討とうとする芯の強さも持っている。
マウニ
声:水垣洋子、キャラクターデザイン:奥山玲子3歳。村の少女。ルサンとピリアの婚礼の唄を歌う。ヒルダになついている。
コロ
声:浅井ゆかり、キャラクターデザイン:大塚康生ホルスといっしょに育った小熊。食いしん坊。村に着いてからはフレップといっしょにいる。
チロ
声:小原乃梨子、キャラクターデザイン:小田部羊一常にヒルダと共にいる子リス。悪魔グルンワルドの手下でありながら心優しい。ヒルダの良心の象徴。
トト
声:横森久、キャラクターデザイン:小田部羊一常にヒルダと共にいる白フクロウ。悪魔グルンワルドの手下。グルンワルドに忠実で、ヒルダをグルンワルドからの命令を守らせるために監視している。ヒルダの悪魔の心の象徴。
大カマス
キャラクターデザイン:大塚康生グルンワルドの手下。村の川下の滝つぼに棲む。魚の遡上を阻害し村に飢えをもたらした。
氷マンモス
キャラクターデザイン:宮崎駿魔力で作り出された巨大な氷のマンモス。グルンワルドを頭に乗せて運び、村を踏みつぶす。
大鷲
キャラクターデザイン:大塚康生グルンワルドの手下。人を惑わし砂地獄に誘い込む。ホルスをグルンワルドの元へ運んだ。
銀色狼
キャラクターデザイン:大塚康生グルンワルドの手下。群狼を率いて人を襲う。人間を監視してグルンワルドに報告する。
雪狼
キャラクターデザイン:大塚康生魔力によって作り出された雪の狼。空を飛び村や平原を雪で埋める。
声の出演

ホルス …
大方斐紗子

ヒルダ … 市原悦子、歌:増田睦美

グルンワルド … 平幹二朗

ポトム、フレップ … 堀絢子

マウニ … 水垣洋子

ガンコ爺さん … 東野英治郎

チャハル … 杉山徳子

村長 … 三島雅夫

ドラーゴ … 永田靖

ボルド、モーグ … 横内正

ルサン … 津坂匡章(現・秋野太作)

ピリア … 赤沢亜沙子

ホルスの父、トト … 横森久

コロ … 浅井ゆかり

チロ … 小原乃梨子

若い女 … 阿部百合子

村の女 … 檜よしえ

村人 … 立花一男、神山寛

スタッフ

製作:
大川博

企画:関政次郎、相野田悟、原徹、齋藤侑

脚本:深沢一夫

演出:高畑勲

作画監督:大塚康生

美術:浦田又治

場面設計・美術設計:宮崎駿


原画:森康二
奥山玲子小田部羊一宮崎駿大田朱美菊池貞雄喜多真佐武

動画[注 2]:生野徹太
堰合昇吉田茂承相磯嘉雄山下恭子坂野隆雄薄田嘉信坂野勝子黒澤隆夫阿部隆的場茂夫池原昭治服部照夫角田紘一村松錦三郎石山毬緒長沼寿美子山田みよ

背景:土田勇、井岡雅宏、内川文広

演出助手:竹田満、笠井由勝

トレース:入江三帆子、黒澤和子

ゼログラフィ:加藤稔

彩色:岸本弘子、宮本慶子

特殊効果:平尾千秋

検査:新納三郎

調色:谷口洋平

撮影:吉村次郎、片山幸男

録音:神原広巳

編集:千蔵豊

音響効果:大平紀義

記録:的場節代

進行:吉岡修

現像:東映化学工業株式会社

音楽:間宮芳生

演奏:新室内楽協会

合唱:日本合唱協会

主題歌など

全て、作詞:深沢一夫、作曲:間宮芳生、演奏:新室内楽協会

「主題歌」 歌:調布少年少女合唱隊

「収穫の唄」 歌:日本合唱協会

「子供の唄」 歌:調布少年少女合唱隊

「婚礼の唄」 歌:水垣洋子、日本合唱協会

「ヒルダの唄」 全て、歌:増田睦美、リュート:浜田三彦

ヒルダとホルスの出会いのシーンで流れる唄

陽気な唄(自己紹介の後に歌う唄)

荒野でひとりうたう唄


「ヒルダの子守唄」 歌:増田睦美、リュート:浜田三彦
(朝日ソノラマ)
製作

東映動画では、『白蛇伝』以来、長編(上映時間80分相当)を年に1本製作・公開してきた。しかし、1963年に虫プロダクションの『鉄腕アトム』によってテレビアニメの時代が始まると東映動画もそれに追随せざるを得なくなる。同年に製作を開始した『ガリバーの宇宙旅行』は、その影響を受け、いったん製作が中断した[3][4]。1964年9月には、「当分のあいだ、長編アニメーションの制作は中止する」という方針が東映動画社長よりスタッフに伝えられる[5]。だが、『ガリバーの宇宙旅行』公開直前の1965年3月、企画部長の関政次郎から大塚康生に「来年をめど」とした長編次回作の作画監督が打診される[5]。大塚は、題材を『龍の子太郎』、演出(一般に言う監督に相当)を高畑勲とする条件で受諾すると文書で返答する[6][注 3]。最終的に大塚の要望が通る形となり、4月から大塚と高畑によって企画の検討が開始された[8][注 4]


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