天神祭
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大川での船渡御(2012年)

天神祭(てんじんまつり、てんじんさい)は、日本各地の天満宮天神社)で催される祭り祭神菅原道真命日にちなんだ縁日で、25日前後に行われる。一年のうち1月の初天神祭など、ある月に盛大に行われることがある。各神社で行われる天神祭の中では、大阪天満宮を中心として大阪市で行われる天神祭が有名である。以下より大阪天神祭のことについて記述する。

日本三大祭(他は、京都の祇園祭、東京の神田祭)の一つ。また、生國魂神社生國魂祭住吉大社住吉祭と共に大阪三大夏祭りの一つ。期間は6月下旬吉日 - 7月25日の約1か月間に亘り諸行事が行われる。特に、25日の本宮の夜は、大川(旧淀川)に多くの船が行き交う船渡御が行われ、奉納花火があがる。大川に映る篝火や提灯灯り、花火などの華麗な姿より火と水の祭典とも呼ばれている。他に鉾流神事(ほこながししんじ)、陸渡御(りくとぎょ)などの神事が行われる。24日宵宮、25日本宮。
歴史

神祭は大阪天満宮が鎮座した2年後の天暦5年(951年)6月1日より始まったとされている。この時の祭事は大川より神鉾を流して、流れ着いた場所に祭場を設けて、その祭場で禊払いを行うというものであった。これが鉾流神事の元となり、その祭場に船で奉迎したことが船渡御の起源となっていると伝えられている。

天神祭は続いてきたが、日本三大祭のつと呼ばれるようになるのは江戸時代からである。安土桃山時代豊臣秀吉より催太鼓を拝領する。寛永末期に祭場(御旅所)を雑喉場(ざこば)に定めたため鉾流神事が取りやめられる。このころ陸渡御の起源となる地車が登場する。慶安2年にでたお触書によると、多くの地車が争って宮入しようとするため順番を決めさせたとある。寛文末期に御旅所が戎島(現在の大阪市西区本田)に移転。元禄時代になると「御迎人形」(おむかえにんぎょう)と呼ばれる2メートルほどの人形を船の穂先に高く飾り付けるようになる。またこの頃より講が形成され日本三大祭りとして呼ばれるようになる。当時の天神祭の壮大さは『東海道中膝栗毛』や『世間胸算用』で描かれているほか、大阪天満宮の東側に位置する「天神橋2丁目商店街」(天神橋筋商店街の一部)入口のアーケードには、羽柴秀吉佐々木高綱八幡太郎義家木津勘助をあしらった4体の「御迎人形」が飾られている。

慶応元年(1865年)、将軍徳川家茂長州征討のため大阪城に入城したため、天神祭は中止される。この年以降、維新の騒乱により明治4年(1871年)に復活するまで中止された。同年には、御旅所を戎島から千代崎(大阪市西区)へ移転させたうえで、「天満宮行宮」(てんまんぐうあんぐう)という名称で常設。明治7年(1874年)から船渡御が中止されたが、本社営繕やコレラの流行を受けて、明治14年(1881年)に復活した。この間には陸渡御のみ執り行われた年があったほか、上記以外の期間にも、明治天皇の崩御、大川の水位の上昇、会場近辺での住宅の密集などを理由に船渡御がたびたび中止されていた。

昭和5年(1930年)に食満南北の提言により鉾流神事が復活。昭和13年(1938年)から昭和23年(1948年)まで日中戦争第二次世界大戦の影響により船渡御や祭事そのものが中止された。

昭和24年(1949年)に大川の下流で船渡御が復活。江之子島(大阪市西区)から常設の御旅所(同区の「天満宮行宮」)まで陸路で巡行するルートも確立していた。しかし、地盤沈下の影響で船が橋の下をくぐることが困難になったため再び中止。結局、「船が天神橋の北東側に当たる河岸から大川の上流を遡りながら、『天満宮行宮』での神事を船上で執り行う」という方式に変更したうえで、昭和28年(1953年)から船渡御を再開した。なお、渡御のルートがこのように変更されてからも、「天満宮行宮」では毎年7月24日に「行宮祭」(あんぐうまつり)という神事を実施。千代崎地区では、この神事にちなんで地元の児童による神輿の巡行などが催されているほか、かつては「トラック渡御」(「御迎人形」を複数のトラックに分乗させる方式での陸渡御)も独自に実施していた。

昭和49年(1974年)には、オイルショックの影響で、神賑行事(陸渡御、船渡御、奉納花火)が全て中止された。その一方で、昭和56年(1981年)から「ギャルみこし」、平成3年(1991年)から水都祭と天神祭奉納花火を合同で開催。平成6年(1994年)には、オーストラリアブリスベンでも天神祭が斎行された。

平成9年(1997年)には、開催期間中に台風が接近した影響で本宮を縮小。平成12年(2000年)には、例年本宮を開催する7月25日に香淳皇后斂葬の儀が執り行われたため、本宮の開催日を翌26日に振り替えた。

令和元年(2019年)には、第125代天皇明仁の生前退位によって徳仁が5月1日に第126代天皇へ即位されたことから、「天皇陛下御即位奉祝祭」を兼ねて開催された。

令和2年(2020年)には、年始から日本国内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行していることを背景に、神賑行事を全て中止した[1]。神賑行事の全面中止は、前述した昭和49年(1974年)以来46年振り。大阪天満宮が主催する神事(宵宮祭、鉾流神事、行宮天神祭、本宮祭)については、悪疫(新型コロナウイルス)の退散を祈願する目的で7月25日に神職のみで執り行われたほか、史上初めてYouTubeで神事動画のライブ配信を解説付きで実施した[2]

令和3年(2021年)には、2月に大阪天満宮の職員からCOVID-19への罹患が初めて判明[3]。その後もCOVID-19の流行に歯止めが掛かっていないことから、前年に続いて神賑行事を全て中止したうえで、神事のみ執り行った。前年の神賑行事中止を受けてYouTube上に開設された「大阪天満宮公式チャンネル」でも、神事動画のライブ配信やアーカイブ動画の配信を見送っている[4]

令和4年(2022年)には船渡御と奉納花火の再開を見送った一方で、COVID-19が過去2年ほどには流行していないことを踏まえて、陸渡御を3年振りに復活させることを5月26日に発表。この時点では、大阪府内で感染の再拡大が認められた場合に、陸渡御も中止する余地を残していた[5]。実際には、7月に入ってから感染者数が過去最多の水準にまで急増しているものの、本宮の当日には(感染抑制手段の一つである)ソーシャルディスタンスを確保することを条件に陸渡御を実施。実施に際しては、参加者の総数を例年の3分の1程度に制限するとともに、「御神霊を乗せた神輿を参加者が担がない代わりに、神輿を台車に乗せたうえで、参加者が台車の綱を引きながら大阪天満宮の界隈を巡る」という方法が取られた[6]。しかし、感染症関連の国内法におけるCOVID-19の分類が令和5年(2023年)5月8日付で(季節性インフルエンザなどと同等の)「五類感染症」へ移行したことを受けて、同年の本宮から船渡御と奉納花火も再開している。
日程

6月下旬吉日:装束賜式(天神祭神事始め)

6月下旬:船割り、浴衣販売

7月7日:天満天神七夕祭(天神祭前儀)

7月11日:船渡御事始式

7月15日:葦奉納式

7月18日前後:台搦み

7月21日前後:本社神輿蔵出し

7月22日:伏見三十石船献酒祭

7月23日:宵々宮(俗称)、御羽車巡幸、庖丁式

7月24日:宵宮、鉾流神事、催太鼓宮入、獅子舞宮入

7月25日:本宮、夏大祭神事、神霊移御祭、陸渡御、船渡御、還御祭

各種行事

時間、祭事、催事は平成18年の行程を参考。
装束賜式 (6月下旬吉日)

天神祭の神事始めの行事で、この装束賜式より天神祭の諸行事が始められる。平成18年度諸役(神童、随身、牛曳童児、猿田彦)の装束賜式{しょうぞくたばりしき}(任命式)が、6月25日11時45分より行われた。まず、宮司より辞令が渡され、諸役を務める心構えなどが話される。この日より、諸役は斎戒と言って祭りまで慎むことやしてはならないことがお宮から言い渡される。例えば、一、葬儀に参列すること。一、喧嘩、もめ事などの争いごと。一、その他不浄に関与すること、等がある。

その後、諸役の衣装をつけ、本殿で報告祭を執り行う。
宵宮(7月24日)2005年の鉾流神事の様子
4:00 - 打ち出し

催太鼓の一番太鼓と、続いてだんじり囃子の一番鉦が祭の開始を告げる。大門開門。
7:45 - 宵宮祭

本殿において人々の無病息災と鉾流神事の無事が祈願される。
8:50 - 鉾流神事

神鉾講より推挙された大阪市立西天満小学校の6年生の男子の神童によって鉾流橋の水上より鉾を流す。元々は上記のように鉾が流れ着いた場所を御旅所と定めて祭礼を行ったが、御旅所が固定されてからはその役目は担っていない。

その流された神鉾を拾い上げる御鳥船(おとりぶね)が太鼓を打ち鳴らし、櫓と櫂で航行する。

鉾流神事が終わると氏地巡行まで正式な祭事はないが、各場所でいろいろな催事が執り行われている。下記に記述。
16:00 - 氏地巡行

まず、催太鼓による「からうす」がおこなわれ、その後催し太鼓と獅子舞が氏地を巡行する。
本宮(7月25日)催太鼓鳳神輿
13:30 - 夏大祭

氏地、氏子の平安を祈り、神霊移御祭で御霊を御鳳輦(ごほうれん)に移す。2019年までは一般に公開されていなかったが、2020年から、大阪天満宮のYouTube公式チャンネルを通じて生中継(動画のライブ配信)を実施。配信中は、動画の視聴者がインターネットから拝礼や大阪締め(後述)へ同時に臨めるような配慮が施されている。


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