天網
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天安門広場の監視カメラ(2009年)

天網(てんもう、中国語: 天网工程、.mw-parser-output .pinyin{font-family:system-ui,"Helvetica Neue","Helvetica","Arial","Arial Unicode MS",sans-serif}.mw-parser-output .jyutping{font-family:"Helvetica Neue","Helvetica","Arial","Arial Unicode MS",sans-serif}?音: ti?n w?ng)とは、中華人民共和国本土(大陸地区)において実施されているAIを用いた監視カメラを中心とするコンピュータネットワークである[1][2][3]
名称

老子魏書の「天網恢恢疎にして漏らさず」に由来するとされるが、英訳するとAIの危険性を訴えたジェームズ・キャメロンSF映画ターミネーター』に登場するコンピュータスカイネット」と同名であることから英語圏や日本の一部メディアで「スカイネット(英語: Sky Net)」と呼ばれている[4][5][6][7][8][9]
概要詳細は「:zh:天网 (中国)」および「:en:Mass surveillance in China」を参照

2010年代から天網工程は中国各地で試験的に始まり[10]、目標として2020年までの中国全土の導入を掲げた[1]2015年になると「雪亮工程」(鋭眼、シャープアイズ)の対象である農村部を除く首都北京市内の100%をカバーしたと発表し[11]2018年は16の直轄市自治区で運用され[12]2019年には世界120都市のうち1000人当たりで監視カメラが最も多い上位10都市はイギリスロンドンアメリカ合衆国アトランタを除く8つの都市(上位5都市は独占)を中国が占めており[13][14][15]、2019年時点で中国は約2億台を超える世界最大の監視カメラネットワークを擁し[16]、1人当たりでは米国(5000万台)に僅差で次ぐものの小売業など民間が主に設置している英米と対照的に政府主導が特徴であり[17][18]、監視カメラ業界では官公需で急成長したハイクビジョンダーファ・テクノロジーなど中国企業がシェア世界一となり[19][20]、同じ中国企業のファーウェイHiSilicon)製半導体(SoC)は世界の半数を超える監視カメラに内蔵された[21][22]

2017年貴陽市BBCの記者がシステムを試した際は7分で身元を特定されて拘束されている[23][24]。速度は1秒で中国国民、2秒で全世界の人々を照合可能な毎秒30億回とされ[12]、これと組み合わせるために中国公安部音声指紋虹彩DNAなど他の生体認証のデーターベースも構築しているとされる[25][26][27]。2017年に中国公安部は警察向けの眼鏡型やヘルメット型のヘッドマウントディスプレイの開発を決定しており[28]、翌2018年には天網と思われるAIネットワークと連動してインターネットの閲覧履歴にもアクセスできるとされるサングラススマートグラスを装着した警察官が春節鄭州駅にて100ミリ秒(0.1秒)で7人の容疑者を特定し[29][30][31][32]ナンバープレートの照合も可能であることから北京の検問所でも投入され[33]、2018年時点で2000人超の犯罪者の逮捕を天網で成功したとされる[12]。スマートヘルメットも導入されており[34][35]中国本土におけるコロナウイルス感染症の流行の際は市民の体温監視にも警察で使用された[36]

天網の開発には中国人民解放軍MOOTW行動研究センターも携わり、TOP500で世界最速だった国防科学技術大学天河二号のようなスーパーコンピューターの処理能力を利用しているとされ[37]、天河二号とクラウドで連携してテーザー銃などで武装した警察のロボット顔認証を行いながら群衆を監視している[38][39][40][41][42]。中国ではディープラーニングが国民に対する当局の監視強化を目的に急速に普及しており[43][44][45]、中国は世界のディープラーニング用サーバーの4分の3を占めているとされる[46]。米国政府によれば2013年からディープラーニングに関する論文数では中国が米国を超えて世界一となっている[47]。「ディープラーニングの父」の一人と呼ばれているヨシュア・ベンジオは中国が市民の監視や政治目的でAIを利用していることに警鐘を鳴らした[48][49]。また、FRVT(英語版)[50]ImageNet[51]などAIの国際大会で上位を独占する水準のAIデータ処理技術を持つ中国企業が天網を支えているとされている[52][53][54][55]。また、マイクロソフトのようなアメリカ合衆国のハイテク企業は中国の軍部とAIを用いた監視技術を共同開発しており[56]国防高等研究計画局(DARPA)から資金の支援を打ち切られたアメリカの大学・企業の高性能なカメラ技術も使用されている[57]。このAIによる監視技術は中東アジアアフリカなど各国に輸出されており[58][59][60][61][62]国際連合専門機関である国際電気通信連合(ITU)を通じて中国が顔認証や自動車の識別などのAI監視技術の国際標準化も主導してることから同様のAI監視システムが世界に拡散することが人権団体などから懸念されている[63][64]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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